参院選で選挙区「ニコイチ」に　鳥取・島根の声を車内で聞いてみた

今月22日に公示された参院選には、「初めて」がふたつある。ひとつは、選挙権年齢18歳以上への引き下げ。もうひとつは、いわゆる「1票の格差」を縮める目的で、47都道府県ごとに分かれていた選挙区の「合区」を行ったことだ。

今回は、鳥取と島根、徳島と高知の4県が対象になった。それぞれ2県を合わせて1選挙区としている。

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■「議員ゼロ県」生まれるか

参院選を巡る1票の格差では、選挙区の区割りを変えることなく定数の是正を行ってきたものの、47選挙区の維持が困難に。とりわけ人口が少ない4県を対象に大なたを振るった格好だ。

合区の対象になった4県2区は定員が4人から2人に減り、今回の半数改選で当選できるのは1人。3年後になる次回の改選次第では、議員を1人も出せない県が生まれる可能性もある。

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■東西300キロに及ぶ選挙区

また過疎化が進む4県は人口の割に県域が広い。 いずれも東西に細長い新たな2選挙区のうち「鳥取・島根」区を鉄道路線で見ると、選挙区内最東端の若桜駅（鳥取県若桜町）から同じく最西端の飯浦駅（島根県益田市）までの距離は327.2キロある。

東京を起点にすると、名古屋までの約370キロや仙台までの350キロ余りのイメージだ。もちろん新幹線はないから、列車で移動すると1日がかり。高速道路の整備も遅れている。

なお「徳島・高知」区では、東西をダイレクトに結ぶ鉄道すらない。

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■若桜～鳥取（普通列車）

実際に若桜駅から飯浦駅まで列車を乗り継いで移動しながら、地元の声を聞いてみた。

「候補者も大変だろうが私たちも大変。鳥取から議員がいなくなるかも」（八頭町・30代女性）
「いつかこうなると思っていた。都会は地方から人を奪い活力を奪い、議席も奪うのか」（若桜町・80代男性）

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■鳥取～米子（快速列車）

鳥取駅周辺は、見るからにさびれているのがわかる。目立つのは高齢者で、若者と呼べる層はサラリーマンかOLが大半だ。それでも米子（鳥取県）へ向かう列車内では、大学生の話を聞くことができた。

「興味がない。卒業後は就職で都市部へ出ることになっている」（4年生・女性）
「地方公務員志望なので、関わりが深くなるであろう国政の行方は気になる。でも合区は仕方ない」（3年生・男性）

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■米子～出雲市（普通列車）

米子市は、山陰地方随一の都市で人の行き来も多い。駅構内もにぎわっていたが多くが特急の乗客で、列車が発車してしまうと静かすぎるほど静か。それでもローカル列車には、島根の県庁所在地・松江駅の前後で立ち客も出た。

「合区になっても人口が多い米子や松江から議員を出せれば問題ない」（安来市・50代女性）
「議席減で感情的になる必要はない。仕方ない。1票の格差はこうでもしないと…」（松江市・30代男性）

■出雲市～益田（快速列車）

島根県西部の石見地方へ入ると、沿線にめぼしい都市はなくなる。車窓には日本海。小さな入江に抱かれた集落が現れる度に駅があるが、人影はまばら。車内はいよいよ閑散としてくる。

「18歳・専門学校生。初めての選挙だが、政策で選ぼうにも人で選ぼうにも基準がわからない」（大田市・男性）
「同。ぜんぜん盛り上がっていない。都会では盛り上がっているんですか？　同じでしょ？」（同）

■益田～飯浦（普通列車）

乗っていたのは、主に学校帰りの高校生で20人ほど。飯浦では誰も下車しなかった。

■大切にしてきた「1票」

「少ない少ないというが、ちゃんと人は住んでいる。声を聞いてくれる議員が減るのは痛い。見捨てられた」（鳥取市・60代女性）

鳥取と島根の2県を合わせた人口は130万人ほどだ。

「都会にひとつふたつと議席を譲っても、投票率は低い。投票に行かず、1票を大切にしない。私たちは大切にしてきた。投票率も高かったはず。課題が多い地方に住んでいるからこそ欠かさず投票してきた」（米子市・70代男性）

（取材・文／Sirabee編集部）