【法律コラム】写真は「著作物」でない?ポイントは「人の○○」だった!
@iStock/ yongkiet
みなさんは写真を撮りますか?
ケータイ・スマホにカメラが標準装備されて久しいですし、画素数や機能はどんどん高度化しています。最近よく見る「iPhone6で撮影」というCM、あれは写真ではなく動画ですが、技術の進歩のすごさがわかりますね。
そんなわけで、写真を手軽に撮れる時代になったのですが、気軽にいくらでも作れるからか、少し前にTwitter上で「写真に著作権はないのでは?」ということが話題になっていました。
そこで、本コラムでは「写真と著作権」についてお話ししましょう。まずは下記のアンケート結果から。
約9割の人は写真を著作物だと、思っているようですね。
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■写真は著作権が無いようにも見える?
「絵」が、作品として著作権で保護されるのは分かりやすいかと思います。自分で線を描き、色を塗ったものですから、自分で創ったという感じがしますよね。
これと比べると、写真はシャッターを押すだけで手軽に作れるので、カメラが作ってくれた風にも見えます。
写っているものも、自分で創ったものではなく、すでにこの世にあった物である場合がほとんどです。そのため、著作権がないようにも感じられることも。
また、運転免許証やパスポートについているあの顔写真、あれが芸術品かと言われれば、どう考えても芸術品ではありません。ただ記録しただけという感じです。
このように考えると、写真には著作権が及ばないようにも見えてきます。
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■大切なのは、考えや気持ち
@iStock/eurobanks
著作権法的には、「作った人の思想又は感情が表現されているか」、どうかがポイントになります。
ただし、別に芸術的に高尚なものを求められるわけではありません。何らかの考えや気持ちが感じ取れれば充分。法律家が芸術性の高低をうんぬんするのもアレですからね。
写真撮影の場合、構図やアップ/ロングをどうするか、フラッシュを焚くのか、出来栄えを左右する判断要素がいろいろあるわけです。
特に重要な要素として、シャッターチャンスを逃さない、「決定的瞬間」をレンズに収める、というタイミングの判断。こうした判断も、著作権法で保護するのに十分なので、写真も著作物となります。
ちなみに、ただの証明写真が著作物ではないというのは、特にこれといった思想又は感情を表現していないから、ということになります。
「少しでもいい顔で映りたい」という感情が現れている気がしないでもないですが、その感情を表現するために撮ったわけではなく、何かの証明のための写真にすぎないので、違いますということです。
裏を返せば、顔写真であっても例えば「お父さんの人柄を表現するための肖像写真」などだったら、考えや気持ちが読み取れるということで、著作物となることもありえます。
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■自分で撮れば、裁判例ではOK?
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写真も著作物として保護の対象になりますので、ネット上の写真をそのまま利用したり、背景をトリミングして顔の部分を利用したり、漫画の下描きにしたり、そういったことを無断ですると、著作権法に引っかかります。
そのため、撮影者の許可をもらうか、自分で撮りましょうという話になりますね。
では、自分で撮れば、本当にそれでいいのでしょうか。いいなと思った写真と全く同じ構図で撮ったら、あとでパクリだとか言われてしまうのではないでしょうか。
この問題は難しく、法律家の間でも意見が分かれていますが、裁判例はOKの方向です。
裁判例によると、著作権法が保護するのは、考えや気持ちそのものではなく、その考えや気持ちを形にした作品である、だから構図などのアイデアそのものを真似する分には著作権違反にならない、のだそうです。
「アイデアそのものの真似は結局作品の真似にもなるのでは?」と、腑に落ちない読者の方もいらっしゃると思いますが、構図が同じでもセーフだからこそ、私たちは肖像写真や観光名所の写真を安心して撮れるわけです。
素人が撮ったものでも、気持ちがこもっていれば立派な著作物。このコラムを書きながら、筆者も今日の帰り道は何か写真に撮ってみようかと
(文/弁護士・佐藤大和)