【法律コラム】損害賠償だけではすまない!? アイドル・芸能人の合成写真は犯罪か?
先日、某週刊誌の記事上にて、無断で合成写真を掲載されたとして、綾瀬はるかさんや前田敦子さんら女性芸能人8人が、出版社などに1人あたり1100万円の損害賠償を求めた裁判の判決がありました。さて、どのような記事だったのでしょうか?
問題の記事では、裁判をした8人を含む女性芸能人25人の「顔写真」に「裸の胸」のイラストを合成する記事が掲載しされていたそうですね。なんてハレンチな。それに対して、裁判所は、どのような判決を下したのでしょうか?
裁判所は、「肖像を無断で利用して意図的に露骨な性的表現をし、肖像権などを侵害した」との判断をし、「限度を超えた侮辱行為で、名誉を傷つけた」として、発行元の出版社などに、1人あたり80万円の支払いを命じる内容の判決をしました。
今回のコラムでは、上記裁判のキーワードである「肖像権侵害」や「名誉毀損」などについてみていきます。
1.そもそも肖像権って何?
「肖像権」という言葉は、よく耳にする言葉ですね。この「肖像権」とは、簡単にいえば、個人の「容貌」等に関する権利のことです。
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2.では、どのような場合に「肖像権侵害」になるのでしょうか?
(1)勝手に撮影する行為
原則として、公共の場所で「不特定多数の人物」を一般の人が撮影する行為自体は、基本的には問題ありません。しかしながら、勝手に「特定の人物」を撮影し、被写体となった人物に強い心理的負担等を覚えさせた場合には、肖像権の侵害になる可能性があるので要注意です。
(2)インターネットにアップする行為
最近、「街中で面白い人がいた!」として、勝手に人を撮影し、Twitter等にアップする方もいますね。このようにインターネットにアップすることで、興味の的や誹謗中傷の的となった場合には、肖像権の侵害になる可能性が高いといえます。
(3)合成写真
さて、今回の裁判のように、「芸能人の合成写真」の問題はどうでしょうか?もし仮に個人で作成し、自分だけでこっそりと楽しむ場合には、肖像権の侵害は成立しないでしょう。
けど、今回の裁判で問題になったように、「出版物」にしたり、「インターネット上で公開」したりすれば、「侮辱行為」として、やはり肖像権を侵害する可能性が高いといえます。
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3.犯罪になるの?
そもそも「芸能人の合成写真」をインターネット上で掲載したりする行為は、冒頭の裁判のように損害賠償を請求される可能性はありますが、犯罪にもなるのでしょうか?
犯罪について規定している「刑法」という法律では、写真を合成すること自体については、何ら処罰しておりません。けど、あるアイドルの合成写真を「インターネット上に公開した行為」について、合成写真の作成者らが「名誉毀損罪」という犯罪になり、処罰を受けたという事件がありました。
「問題になった合成写真をインターネットに公開する行為」が、「公然と人の名誉を毀損する行為」と考えられたのでしょうね。また、通常、合成写真を作成する場合、「他人が撮影した写真」を使うと思いますが、他人の写真を使って合成し、公開した場合には、「著作権侵害」になる可能性も高いといえます。
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4.終わりに
このように、芸能人の合成写真を使って、自分以外の人間の目にふれさせてしまう行為は、損害賠償を請求される可能性もありますが、さらに刑事罰を受ける可能性もあります。誠意をもって愛しい芸能人を応援することが大切です。
でも、もし、どうしても合成写真を作りたくなっても、「自分だけ」で「こっそり」と楽しんで下さいね。
(文/弁護士・佐藤大和)