雑炊技の数々を伝授!一流鍋奉行への道「雑炊」編【マッキー牧元の世界味しらべぇ】

2014/11/14 07:00

まずはじめに雑炊はなんのためにあるのかを考える。雑炊は、鍋奉行最後のステージであり、有終の美を飾ればさらに株も上がるが、しくじると、過ごしてきた時間が水泡に帰す。鍋奉行としても否定され、明日が来ない。

店に任すという手もあるが、仲居さんが若く不慣れで、上手に仕上げられないという可能性もある。他人の手で鍋を踏みにじられるなら、失敗してもいい。自らの手で幕を下ろそうではないか。まず大事なのは

「基本方針を決める」

ということである。雑炊かおじやか? その両方か? を決めよう。

雑炊とは、あくまでさらっとして、煮すぎないものであり、おじやはごてっとしている。ちなみに日本語としては、両方とも同意。ちなみに語源を見てみると

<雑炊>

「増水」といって、「本朝食鑑」(元禄十年)には、「粥の水の多いのをいう」とある。元々は糝(こながき)のことで、穀物の粉に水を加えて炊き上げ、補食や薬食とした。

<おじや>

漢字の表記は「於慈也」。雑水、増水、いれめし、にまぜ、とも。「おじや」はもともと宮廷の女性言葉で、「じやじや」と煮えることから、この語が生まれた。民間風俗を記した江戸中期発刊の「守貞謾稿」(もりさだまんこう)に、「江戸にては男女専ら『おじや』という」とある。ある時期まで関西では男が「雑炊」、女が「おじや」と呼び分けていたよう。

それでは実際の雑炊技を伝授しよう。まず雑炊は1種類ではない。「五段活用」と上級者向け「三段活用」があることを覚えよう。さらに「裏ワザ」、「禁止」、「究極」も合わせて教える。

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■基本編

ご飯(洗わず。出来れば炊き立ての温かいご飯)。薄口醤油(塩)。酒。おろし生姜。

3大ポイントの合言葉「めしに」

1.「め」ご飯の量→少ないかなと思うくらい。
2.「し」塩加減→ご飯入れてすぐ入れ、味見。これも少なめに。
3.「に」煮え加減→米の膨らみ加減。汁を吸い過ぎてふやけないように。

基本手順

1.鍋だしを温める。酒大1入れる。

2.ご飯投入、薄口(塩)入れる。

3.汁の味が米となじんだか、米に聞く。

4.仕上げに、生姜のしぼり汁。

以上が基本である。これがシンプルなもので、1回食べていただきたい。うまくできる様になったら、玉子雑炊へと進める。

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■「四段活用」の秘技

それでは「四段活用」の秘技を伝授しよう。

1段:白いご飯を茶碗の片隅によそい、一方の片隅に汁を入れ、ご飯を汁の中に突き崩すようにして食べる。

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2段:上記2の段階。ご飯投入。軽く煮て(1分弱)茶碗によそう。生姜露かける。まあ汁かけごはんの雑炊よりと考えよう

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3段:さらに火を通し、玉子を閉じて茶碗によそう。これには柚子皮を細切りにしたものを散らす(小葱でもよい)。

しらべぇ_マッキー牧元_雑炊

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4段:蓋をして蒸らす。ごてっとおじや状態になったものを茶碗によそい、もみ海苔か細葱(両方もあり)を散らす。

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5段:茶碗に少量白いご飯をのせ、3の玉子雑炊を上からかける。

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■上級者用三段活用技雑炊

すっぽんやフグなど、いい出汁が出る鍋のみに応用できる技である。また信楽焼きなどの土鍋のみでしかできない。

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「一膳目」

ご飯投入後、雑炊の上側をすくい、茶碗に盛る。米の香りと甘みを、スープが優しく底支え。

「二膳目」

目を凝らして雑炊を混ぜ返し、何度も鍋肌に当てる。ほんのりオコゲも作る。ぽってりとした仕上がりに微かなオコゲの香。淡い茜色を目指す。さらに甘くなったご飯とスープの一体感。

「三膳目」

さらにじっとり火を通す。餅のような食感に、ぼてぼてと濃化したご飯の深い甘味とスープの滋味の渾然。

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■裏ワザ「薬味の奨め」

1.「柚子片」たっぷりと。細く切って、茶碗に盛ってからかける。

2.「豆腐」豆腐を一つ残しておいてつぶす。1の段階で投入。豆腐の甘みが出てうまい。

3.「黒胡椒」粗挽きで。

4.「鴨頭葱」もしくは「万能葱」

5.「生姜」搾り汁を隠し味に。

6.「胡麻」白胡麻がいい。

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7. あとは海苔、三つ葉などお好みで、エスニック好きなら香菜と生姜もお奨め。

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■禁止

禁じ手は、「海苔と柚子の組み合わせ」である。海苔の香りに負けて柚子が香らない。

■究極「汝、玉子を愛せよ」

卵の閉じ方は難しい。常日頃から、鍛錬し、玉子の過程と結果を検証しておく。様々な溶き方、閉じ方があることを知り、好みを把握しておく。

1)卵の溶き方様々

  • 2個の卵の白身部分だけを箸で切るようにしてから、黄身を四等分。
  • 白身のコシを切って、黄身と5回混ぜ。よく混ぜる。

しらべぇ_マッキー牧元_雑炊

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2)卵投入時の鍋の温度 鍋肌に細かい泡がたち、中心に向かって泡が来る程度。

3)卵投入方法様々

  • 細く垂らす。点々で垂らす。
  • 2回に分ける。最初中心、後鍋肌。
  • 鍋肌から中心に向かって垂らす。
  • 片口のような器を使って細く垂らす。
  • 穴あきお玉を通して流し入れる。

そして投入後

  • すぐ火を止める。
  • 火を弱めにし、沸騰させない火加減で10秒ほど煮て、2~3回ゆっくりとかき混ぜ、10秒煮て火を止める。
  • 中には混ぜない派もいて、ぽってり固まった卵が好きな人もいることを知ろう。

以上雑炊のワザであります。詳しくは拙書『間違いだらけの鍋奉行』にて。

nabebugyo

(写真・文/マッキー牧元

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