失踪経験がある男性に聞いた「沖縄に命を救われた話」

2016/03/05 09:30

©iStock.comAnthony Brown
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日本では毎年10万人の人間が失踪すると言われている。これは、中規模都市の人口に匹敵する数だ。

そして、そのほとんどは犯罪に巻き込まれることもなく、きちんと所在がわかるという。つまり、自分の意志で失踪している人たちが大多数を占めているのだ。

では、なぜ失踪したのだろうか。実際に失踪をしたことのある男性(20代・メガネ販売員)に聞いてみた。



 

■失踪した原因は?

「ざっくりと言えば、ブラック企業に勤めていたんだよね。最初は一般的な労働時間だったんだけど、人手が足りないからって、どんどん仕事が回ってきて、現場の仕事と事務の仕事をやることになってさ、隔週1日しか休みがなかった。


それだけでも精神が摩耗していた。車を運転している時にね『どうなってもいいや、ハンドルを右に切っちゃおうかな』って思うこともあった。でも、俺の父は理髪店を経営しててね。社長はそこの常連客だった。だから、なかなか辞める決心がつかなかったんだ。


でも、ある日ね。次の日が休みだったんだけど、社長が休日出勤してくれって言ってきた。用事があるから無理だと断ったら、社会人の自覚が足りないと説教された。もう意味がわからなくなって、その日、失踪することを決めたんだ」


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■失踪を実行するまでの経緯は?

「その日帰ってすぐに、翌日朝一番に飛ぶ沖縄行きの飛行機のチケットを予約した。それからその日の夜に出発する成田行きの深夜バスも予約した。小さなバッグに着替えを詰め込んで、軍資金に25万円を下ろした。


沖縄について最初は開放感がすごかった。気分が良くなった。でも、何も決めてなかったから安く泊まれるゲストハウスを探して向かった。スマホのおかげで、すぐに見つかった。


いきなり尋ねて、1週間泊めてくださいって頼んだら、すっげえ不審な目で見られた。でも、泊めてもらえた。次の日には沖縄は湿気がすごかったから頭を坊主に丸めた。すっきりした」


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■戻った理由は?

「正直、沖縄に骨を埋めてもいいなって思ってた。ゲストハウスにいると、転職前の有給消化で遊びに来ている人とか、卒業旅行代わりに一人旅で来てる大学生とかと知り合った。


彼らに励まされて、心はどんどん楽になっていった。レンタカーを借りて、離島に遊びに行った。沖縄のゲストハウスでは毎日宴会が開かれてて、泡盛を飲んで何もかも忘れて楽しんだ。


精神が持ち直ったから家族には連絡をとった。あと1ヶ月は沖縄で過ごすつもりだったんだけど、有り金をすべて落としてしまった。それでどうしようもなくなって、心がまた折れそうになったけど、踏ん張った。


沖縄で知り合った人に港の雑用を紹介してもらって、本島に戻る為の旅費を稼いだ。まあ、数万円あればいいから、すぐに貯まった。そんで実家に戻った。親には、二度とするなよって一言だけ怒られた」


彼は当時のことを楽しい思い出と感じているが、親や身近な友人たちを死ぬほど心配させてしまったことを知り、失踪は二度としないと誓ったそうだ。「追いつめられていたとしても、試すべき手段は他にもあった」と語る。

しかし、もし彼が失踪していなかったら、今生きているかどうかもわからないこともまた事実である。今、元気に働いている彼の姿を見る限り、この失踪は悪い失踪ではなかったのではないか、とも思わせられる。

(取材・文/しらべえ編集部・モトタキ

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