武道になった火縄銃 現代の「サムライガンナーズ」に注目

2016/05/09 05:30

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日本には火縄銃という独自の武器がある。こう言うと「火縄銃はポルトガル伝来では?」と返されそうだが、もはや火縄銃は「日本の伝統武器」と断言できる。

銃身にライフリングが施されていない先込め式銃を、国際的には「マスケット」と言う。火縄銃も分類としてはマスケットの中に入るが、それでも日本人はマスケットに独特の作法を添加した。結論から言えば火縄銃射撃は、我が国では武道のひとつなのだ。

だからこそ、日本の火縄銃と西洋のマスケットは「異なる道具」と言える。


■雷のような射撃音

毎年5月5日、愛知県新城市にある長篠城跡で『長篠合戦のぼりまつり』が開催される。これは世界史上はじめて鉄砲を大量投入した長篠の合戦の戦死者を弔う目的で催される、全国的にも有名な祭事だ。

このイベントのメインは、なんと言っても火縄銃の一斉射撃である。各地の古式銃団体によるデモンストレーションは、見る者を圧倒する。

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まるで至近距離に雷が落ちたかのような轟音に、参加者たちは全身を震わせる。

先ほど「火縄銃は日本独自の武器」と書いたが、その第一の根拠は「礼を重んじる」ということだ。射手の一挙手一投足は「形」であり、実弾射撃の前にまずそれを学ぶことが求められる。

銃大国アメリカにはマスケットサークルが無数に存在し、ヨーロッパにも三十年戦争やナポレオン戦争を再現する目的の古式銃団体がある。だが、マスケットに「礼」や「形」を要求する国は日本以外に存在しない。


■意外に多彩な火縄銃の種類

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長篠合戦のぼりまつりには、山形米沢市から古式砲術保存会も毎年参加している。射手が手にしているのは、通常の銃よりも太くて重い三十匁筒だ。もちろん、大きい分だけ火薬を大量に使う。

この三十匁筒は大阪夏の陣では「上杉の雷筒」と呼ばれ、諸国の大名から恐れられた。無理もない。現代人ですらも戦慄するほどの爆音だからだ。

また、日本前装銃射撃連盟は六十匁筒、百匁筒、二百匁筒の射撃を披露した。これほどの大きさになると「銃」ではなく「大砲」に近い。

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地元新城市からは、長篠・設楽原鉄砲隊が参加。合戦当時を再現するかのような連続打ちを披露した。「火縄銃は装填に時間がかかる」と言われているが、工夫とチームワーク次第でその弱点がカバーできることを観客に証明した。


■銃は武道

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じつを言うと、古式銃自体は割と手軽に購入できる。1868年以前に製造された銃は、人にではなく銃そのものにライセンスが付属する。近代銃とは管理登録の管轄も違う。

だが撃つとなると、個人では非常に難しいという。火薬の問題があるからだ。昔ながらの黒色火薬でも、日本では所持が厳しく規制されている。

だから、火縄銃を撃ちたいと考える人はまず古式銃団体に加入し、そこで修行を積む必要がある。先述の通り、これは武道である。武道は一晩でマスターできるものではない。

火縄銃には、高貴な武士の魂が今も宿っているのだ。

(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一

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