【法律コラム】翻訳もダメなの?バイラルメディアの“丸パクり問題”と著作権

2014/09/03 07:00

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この夏は暑かったり涼しかったりしたため、体調を崩してしまうし、またひと夏の恋物語もなかったし、夏の思い出が全くなかった弁護士・佐藤大和です。みなさんの夏はどうでしたか?

さて、突然ですがみなさん、「バイラルメディア」という言葉をご存知ですか? 簡単にいえば、動画や画像を用いた記事を中心にしたインターネットのサイトのことです。TwitterやFacebookなどSNSとの相性が非常によく、一度記事が拡散されると、短期間で多くの訪問者数を集めることができるのが特徴です。

こういうサイトは、本当に魅力的なタイトルをつけるため、思わず見てしまうんですよね。「モテる秘訣」という文字を見て、気付いたらついついクリックを…なんて人も多いのでは?

さて、今回取り上げるテーマは、その「バイラルメディアと呼ばれるサイトが堂々とネタのパクリ合いをしている」という問題です。


 

■記事の丸パクリっていいの?

「バイラルメディア」では、様々なライターさんがネタを考えたり見つけたりして、自分の言葉で書いた記事が掲載されているかと思います。しかし、今問題になっているのが、記事の丸パクリ。

法律上何か問題がありそうだな…というのは読者の皆さんも直感的に感じていることだと思います。

では、いったい何が問題なのでしょうか?

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■著作権って何?

まず、記事を書いた人には、その記事に対して「著作権」という権利があります。皆さんも「著作権」という言葉は耳にしたことがあるでしょう。

この著作権とは、簡単にいえば、自分で創作した文章や音楽、作品等を自由に使用・処分等をすることができる権利のことをいいます。もっと簡単にいえば、自分のオリジナル作品を独占できる権利ということです。

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■何が問題なの?

他の人は原則として、著作物を利用する場合、著作権を有する人(=著作権者)から「使っても良いよ!」と許諾を得る必要があるのです。

そのため、他の人が書いた記事を丸パクリして、勝手にサイトにアップしてしまった場合、著作権法違反になってしまうのです。

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■どのような場合もダメなの?

しかし、他人の文章を使う場合、いかなる場合にも「許諾」を求めたり、許諾がない場合「ダメ!」となってしまったりすると、面倒ですし、学校のテスト問題さえ作れなくなってしまいますね。そこで、著作権法ではいくつかの例外規定を作っています。

【引用って何?】
例外規定の一つとして、引用というのがあります。

例えば、他人の作品を批評する場合、批評の対象となっている作品の一部を使って引用している場合がありますよね。

この引用ですが、法律が定めている一定の条件を満たせば、他人の著作物を許諾なしに、自分の著作物に掲載することができます。

その他にも、学校試験問題として使う場合や営利目的ではない場合にも、いくつかの条件を満たせば、他人の著作物を許諾なしに、自分の著作物に掲載等をすることができます。

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■記事の丸パクリは?

もし仮に、本当に他人が書いた記事を丸パクリして自分のサイトに掲載していた場合、そこに自分の批評等が書かれていなければ、それは引用にはなりません。

また基本的には、その他の例外規定にも該当しないため、著作権法に違反しているといえるでしょう。

■翻訳もダメ?

では、「海外の記事を日本語に翻訳しているだけですよ」という言い分はどうでしょうか?実は著作権者は、自分の著作物について翻訳する権利(翻訳権)を持っていて、他の方が著作権者に無断で翻訳することはできないのです。

そのため、そのような言い分は通用しません。

■ネタのパクリはダメ?

記事のネタのパクリはどうでしょうか? たとえば、「浮気の見つけ方」や「恋人の作り方」、「モテる秘訣」というネタはよくありますよね。筆者はこの手のネタにすぐに飛びつきます(笑)。さて、このようにネタが一緒でも、文章が変わっていたら法律上は問題ないのでしょうか?

これは法律上問題ありません。著作権は、あくまでも具体的な表現を保護していて「アイディア」を保護しているわけではありません。そのため、例えば設定が似ている漫画が2つあっても、それだけでは法律違反にはならないのです。

さて、もし仮に他人の書いた記事を丸パクリして楽をしている編集者さんがいるならば、同業者からしてもそれは許されない行為といえるのでしょうね。

でも実は、記事を書いたライターさんに許諾を得ている場合や元記事に「転載自由」と記載している場合もあるので、記事を見ただけで「丸パクリで法律違反だ! 許せない!」とはすぐに言えません。もっとも、読者に誤解を与えないように、許諾を得ている等の一言は書いた方が良いと言えますね。

(文/弁護士・佐藤大和


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