リクルートの強みは「ヤンキー魂」!?世代を超えた2人の著名“元リク”対談


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

先日、新著『リクルートという幻想』(中公新書ラクレ)を上梓した評論家・人材コンサルタントの常見陽平氏と、ネットでは「けんすう」の愛称で知られる株式会社nanapi代表取締役の古川健介氏。

歳でいうと7つ離れ、活躍の場も異なる2人の共通点は、「リクルートOB」ということだ。

常見氏は1997年に入社し、2005年に退社。古川氏は、翌2006年に入社して2009年に退社している。10月16日に東証一部上場を控え、注目が高まるリクルートについて、2人の“元リク”が熱き対談を交わした。

 

■リクルートも元リクも進化している

常見:先日の「AERA」で「次世代ベンチャーは30代元リクが支える」という特集がありましたが、取り上げられていた方は古川さんに近い世代でしたよね。

古川:「じげん」の平尾丈さんや「KAIZEN platform」の須藤憲司さんですね。

常見:“元リク3.0”的に進化している感じがします。僕の同期が、4月に西宮市長に当選した今村岳司さんや「トレンダーズ」の創業者・経沢香保子さん。

この前後が2.0世代だとすると、まず元リクの名を世間に知らしめた1.0が、「iモード」の生みの親・松永真理さんや杉並の中学校で校長を務めた藤原和博さんたちでしょうか。

いや、1.0を誰にするかは議論があるでしょうけどね。それこそ究極の元リク1.0は創業者の故・江副浩正さんです(笑)

古川:リクルート自体も変化していますよね。「Mix‐Juice」が立ち上がった 1995年から「isize」の2000年頃は、当時ネットで最先端だった分野に次々と自前でチャレンジしていた。

最近だと、アメリカ発の世界最大の求人サイト「indeed」を買収するなど、M&Aに積極的になっています。

常見:リクルートポイントもそうですが、“金融☓IT”というIT企業の必勝パターンを後追いしているようにも見えますね。

 

■「クールなサービス」でないのに成功する理由

常見:学生時代からウェブサービスを立ち上げていた古川さんが、なぜリクルートに入社したんですか?

古川:当時、「はてな」などウェブ2.0的と言われていた企業は、利益を出せていませんでした。一方でリクルートのサービスは、それ自体はそれほど先進的でも使いやすくもないのに、成功していた。

その理由を知りたかったからです。今でも、「食べログ」に対して、「Hot Pepper」は4倍以上の売上があると言われています

常見:後者のほうがクールだと思っているユーザーは多くないと思うのですが。

古川:リクルートが強いのは、情報が非対称な分野で掲載企業からもお金をとる、いわゆる“江副モデル”。入社して思ったのは、「江副モデルが最強すぎて、ここでは他のビジネスモデルは生まれないな」ということでした。

常見:それを支えているのが、“モーレツ営業”などとも言われる営業力ですが、じつは営業のモチベーションを高める“営業オペレーション”こそがリクルートの強さの要だと思います。

古川:このオペレーションを身につけた人は、独立してもかなりいいところまで行けていますね。

 

■強さの秘密は「ヤンキー魂」

古川:IT企業は、エンジニアの立場が強くなりがちです。そんな状況で業績が危なくなった会社が営業に力を持たせたら経営が持ち直した、という話を聞いたことがあります。

常見:この本の中にも書きましたが、リクルートは、“営業が最強だ”ということを社内外に対して“装って”いると思います。実際は上司に踊らされてドブ板営業をしていても、持ち上げられている。

古川:営業が“やること”だけでなく、“やらないこと”も明確です。戦略も悪くはないのですが、むしろ“戦術の会社”なんですよね。戦略以上にマネジメントがすごい。

常見:そう、ヤンキー的な目標達成力。「日経ビジネス」などに載った峰岸社長のインタビューを読んでいると、“ヤンキーの全国制覇物語”のようです。でも、ヤンキー魂という戦い方はアメリカにも勝てそうな気がしてきますね。

 

■「ポエム」より強い明確なビジョンとは?

常見:私が入社した1997年くらいのリクルートは、社内で“ビジョン不在”が叫ばれていました。でも、当時は1兆円を超える有利子負債があって、じつは“借金返済”こそが、もっとも明確なビジョンだったんですよね。

古川:たしかに、僕が入社した2006年からは毎年1000億のキャッシュが積み上がるようになって、むしろそこからのほうが考えてしまっている印象もあります。

常見:ポエム的なメッセージより“1兆円返済!”のほうが、ずっと人を動かす力がある。これもまた、ヤンキー魂の香りがしますけどね。

古川:リクルートは、“手段を目的化して成果を上げる”のが徹底的にうまい。これを“プロセス自体を楽しむ”と解釈すれば、nanapiを経営する中で今も生きてると言えるかもしれません。

 

※常見陽平

tsune 人材コンサルタント・評論家。北海道札幌市出身、一橋大学商学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経て独立。雇用・労働、就職・転職、キャリア、若者論、メディア論などをテーマに講演・執筆・評論活動に没頭中。『リクルートという幻想』(中央公論新社)『「できる人」という幻想』(NHK出版)『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)『普通に働け』(イースト・プレス)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。”

※古川健介

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 1981年6月2日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2000年に学生コミュニティであるミルクカフェを立ち上げ、月間1000万PVの大手サイトに成長させる。2004年、レンタル掲示板を運営する株式会社メディアクリップの代表取締役社長に就任。翌年、株式会社ライブドアに「したらばJBBS」を事業譲渡後、同社にてCGM事業の立ち上げを担当。2006年、株式会社リクルートに入社、事業開発室にて新規事業立ち上げを担当。2009年6月リクルートを退職し、Howtoサイト「nanapi」を運営する株式会社ロケットスタート(現・株式会社nanapi)代表取締役に就任、現在に至る。

(取材・文/しらべぇ主筆・タカハシマコト

Appstoreロゴ

しらべぇアプリを今すぐダウンロード(iOS)

android_logo

アンドロイド版はこちら