若者「東南アジアに自分探し行ってきます!」大人「ちょっと待て!」その理由は?

2014/12/20 17:30

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旅を勧める大人たち、自分を探したがる若者たち

若者と出会った大人が「若いうちに旅をしておきなさい」と諭すのは「オッサンあるある」の一つですよね。

「君はまだ大学2年生かね?」
「はい、いま20才です」
「ならば時間はたっぷりあるだろ?夏休みも2ヶ月間くらいあるだろうし」
「そうですね」
学生のうちに旅をしなさい。貧乏旅行でいいから色々な世界を見てきなさい。体力があるのも若いうちだけだ」
「世界、ですか?」
「そう。インドやタイなどの東南アジアに行って、様々な人達に触れてきなさい。自分の価値観が変わるかもしれない体験が君を待っているだろう。いわば自分探しの旅だ」
「物価も安いみたいだし、それはいいですね!『自分探し』ちょうどしたいと思ってたので行ってきます!」

こうした大人からのアドバイスは、しばしば若者を東南アジアへと向かわせます。日常生活では見ることのできない、世界の多様性に触れることで視野が大きくなると説得されれば、彼らが東南アジアへ向かうのはほぼ必然的と言ってもよいでしょう。

特に、LCCの航空網が発達した今日では、自分探しのための東南アジア旅行はより容易になっています。

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猿岩石ブームがバックパッカーをアジアへと送り出した

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社会学者・山口誠さんが書かれた『ニッポンの海外旅行 若者と観光メディアの50年史』(ちくま新書)によると、こうした若者の海外旅行の歴史は1970年台にまで遡れるといいます。

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1961年に刊行された小田実さんの『何でも見てやろう』や1986年に刊行された沢木耕太郎さんの『深夜特急』など、いつの時代も若者を海外へと向かわせるきっかけとなるような文学作品が存在していましたよね。

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こうした潮流は、1996年に放送された日本テレビ系列のテレビ番組『電波少年』内の企画、猿岩石の「ユーラシア大陸横断ヒッチハイクの旅」の大ヒットによりさらに加速することになります。この頃起きたバックパッカーブームでは、「自分探し」を目的とした若者が大量にタイやベトナムなどの東南アジアへと旅立って行ったといいます。

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東南アジアへ向かう若者への違和感とは?

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こうした若者の「自分探しの旅」に対しては、しばしば批判的な意見が投げかけられます。

日本人の若者が向かうタイやベトナムなどの東南アジアには、当然ながら日常生活を送る現地の人々が存在します。にもかかわらず、彼らはその日常や生活を「自分を探す」ための手段や道具として捉えている。このようなある種の「上から目線」は、現地の人たちに対して失礼な態度ではないか、というのです。

特に、先進国と言われる日本に住む若者が、インフラが整備されていない不便な国の農村部へわざわざ趣き、そこでの不便さを実感することで自らの生活の便利さを自覚することは、まるで現地で生活を営む場に土足で踏み込んでいき、「こんな不便なところがあるなんて!」という感想を抱くためにその場を「消費」しているような失礼さを持つのではないかという意見が見られます。

以下のアンケート結果を見ると、こうした違和感を持つ人は全体で約4割弱存在するようです。


Q.「自分探し」のために、東南アジアなどの途上国にバックパッカーとして行くという行為に違和感を覚える?

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・違和感を覚える:38.0%
・違和感を覚えない:62.0%

【世代別】違和感を覚える人の割合

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20代:31.0%
30代:34.0%

40代:35.7%
50代:45.3%
60代:44.0%

若者にアドバイスを送りがちな年配の人ほど「自分探しの旅」に違和感を持っていることがわかります。はたして、自分探しのために東南アジアに赴くことは、いけないことなのでしょうか?

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「そもそも『自分探し』は土足で踏み込まざるをえない!」という反論

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こうした「自分探し」のために旅する若者の無責任さや暴力性、いわゆる「上から目線」への批判に対しては明確な反論も見られます。

そもそも、ある土地に外部の者が足を踏み入れた時点で、訪問者にとっては目の前に広がる光景は非日常的なものとして映らざるを得ず、またそれがいくら「上から目線」と言われようとも、それ以外の視点を持つことは不可能ではないかというものです。

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「それでも若者は東南アジアへ向かうべきである!」

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加えて、自分が住む周辺のことしか知らず、その場所に安住しているよりは、様々な世界に触れ合っているほうが物事を相対化して見ることができるので幾分ましだろうという意見も存在します。

つまり、現地に住む人々に失礼な態度やまなざしを向けてしまうことは承知で、それでも若者は旅に出るべきである、という反論です。

おそらく、こうした意見にもそれなりの正当性はあるといえるでしょう。となると、「自分探しの旅」の問題点は、「自分探し」をしている若者の動機や、それに伴う現地の人に向けられる「上から目線」をどれだけ自覚しているのか、謙虚であるのか、という点になるのかもしれません。

「東南アジアへ行かなくとも『自分探し』はできる!」という意見も

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一方、今回の質問に対して「違和感を持つ」と回答した人のなかには「自分を探す」という手段として、若者が真っ先に東南アジアなどの発展途上国へ赴くことに違和感を持つという意見も見られました。

多様な経験や様々な視点を持ちたいのならば、国内でも見るべき場所があるし、書物に触れたり、学問に取り組むなど、さまざまな方法があるからです。

こうした点で、東南アジアへと旅する若者が抱える問題の本質は、「さまざまな世界(社会)に触れたい」と考えた時に浮かぶ選択肢の貧しさにあるのかもしれません。

異口同音に「旅」を勧める大人たちの責任も?

大人たちは、若者に対して異口同音に旅に出ることをすすめます。しかしながら、こうしたアドバイスがすでに定番化・陳腐化していることは否定できません。大人たちは、東南アジア旅行以外に若者にしてほしいことはないのでしょうか。

「自分探し」を取り巻く位相は、想像以上に複雑で根深いようです。しらべぇでは今後も「自分探し」と東南アジアに見出されがちな郷愁の謎を解き明かしていきたいと思います。

【調査概要】
方法:インターネットリサーチ「Qzoo
調査期間:2014年11月14日(金)~11月16日(火)
対象:全国20代~60代 男性750人 女性750人 計1500人

(文/しらべぇ編集部

※書影はamazonのスクリーンショットです
『ニッポンの海外旅行 若者と観光メディアの50年史』山口誠・著
『何でも見てやろう』小田実・著
『深夜特急』沢木耕太郎・著
『猿岩石日記』猿岩石・著

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