交通違反した覚えないのに・・・。サインを拒んだら?【伊武センセの法律相談室】

コラム

2014/12/12 21:00

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相談

先日、車を運転していると、進路変更の際に「ウインカーを出してなかったから合図不履行違反だ」と言われて白バイに止められました。そんな違反をした覚えはなかったのですが、警察官と争うのが面倒だったので、切符にサインをして帰りました。いまさらですが、納得がいきません。もし、切符にサインしなかったらどうなったんでしょうか・・・。

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司法書士・伊武センセの解説

ありますね~ 納得のいかない取り締まり。特にネズミ捕りは、なんでこんな所で!?ということも多く、不意打感とショックで、つい「ズルい!」なんて思ってしまいますよね。まったく、レーダーポイントを過ぎてから警察官に停止を求められるまでの恐怖といったら…。

さて、警官がどんなズルい取締り手口で違反者を検挙したとしても、立派に交通違反を犯したならば、お咎めを受けても仕方がありません。

しかし、読者様の状況はちょっと違いますね。違反をしていないのに切符を切られたということですから、冤罪ですよこれは!

警察官と言い争うのが面倒でサインしてしまうのもわかりますが、本当に違反をしていないのなら、切符へのサインを拒否して事実(=違反)を争うという方法もあります。

警察に楯突くととんでもないことになるんじゃ・・・という読者様のご不安、よ~くわかります。しかし、そのご不安の正体は疑心暗鬼ではないでしょうか。青切符違反の後、どうなるのかを知っていれば、正体不明の不安も大分薄らぐのでは。

じゃあ、さっそく青切符へのサインを拒否したらどうなるのか。まずは、サインをする切符の制度から説明しましょう。

●「切手制度」って?

道路交通法では、交通違反者について懲役刑や罰金刑を定め、刑事罰を科すようになっています。これが原則です。しかし、刑事罰を科すには刑事裁判を開かねばならず、とてもじゃないですが、現在の交通事情では警察官が検挙した違反者をさばききれません。

そこで、切符制度というものが導入されました。この切符制度は、違反者が自ら違反を認めてお金(=違反金)を納めれば、めんどうな裁判はやめようという制度です。

切符には青切符と赤切符があります。青切符は軽微な違反のときに交付され、赤切符は酒気帯び違反など重大な違反をした場合に交付されます。赤切符は重大な違反があった場合に交付されますから、1回の違反で免許停止となり、簡易裁判所で何万円もの罰金を収めることになります。

読者様にとって、より身近な(?)切符は青切符でしょう。標識違反や軽いスピード違反などで交付される切符です。この青切符をいただく場合、通常は、警官にお説教をされながら、この青切符にサインをして、後日反則金を納めれば、手続きは終わりということになります。

しかし、後に理由を説明しますが、違反をしていないのに警官に咎められたという場合には、この青切符へのサインを拒否しなければなりません。

●拒否しちゃって大丈夫なの?

サインを拒否するとどうなるのか。おそらく警察官は、現場で長時間に渡りあなたを事実上拘束し、脅したり宥めたりしながらキップにサインをするよう強要するでしょう。それでもあなたが拒否の態度を貫けば、応援という名で何台かのパトカーが現場にわらわらと集まって来ます。目立つことこの上ありません。それに場合によっては、近くの警察署に任意同行されてしまうかも。警察署では完全に多勢に無勢。複数の警官から責め立てられ、疲労困憊したあげく、弱気になってサインをしてしまいそうになる・・・というのがよくあるパターンです。

なぜ警官が青切符へのサインをこんなにも拘るかというと、青切符へのサインには、自分が違反したことを認めます、という自認の意味があるからです。わかりやすくいうと、道路交通法違反という犯罪をやりましたと自白したことになってしまうのです。だから、交通警官は刑事さんのごとく青切符へのサインを執拗に強要するんですね。

しかし、ここがふんばりどき。違反をしていないと主張をするなら青切符にサインをしてはいけません。

ここでも挫けずにサインをしなければどうなるか。結局、サインのない青切符を渡されてその場は終わることが多いようです。

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●その後の行方

そうすると、次は、サインをせずに押しつけられた青切符をそのまま放置していたらどうなるのかという問題が出てきます。

青切符を切られると一緒に反則金納付書が渡されます。通常だと、この用紙を持って銀行等にいき違反金を支払って一件落着となるわけですが、違反をしていないと主張しているわけですから、反則金を払う理由はありません。

反則金を払わず放置しているとどうなるのでしょうか。

反則金を納めなければ、後日、「交通反則通告書」というものが届き、反則金を支払うよう催促されますが、それでも反則金を支払わなければ、何度か同じ通告書が来たり、出頭要請があったりします。

ここで、注意をしておかないといけないのは、この出頭要請を無視してしまうと、場合によっては、逮捕されることもあるということです。ただの交通違反で逮捕というと読者様は驚くかも知れませんが、交通違反もそもそもは犯罪。犯罪を犯しておきながら、事情聴取のための出頭要請を無視し続ければ、実質逃亡しているのと同じだと扱われてしまうのです。ここは面倒でも、ちゃんと出頭して自分の主張を説明しに行かなくてはいけません。

一応、出頭要請にも応じながら、それでも違反を認めなかったらどうなるか。

その場合、自動的に刑事裁判にかけられることになります。

ただ、刑事裁判をするか否か(起訴するかしないか)は検察官が決定します。ここで、不起訴とされれば、それで刑事手続きは終了。何もお咎めはありません。実は、交通違反事件の場合、検察官が不起訴とする率が非常に高いと言われています。一説では、80%以上の事件が不起訴になっているとも。

これは、刑事裁判を開くとなれば、ドライバーが違反をしたという証拠を検察官が提出しなければならず、そのための捜査の手間や証拠収集の難しさにあると言われています。その意味で、交通違反を否認(=青切符へのサインを拒否)した場合に目指す終点は、検察官の不起訴といえるのです。

●“刑事裁判”が始まると?

とはいえ、もしも不起訴にならず、起訴されてしまうと刑事裁判が始まってしまうということは知っておきましょう。

交通違反事件の場合、刑事裁判と言っても通常は略式裁判といって1日で判決が下される簡単な裁判が行われます。この略式裁判は、検察・警察の作成した資料のみで判決を下すため、交通違反の無罪を勝ち取ることは、まず無理だといわれています。無罪を争うのであれば、略式裁判で裁かれることに同意せず、正式裁判を開くよう申し立てて下さい。

正式裁判が開かれると、後は一般の犯罪を裁くのと同じ手続きで刑事裁判が進んでいきます。ここで読者様の主張が認められて無罪の判決が下され確定すると、晴れて事件は一件落着となります。

ところで気になるのは裁判の結果。自分は違反はしていないのだけれど、裁判では検察官の主張が認められて有罪となってしまった。その場合、どんな罰を受けるのか・・・。気になるところですね。

ご安心(?)ください。青切符の否認事件で刑務所にいったりすることはありません。下される判決は、ほぼ間違いなく罰金刑です。それも反則金と似たり寄ったりの金額が言い渡されるようです。だから被告人となった読者様の経済的負担はほとんど変わりません。

なんだ、不起訴にならなくても払うお金は一緒か、じゃあホントは違反したけれど、ダメ元で争っちゃえばいいや!・・・、などと簡単に考えた読者様。ちょっと待って。それは早計ですよ!

反則金と罰金の大きな違い。それは、罰金刑を受けると「前科」になってしまうということです。反則金は前科にはなりません。前科となると、履歴書の賞罰欄にも書かないといけませんし、医師免許をもらえなくなる場合があるなど公的な職業に就けなくなることだってあるのです。支払う金額が同じ位だからといっても、その意味は雲泥の差なんですよ~。

たかが交通違反、されど交通違反。くれぐれも、実際に交通違反をしておきながらゴネ得を狙うなんてことはしないでくださいね。

■杉山さんのひと言

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交通取締りって、汚い手を使うと思いませんか~。

一方通行の出口で取締りをしてたり、速度制限が変わった直後でスピード違反の取締りをしてたり。

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実は、警察庁・次長通達というルールがあって、交通警察官は、取り締まりやすい者だけを取り締まったり、身を隠して取り締まる、危険性の少ない軽微な違反を取り締まる、といったことをしてはいけないと、定められてるんですけどね!

(文・漫画/田島 隆・高橋昌大 『びったれ!!!』しらべぇ出張版・スーパー司法書士・伊武センセのスペシャル講義

奮闘!びったれ|秋田書店 : http://arc.akitashoten.co.jp/comics/bittare/1/