「転売屋を本気で潰す方法」が議論に 弁護士に見解を聞いた

2016/11/16 07:00

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ネットオークションの普及に伴い、ライブや演劇のチケットを売り買いすることは一般的な行為になった。

しかし、営利目的の転売行為が横行し、ファンが適正な価格でチケットを入手できないという問題も起こっている。

これに関し、とあるツイッターユーザーが「転売屋を本気で潰す方法」を提唱。その過激さもあって、議論を生んだ。



 

■捨て垢で値段爆上げして破滅へ追いやる

元ツイートはすでに削除済みだが、その内容は以下のとおり。

「転売屋を本気で殺すなら複数人で棄て垢何個も作って値段爆揚げして取り引きナビでなんだかんだ理由つけては放置。出品者は落札価格の5.4%をシステム手数料として支払う義務が発生するからね。それで死亡した転売屋を幾多も見て来たけど悪い事してるのは転売屋、お前だ」


これに対し、納得の声もあれば、「転売屋を潰すために規約違反の行為をするのはどうなのか」「もし損害賠償請求されたらどうする? そこまでしてするべきことなのか?」など、反対意見も相次いだ。

賛否両論となっている状態だが、果たして法律的に見るとどうなのか? しらべぇコラムニストで、レイ法律事務所に所属する高橋知典弁護士に話を聞いた。

高橋知典弁護士


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■転売屋を困らせる目的で、落札意図がないのにも関わらず高値での入札を行なうのは、法律的に罪に問われる行為か?

高橋弁護士:結論から言うと、ネットオークション運営会社や、転売屋の業務に対し、迷惑をかけている点から、偽計業務妨害(刑法233条)に該当する可能性はあります。


もっとも、偽計業務妨害の罪は、人の業務を保護する目的ですので、転売屋の転売行為が、果たして法的に保護される業務といえるかは微妙なところです。


このため、明確に何かの罪に該当するともしないとも言い難いところです。


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■それでは弁護士の視点から、本気で営利目的でのチケット転売をなくそうとするにはどうするのがいいと思うか?

高橋弁護士:チケットの転売は違法になる場合があり、警察等による取り締まりがあるべきなのですが、難しいのが実情です。その理由の1つには「転売屋と熱心なファンとの違いを見分けることが困難だ」ということがあげられます。


チケットを買うとき、長いときには公演日から半年以上前にチケットの申し込みをするスタイルもありますが、それだけ先のスケジュールはなかなかつかみにくく、直前に行けなくなることも珍しくない。半年と言わないまでも、数週後のスケジュールでも十分起こり得るでしょう。


また、一緒に行く友達が行けなくなってしまったり、直前に誰か友人を誘って見に行こうと、念のため買っておく方もいます。このような場合、使わないチケットをネットオークションで売却するのは、普通に行なう行為です。


これに対して、とくに事件として報道されている転売屋は、数百枚に及ぶチケットを大量購入し、売却しています。さらに、ファンはチケットを値崩れするか否かを問わずに買うのに対し、転売屋は確実に値上がりするであろうもののみを狙って買う点で異なります。


ただ、実際に取引が行われているサイトを見ても、一般のファンが先程のような経緯で出品しているのか、イベントに行く目的のない営利目的だけの転売屋が出品しているのかの区別がつきにくいのです。


たしかに、IDから過去の履歴を調べられますが、転売屋は頻繁にIDを変えますので、見抜くのは難しい。よっぽど悪質な、とんでもない数のチケットを継続的に売買しているようなケースが摘発されているような状況です。


もっとも、最近では顔認証を導入している公演もあるようですし、お金を得る転売屋を撲滅するには、悪質な転売屋の入り込む余地のないチケット販売の工夫が必要になるのかもしれません。


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■転売はアーティスト側にとっても大きな問題

高橋弁護士:転売目的で、チケットを大量に購入されてしまうことで、本当にコンサートに行きたい人が、さらに入手困難な状況になっているといえるでしょう。


また、コンサートプロモーターズ協会は、チケットの転売問題を大きな問題として取扱っています。


というのも、コンサートビジネスにおいてはチケット販売だけでなくグッズの売上が芸能プロダクションやイベンターにとって大きな収益源になっているのですが、ファンが高額なチケットを購入することにより、結果、グッズを購入する金銭的余力がなくなりグッズの売上が下がってしまうという問題があるんです。


簡単に言えば、本来であればアーティスト側に入るべきお金が、転売屋に入ってしまっているのです。



高橋弁護士の見解では、転売屋を潰す目的での上記のような行為が、罪に当たるか当たらないかは非常に微妙な線上にあるようだ。

サイトによっては規約違反になる場合もあるため、自ら危険をおかして行なうような行為でないのは間違いないだろう。

転売をなくす方向ではなく、購入時に顔認証を義務付けるなどの方向性での改良が、労力はかかるがもっとも効果的なのかもしれない。

少なくとも、相手の倫理観に訴える方法に意味はないだろう。

(文/しらべぇ編集部・クレソン佐藤 取材/レイ法律事務所・高橋知典弁護士

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