【コラム】ガンプラが盆栽になる日 「20代の5割がガンダムを知らない」の真相

コラム

2014/07/04 15:00

gun少し前だが、Web R25の「『ガンダム知らず』20代が5割?」という記事がネットで話題になっていた。まとめサイト「痛いニュース」などでも取り上げられていたので、知っている人も多いことだろう。タイトルと内容は少し違っていて、要するに20代の男性200名に『機動戦士ガンダム』のモビルスーツのどれが好きか、どれに乗りたいかを聞いたところ、51%の人がそもそもガンダムを知らないと答えたのだという。

まずは、この事実を冷静に捉えたい。私はむしろ、「5割が知っているなら、大健闘ではないか?」と考える。そもそも、この記事を読む限り、「ガンダムシリーズ」を知っているのかと聞いているのか、中でも最初の作品である『機動戦士ガンダム』を知っているのかというどちらの質問だったのかがわかりにくい。おそらく、他の質問と合わせて考えてみると、後者だろう。

また、「知っている」も、どこまで知っているのが不明確だ。仮に『機動戦士ガンダム』を「知って」いたとしても、作品のタイトルレベルから、せいぜい地球連邦軍とジオン公国軍が争っていて、主人公のアムロと、ジオン公国軍のシャアがライバル関係ということくらいしか知らないのではないだろうか。

やや余談であり、自分の本の宣伝なのだが(ステマって言うな、そういえば最近、この言葉消えたな)、2012年の9月末に『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)という本をリリースした。おかげ様で話題作となり、4刷1万8000部のスマッシュヒットとなった。もっと売れているようなイメージがあったかも知れないが、そんなもんだ。最近では、格闘家青木真也選手のブログでも紹介されたぞ。

この宣伝のような壮大な前置きは、ちゃんと関係がある。というのも、この本を著者、編集者に献本した際、若手論壇系の人からは「実は僕、ガンダム知らないっす」という反応がかなりあったのだ。もちろん、作品のタイトルとなんとなくの設定は知っているのだが、詳しいことは分からないのだ。ましてや、地球連邦軍の量産型モビルスーツジムが登場するのは第29話の「ジャブローに散る!」だから、実はこの作品のタイトルは、わかる人にしか分からないのだ。

ここで、歴代ガンダムの視聴率を見てみよう。Wikipediaにはガンダムシリーズの平均視聴率が作品ごとに書いてある。これをまとめると、ベスト5はこうなる。

1位 機動戦士Zガンダム:6.4%
2位 機動戦士ガンダムSEED:6.2%
3位 機動戦士ガンダムZZ:6.02%
4位 機動戦士ガンダムSEED DESTINY:5.4%
5位 機動戦士ガンダム:5.3%

どうよ、この意外な結果? そう、『機動戦士ガンダム』は1位じゃないのだ。また結局、ヒットしたのは『機動戦士ガンダム』とその続編シリーズ(Z、ZZ)、SEEDシリーズだということもわかる。

しかし! このデータは注意して扱わないとならない。これは、「初回放送時」の「関東地区」での「平均視聴率」なのである。最高視聴率でみると、最終回などはもっと高くなっているわけだ。また当初、ガンダムシリーズの制作局だった名古屋テレビの関連エリアではより高い視聴率だった。放送されている時代が違うので、テレビへの接触スタイルの変化、どの枠だったかも考慮しなくてはならない。

それでも、ガンダムといえば『機動戦士ガンダム』と言われるのはなぜか? 実はこの作品、再放送されるたびに視聴率が上がっていった番組なのだ。1982年の名古屋地区での再放送は平均視聴率25.7%にも達したという。もともと、今までのアニメになかった設定がリアルで、それ故に難しく、何度か観ないと理解できなかったという点があると思う。その時代に再放送を何度も観ていた立場で言うならば。また、「視聴率」という指標だけでは語れない。「ガンプラ」や、ガンダムをテーマにしたゲームなどが作られるが故に、アニメではなく、そちらがきっかけで番組に接した人も多いことだろう。

いつも商品化されるのは最初の『機動戦士ガンダム』だ。この『機動戦士ガンダム』だが、ファン層を広げる努力をしつつも、リアルタイム、あるいは初期の再放送で観ていた層、つまりアラフォー男子たちを何度も狙い撃ちしている。これまたやや宣伝になるが、昨年『アラフォー男子の憂鬱』(常見陽平・おおたとしまさ・編 日本経済新聞出版社)という本を出した。タイトルそのまんまの本なのだが、そこでライター・編集者の速水健朗氏は担当した章で、アラフォー世代は、「最後のマス」と言われるが故に、消費の対象として狙い撃ちされていると論じている。ガンダムにしてもそうだ、と。アラフォー男子たちもいきなりガンダムが詳しかったわけではなく、再放送や、『アメトーク』などでガンダム芸人が話題になるなどしたが故に、浸透していったのである。

もっとも、ガンダムシリーズは常に実験の繰り返しをしていて、新しい層を取り込もうと努力している。SEEDシリーズは、女性を取り込むことに成功した作品だと言えるだろう。最近の作品では、親子2世代で観ることを意識したものも見受けられる。とはいえ、なんせ、人口も減っているし、メディアへの接触の仕方も変わっている。また、申し訳ないが、いかにも過去作品へのオマージュや、ガンプラを始めとする商品を売らんかなという姿勢も感じられて、嫌な気分になったりもする。

元々の話に戻るが、20代男子の約5割がガンダムを知らないというのも当然といえば当然だ。今後も、ガンダムシリーズは新規の顧客開拓を目指すという取り組みをしつつも、現状のアラフォー男子たちがコアターゲットになっていくのだろう。

6月に発売された『機動戦士ガンダムUC』のネオ・ジオングは、144分の1スケールにもかかわらず、約86センチのボディ。2万7000円という強気の値段だった。今の20代には、無理だろう、これを買うのは。しかし、アラフォー男子の一部はこれにお小遣いを注ぐのだろう。

こうして、ガンプラは、今のアラフォー男子たちの盆栽となっていくのだろう。

(文/常見陽平

※画像はサイトのスクリーンショットです
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