都市伝説『きさらぎ駅』と妖怪『マヨイガ』に見る信仰心の変異

2016/02/26 09:30

©iStock.com/barton_fink83
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「きさらぎ駅」をご存知だろうか。ネット界隈では「夏の風物詩」と称される都市伝説である。初出は2004年の某匿名掲示板であり、近年はツイッターにて現れ、まことしやかにその存在がささやかれている。


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■きさらぎ駅とは

この都市伝説の内容は、以下のとおりだ。

ある女性がいつも使っている電車に乗っていると、なぜか見知らぬ無人駅に辿り着いてしまう。その名は『きさらぎ駅』。この世には存在しない駅である。


気付けば周囲の乗客はすべて眠りこけている。駅から出ても、草原と山しかなく、人の姿はない。遠くから祭り囃子が聞こえてくる。


携帯電話のGPSもエラーを起こして使えなくなる。車内の写真を撮影しても赤みを帯びた写真しか映らない。駅近くで出会った見知らぬ人の車に乗せてもらった女性は、山の奥へと連れて行かれ、そのまま消息を絶つ…。

この都市伝説の特徴は、きさらぎ駅を訪れてしまった人がリアルタイムで中継することであろう。

その実況中継に対して「これはネタだろう」「大丈夫?」「怖い」と様々な感想が寄せられ、拡散され、話題になるまでがお約束だ。


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■きさらぎ駅の認知度調査

アンケートサイト「マインドソナー」での調査の結果、きさらぎ駅の認知度は10%強。

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たびたび、ネット界隈ではお騒がせをしている『きさらぎ駅』だが、その認知度は高くないようだ。


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■遠野の妖怪『マヨイガ』

記者はきさらぎ駅の話を聞いた時、遠野物語に現れる妖怪マヨイガを想起した。『マヨイガ』は『迷い家』と当て字する。伝承によれば、道に迷うと現れる立派なお屋敷という妖怪である。

 ・マヨイガの伝承

立派な屋敷だが、人の気配がまったくしない。しかし、つい先程まで生活をしていたような気配はする。その中に居るとどうも気味が悪くなって、すぐに外に出たくなってしまう。もし、このマヨイガの中にある食器や家具をひとつでも持ち帰ると不思議な力を発揮して長者になれる。

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■きさらぎ駅とマヨイガのモチーフ比較

きさらぎ駅とマヨイガは「無人であること」「迷い込んでしまうこと」というモチーフが相似している。ただ話の結論の方向性が真逆だ。きさらぎ駅はバッドエンドであり、マヨイガはハッピーエンドである。

きさらぎ駅に求心力があるのは、語り継がれる民話と同じストーリーの流れをしており、人心を惹きつける話の筋であるからか。そして、オチの違いは、その時代のリアリティを浮かび上がらせているのでは。

きさらぎ駅に対するネットユーザーの反応で一番熱がこもっているのは「きさらぎ駅の否定」であり、「ネタであり釣りである」と証明したがる人はとても多い。それは、深層心理で『不思議』に対して恐怖しているからではないだろうか。

故・水木しげる氏の遺言の中に「精神的には妖怪が身近にいた時代のほうが幸せだったと思うね」との言葉がある。きさらぎ駅とマヨイガの違いを見つめていると、考えさせられる。

(取材・文/しらべえ編集部・モトタキ

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