WELQ問題でも注目の「無断引用」という言葉は誤り!弁護士が警鐘

2017/03/13 17:30

辞書
(AID/Thinkstock)

『WELQ』『MERY』などのキュレーションメディアを運営していたDeNAは、13日、第三者委員会による300ページにおよぶ調査報告書を全文公開した。

それによれば、37万6,671件の記事のうち、最大で5.6%、2万件以上に「複製権/翻案権侵害の可能性がある」という。



 

■報道でも使われる「無断引用」

これを受けた報道やSNSで見られるのが「無断引用」という言葉だ。

たとえば時事通信は、13日配信の『74万件で権利侵害の可能性=まとめサイト問題-DeNA』と題した記事の本文中に、「〜『まとめサイト』で無断引用などを行っていた問題で〜」と記載。

同じく2月8日の配信記事では『まとめサイト、減損38億円=無断引用響く-DeNA』と、タイトルに「無断引用」という言葉を用いている。


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■DeNAの報告書では見られない表記

これは、第三者委員会の調査報告書が「無断引用と記しているため」ではなさそうだ。約300ページの中で、「無断引用」という言葉が出てくるのは、わずか1回。

キュレーションメディア『iemo』の執筆マニュアルを引用したくだりで、

「iemoでは、〜中略〜『他サイトや書籍など、既存のすべての資料からの無断引用(コピーペースト)は絶対にしないでください』〜中略〜と明記している」


と原文ママで書かれているのみだ。それ以外の部分では「無断利用」などと記されている。


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■『毎日新聞』校閲ツイッターも注意喚起

3年ほど前の投稿になるが、『毎日新聞・校閲グループ』のツイッターアカウントも、『無断引用』は誤り」と指摘している。

そのためか、毎日新聞がこの発表を報じた記事では、「無断引用」という言葉は使用されていない。


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■弁護士「『無断引用』は言葉の誤り」

しらべぇ取材班は、レイ法律事務所に所属する河西邦剛弁護士にも、法的見解を聞いた。

河西弁護士:著作権法32条1項に「公表された著作物は、引用して利用することができる」と規定されている以上、元の記事を作成した著作者であっても、記事を公表したことで、第三者により引用される可能性は考慮せざるを得なくなります。


もっとも、リンク元を明示する等の出所明示をし、引用部分を明確に区別して引用すること等が必要です。 そして、著作権法上の要件を満たせば、著作権者の承諾なくとも引用することができます。


「無断引用は違法だ!」という言葉を、昨今耳にするようになりましたが、そもそも著作権法上の「引用」の要件を満たせば、無断で引用したとしても著作権法上は適法です。 他方で、著作権法上の引用の要件を満たしていなければ、そもそも適法な引用に該当せず、違法な転載行為となり得ます。


なので、「無断引用」という言葉自体が、概念矛盾しているとも感じられかねないワードになっていると言えるでしょう。


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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/レイ法律事務所河西邦剛弁護士

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