日本人の働き方には本当に無駄が多いのか?

2016/09/29 10:30

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imtmphoto/iStock/Thinkstock

 

 ■日本の時間当たり労働生産性はどれくらい?

働き方改革」が叫ばれています。いちばんの目玉はどうやって長時間労働を是正するのかなんですけれど、これが一筋縄ではいきません。

単純に言えば「長時間労働をやめたいなら仕事を減らせばいいじゃん」ということなのですが、それでは会社が困っちゃうわけです。景気を盛り上げることに必死の政府だって困っちゃいます。

そこで「もっと効率よく仕事をすれば、労働時間を短縮しても今までと同じかそれ以上の成果を上げられる」という理屈が流行しています。その根拠が「労働生産性」です。

日本の「労働生産性」は、OECD加盟国の中で下位のほうに位置します。2014年のデータでは34カ国中21カ国です。簡単に言うとGDPを就業者数で割った数字です。

似た性質の数字に「時間当たり労働生産性」というのもあります。簡単に言えばGDPを総労働時間で割ったものです。つまりその社会において1人の労働者が1時間でどれだけの付加価値を生み出しているかという数字です。これでも日本は21位です。

時間当たり労働生産性1位のルクセンブルクの労働者は1時間に92.7ドルの付加価値を生み出しています。2位のノルウェーは85.6ドルです。では21位の日本の労働者は何ドルくらいだと思いますか?

①約70ドル


②約60ドル


③約50ドル


答えは41.3ドルです。1位、2位の国の半分以下です。


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■産油国が最強という身も蓋もない結論

これを根拠に、「日本人労働者は効率の悪い働き方をしている」と言う人がときどきいるのですが、それはちょっと雑な論理です。

参考までにOECD加盟国以外の国も含めて「労働生産性」の高い国をランキングしてみると、上位3位はカタール、クウェート、サウジアラビアと産油国。OECDの優等生ルクセンブルクやノルウェーよりも、産油国が上に来ます。

4位はシンガポールでアジアの金融センター。ここでは5位に位置するルクセンブルクはヨーロッパの金融センターであり鉄鉱石を産する資源国でもあります。6位のノルウェーも産油国。北海油田がありますから。

このことからもわかるように、もともと「労働生産性」とは労働者の働き方の効率性を表す数字ではなく、どれだけ効率よく稼げる産業を抱えているかを表す数字なのです。日本でも、油田が発見されたり、温泉を大量に高価で輸出できるようになったりすれば労働生産性は一気に上がるでしょう。

これをもってして、「まだまだ効率よく働けるだろ」というのがいかに乱暴な論理かということがわかるでしょう。

無駄な会議や無意味な残業はどんどん減らすべきです。でもまじめに働いている労働者がさらに追いつめられるようでは、社会はますます殺伐としていきます。

「サボるな! もっと働け! 代わりはいくらでもいるんだぞ!」


と労働者に鞭を振るう社会になってほしくはないですよね。

仕事とは、一生走り続けるマラソンのようなものです。それぞれのペースというものがあります。それを無視して「もっとタイムを縮めろ」と言われても、リタイヤする人を増やすばかりとなるでしょう。

目指すべきはみんながマイペースに生きられる社会であるはずです。

※この記事は全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」のコラボ企画です。記事の更新は隔週木曜日10:30am。記事更新の約10分前から、おおたとしまさがこのラジオで記事と同様の話をおしゃべりします。

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(文/おおたとしまさ

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