大統領選挙にも影響?アメリカ「銃規制」にまつわる深い因縁とは

2016/03/06 18:00


©iStock.com/JamesYetMingAu-Photography
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アメリカ大統領選挙の話題は、日本でも連日報道されている。とくに共和党予備選挙の話題は、まさに尽きることを知らない。

最近では、ドナルド・トランプ氏の爆弾発言、バーニー・サンダース氏の「大学無料化公約」が大きな注目を集めている。

だがその一方で、今回の選挙は銃規制進展の是非を問うものだということを忘れてはいけない。



■相次ぐ乱射事件

今年に入っても、アメリカでの銃乱射事件はおさまらない。220日にはミシガンで、ウーバーの運転手が銃を発砲し6人の市民が命を落とした25日にもカンザス州で乱射事件があり、多くの死傷者が出た。

こうしたことが、アメリカ国内では多発している。もはやアメリカ人ですら、去年何回こうした事件が起こったのか把握していない有様だ。

だがそうしたことがあっても、アメリカでは銃規制が強化されない。むしろ「もっと銃規制を緩和するべき」という声が大きくなる。なぜか?


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■武装は自由への一歩

アメリカはイギリスから独立した国である。そしてそのイギリスは、誰もが知っているように王国だ。今はともかく、昔は「王様の言うことは絶対」

王の命令に背いたら最後、投獄されるか処刑されるかのどちらかである。だから王に逆らおうと思ったら、武装して戦わなければならない。

つまり「武装する」ということは「支配からの自由を勝ち取ろうとする」という意味なのだ。だからこそ、アメリカ合衆国の人権保証条項である権利章典の中に、こんな一文がある。

「規律ある民兵は国家の安全のために不可欠であるから、人民の武器の保有及び携帯は何人も冒してはならない」


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■共和党とロビイスト団体

共和党は「アメリカの保守政党」と呼ばれているが、共和党員のほとんどは銃規制強化に反対している。その理由は先述の通りで、「銃の所有は人権問題」だからだ。

今回の大統領予備選に立候補した共和党員は、全員が銃規制反対派である。しかも共和党は全米ライフル協会という大きな票田を持っている。

この全米ライフル協会は銃器関連業者のロビイスト団体で、銃規制反対派の議員に多額の献金をしていることでも有名だ。


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■権利章典の解釈

じつは民主党候補者も、銃問題に関しては強く言わない傾向がある。なぜなら、アメリカの権利章典は、世界に先駆けて民事裁判や拷問の禁止などに言及した条項だからだ。

「人権」という概念は、権利章典によって確立されたと言っても過言ではなく、それを改正することは大統領にもできない。

すると今度は文章の解釈の問題になる。「規律ある民兵」とは誰を指すのか? 「それは軍と警察に限る」といった解釈もあるが、一般的には「民兵は一般市民を指す」という解釈。アメリカ独立戦争を戦ったのは、ごく普通の市民だったからだ

そのような歴史があるから、アメリカの政治家は銃規制強化を強く訴えることがなかなかできない。「日本並みの厳しい銃規制を」と発言したナンシー・ペロシ元下院議長(民主党)などは、例外中の例外だ。

アメリカの銃規制問題は、非常に大きな課題として候補者たちの前に立ちはだかっている。

(文/しらべぇ編集部・澤田真一

アメリカ取材ドナルド・トランプ
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