わいせつとは? 日本の性表現の問題点は? 川奈まり子・ろくでなし子が激論

川奈まり子氏・ろくでなし子氏が、日本の性表現やネット炎上などについて激論!

川奈まり子ろくでなし子

漫画家・芸術家のろくでなし子氏。女性器をモチーフにした芸術作品を制作したことで、逮捕・起訴され、有罪判決を受けたが、むしろそれを奇貨として精力的な制作活動を続ける。

「わいせつ」とは何か? 性にまつわる表現や活動には、何が求められるのか?

結婚式を目前に控えていたろくでなし子氏に、AV出演者の人権を守る「表現者ネットワークAVAN」代表の川奈まり子氏が迫った。


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■「警察のおかげ」で結婚まで

川奈:夫になるマイクさんが、なし子さんに送ったという歌、私も聞きました。


ろくで:結婚も、ほんと警察のおかげですね。逮捕してくれたおかげでニュースになって、世界から取材がきて、それを見た彼がどういうわけか好意を持ってくれて。いちばん緊張する裁判の日に「ろくでなし子の歌をつくったよ」と送ってきてくれたんです。


「日本に行くから、ご飯でも食べないか」と言われて、「ご飯くらいならいいかな」と思って会ったのですが、「もう少し日本にいるからまた会ってほしい」と言われて…。


で次の日会ったら、また新たな「ろくでなし子の歌」をつくってきてた。「告白の歌」とかも。こちらは公開してないですけど。


川奈:「結婚してもいいかな」と思ったきっかけは?


ろくで:面白い人だと思ったからですね。「面白いから結婚する」という感じ。歌をつくるとか、日本に来て毎日会いたがるとか、わたしにも彼を好きな気持ちがなければ無理でしたけど(笑)。


川奈:「逮捕騒動」の後も、いろいろありましたよね。


ろくで:アムネスティでの講演が一旦中止になり、結局開催されるというゴタゴタがあったのは、「ぱよぱよちーん騒動(※)」が原因。私におちょくられてメンツをつぶされたと思っているみたいで、そうした人たちからアムネスティへの抗議があったようです。


(※編集部注:ヘイトスピーチに暴力で対抗する『しばき隊』幹部の勤務先などが発覚し、ツイッターで千葉麗子氏に対して『ぱよぱよちーん』といったくだけたコメントを送っているのがさらされた件)


川奈:でも、なし子さんは「語感が面白かったから使った」とだけだとか?


ろくで:そうなんです。彼にも経緯を説明したら、「ぱよぱよちーん、かわいい言葉じゃないか!」ということになって、歌までつくってくれちゃって。


ぱよぱよちーん


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■日本の性表現の問題点

川奈:私もこの件では、アムネスティに抗議しようと思ったんです。前々から、日本のアムネスティには、ちょっとおかしなところがあると感じていて。


アムネスティ・インターナショナルは、セックスワーカーの人権を認めているのに対して、日本のアムネスティは、AV女優の人権侵害につながる危険性がきわめて高い提言をしているヒューマンライツ・ナウ(HRN)らと歩調を合わせているのではないかと疑ってたんです。


ツイッターで事務局長が手放しでHRNを褒めていて仲良しなところを見かけたので、つい。今回、ろくでなし子さんのイベントの後でアムネスティ日本の理事長さんたちとお話しして、ひどい誤解は解けましたが、もう少し頑張ってもらいたいなぁとは、正直、今でも思ってます。


HRNの提言をきっかけに、無条件にAV出演は「職業安定法上の有害危険業務」として、プロダクションの代表などが派遣法違反で訴えられている事態になってるんですよ。


ろくで:なんでですか? ほとんどの女優さんは自分でやりたくてやっているんですよね?


川奈:今のAV女優は自分で応募してきた人が大半です。職安法で出演行為が違法になってしまうと、確信的に違法行為に荷担したということになり、AV女優にはその仕事を選んだりする自己決定権がなくなってしまいます。


ろくで:応募してくる女性が多いのは、仕事がないから?


川奈:たしかに「お金がほしい」というのが、いちばん大きな理由でしょう。ただ、うちの旦那(溜池ゴロー監督)が先日撮影した女優さんは、デビュー前は、胸がすごく大きくてコンプレックスだったそうなんです。「自分のカラダは規格外だ」という事実をつきつけられ続けてきて、非常につらかった、と。


ところがあるとき、胸が大きなAV女優の広告を見て、「これはいけるんじゃないか」と思って、AVの面接を受けたら、関係者が目をキラキラさせて、「君、すごいね!」と。大歓迎されて、その後いくつもの作品で活躍しています。


デビューしたときは、AVでお金を稼いで胸を小さくする美容整形を受けようと思っていたといいますが、今はもう、手術する必要は感じていないんじゃないでしょうか。


ろくで:他者に「承認」されたんですね。


川奈:他にも、私もそうだったけど、「ありとあらゆるプレイをしてしまったから、後はAVに出てみるか」みたいな女性もいますよ。


私とはじめて面接したとき溜池監督が、「僕が撮った君のビデオを見て、何千人・何万人の男性が自分ですると思うけど…」と言ったんですが、そのとき私は「女神降臨」みたいな図を想像してしまって(笑)。


それで、そんなふうに大きな影響力を持ちうる仕事なら、単にいろんな人とセックスするよりずっと面白いと思って、プロのAV女優になったんです。


こんな私自身も例として出しながら「自分からAVに出たいと考える女性が今はたくさんいる」とさまざまな場で説明しているんですが、「信じられない」と言われてしまうことが多くて困ってます。


ろくで:自分の常識から出られない人っていますよね。私も女性向けアダルトトイ販売のバイトをしていたときに、取材に来ていた某メディアの男性が「セックスのときになぜ道具を使うのかわからない」などと話しているのを耳にして。


そういう人はバイブを汚いものみたいに触る。「自分の思い込みを取っ払えないで、何しに取材に来てるんだろ」と思いました。常識をたてにする人というのは「そんなこと常識のある人だったらやりません」とか言ってくるんですけど、私は常識をむしろ軽蔑してるから、会話が噛み合わない。


「世間がどう思うか」を考えてたら、そもそも女性器アートなんてやってないですよ(笑)


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