若手蔵元が集結する熱い試飲会で出会った「日本酒の未来」4選
今、世界で日本酒が熱い! SUSHIブームもあいまってか、昨年度の日本酒の輸出額は、105億円と10年前の2.7倍。若い世代が蔵元や杜氏を継いで、個性的な酒を醸す蔵も増えつつある。
そんな全国の“次世代蔵元”たちが主催する試飲会イベントが、東京・渋谷で行われると聞き、取材に行ってみた。
「若手の夜明け」と題する試飲会は、今回で15回目。北は青森から南は大分まで、全国31の蔵元が集まった。はっぴを着てお酒を振る舞う酒蔵関係者の中には、外国人の姿も。
山形県酒田の「楯の川酒造」に勤めるクリス・ヒューズさんは英国出身。ロンドンで2年間ほど日本酒の販売をしていたが、昨年来日。銘酒「楯野川」の海外営業を担当しているという。
そんな中でも、希望に満ちた日本酒の未来を感じさせてくれた、4つの蔵元をご紹介しよう。
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1.発想は「あの映画」!? デ・ニーロ似蔵元が醸す大人気純米酒
かなり変わった名前のお酒をつくるのは、喜久盛酒造(岩手県北上市)の藤村卓也さん。
「アートディレクターの高橋ヨシキさんと一緒にお酒の企画をしていて、高橋さんが『“鬼ころし”ってのがあるから“人ごろし”ってのはどうだ?』とか『お燗専用で“ちくび”って酒つくれば、お店で“ちくび、かんで!”ってオーダーされるんじゃないか?』くらいまで滅茶苦茶なことを考えた末、2人が好きな映画の話から、この名前に落ち着きました。おかげさまで好評で、毎年つくる量を増やしています」とのこと。
喜久盛酒造は、この秋の酒造りからすべての酒を純米で醸す、こだわりの蔵。「タクシードライバー」も奇をてらったような名前ながら、どっしりと米の旨味あふれる純米原酒だ。
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2.爽やかさの決め手は「花の酵母」 山梨県はワインだけじゃない!
山梨県といえば、国産ワイン。80軒ほどのワイナリーがあるのに対して、日本酒の蔵元は10軒ほど。この「青煌」を醸す武の井酒造(山梨県北杜市)も年間わずか60石=1升瓶で6,000本を生産する、全国でもっとも小さな蔵元の1つだ。
東京農業大学で醸造を学んだ蔵元の清水紘一郎さんが、杜氏も務める。こだわりは、「つるばら」という花からとった酵母。爽やかで、飲み続けるのにぴったりの食中酒になるという。
取り扱いは全国15軒の酒店のみ(2014年10月現在)なので、幸運にも出会うことができたら即買いをオススメしたい。
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3.宮城県で3軒の農家しかつくれない「幻の酒米」を自社で育てる
「山田錦」という名前は、お酒にくわしくない向きでも耳にしたことがあるだろう。「酒米の王者」とも言われる、兵庫県生まれの品種で、今も兵庫県産が8割を占めている。
そんな山田錦に負けない酒米を東北の地でも育てたい、という情熱から生まれたのが「ひより」という新しい酒米。山田錦にササニシキの父であるササシグレという米を掛け合わせて、宮城県で誕生した。
しかし、まだ栽培が難しく、県内でもごくわずかの農家が生産するのみ。その1軒が、「宮寒梅」を醸す寒梅酒造(宮城県大崎市)なのだ。
こちらも300石の小さな蔵元なので、お目にかかるのは稀かもしれないが、米づくりから丹精を込めたすっきりした味わいを、ぜひお試しいただきたい。
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4.権威ある海外賞も受賞! 「試験醸造」なんてもったいない
萩野酒造(宮城県栗原市)の蔵元である佐藤曜平さん は、この試飲会を率いるリーダーの1人。東京農業大学で学んだ気鋭の若手だ。
こちらのちょっとかわいいボトルのお酒は、「萩の鶴純米大吟醸 試験醸造酒生原酒」。シャンパンのように瓶内で二次発酵するため、シュワシュワと微発泡を楽しむことができる。
まだ試験醸造と言いながらも、ロンドンで行なわれた世界的なお酒のコンクール「IWC2014(インターナショナルワインチャレンジ)」のスパークリングSAKE部門で入賞した実力派。
甘酸っぱい香りを楽しみながら、シャンパングラスで飲んでみたくなる逸品だ。
このイベントは、東京・渋谷にて、本日(10/19・日)も3回にわたって開催される。おいしい“未来”を実感してみたい方は、ぜひ!
*参考:「第15回若手の夜明け2014」facebookイベントページ
【酒蔵自慢の「仕込み水」が並ぶコーナーも】
【試飲会の横では、蔵元による日本酒セミナーを開催】
(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト)