【体験レポート】アンジェリーナ・ジョリーも入れた、タイで入れる手彫りの刺青

2015/01/12 10:00

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「刺青を入れたい」

20代のころから漠然とその想いを抱いていた。しかしその願望は、日本に根強く残る“刺青への反社会的意識”との葛藤により、叶うことはなかった。

記憶にも新しいかと思うが、北海道の温泉施設で顔面に刺青を入れたマオリ族の入浴が断られことが、ニュースで取り上げられた。マオリ族が顔面に刺青を入れるのは、伝統的な文化。それでも入浴拒否されたことで大きく報じられたのだ。日本が刺青に対し強い反社会的意識を持つのは、刺青=暴力団という古くからの概念のためで、1つでも例外を認めると暴力団の入浴を許さなければならないからだろう。

私はといえば刺青への想いを悶々とさせながら時は経ち、タイへ移住。そして昨年、タイで四十路を迎えた。


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タイでは、刺青は伝統的な風習である。

タイは日本と比較にならないほど多くの人が刺青を入れている。タイの刺青は昔からの伝統でもあり、僧侶やアージャーンと呼ばれる人たちが彫るものは、タイ語で「サックヤン」と言う。意味はサック(刺青を入れる)ヤン(護符)。「護符」を入れるという意味だ。悪霊などから自身を守り幸運をもたらすとされ、反社会的な意味を持たないため広く受け入れられている。

タイのサックヤンを世界的に広めたのは、アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーである。彼女はタイで有名なアージャーン・ヌーという彫り師により、背中にハーテウ(5列)や虎を彫ったのだ。ネットで調べれば彼女のサックヤン画像がたくさんヒットするはずだ。

「サックヤンを入れたい」

タイへ来てからはサックヤンへの想いに変わり、昨年11月、ついにサックヤンを彫ることを決意した。タイでサックヤンを彫る場合、僧侶か「アージャーン」と呼ばれる彫り師のどちらかだ。今回はタイ在住のライター髙田氏から、タイ人から支持が高いと言われているアージャーン・エーをご紹介いただいた。

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彼は、以前僧侶だったアージャーンだ。彼の技術は非常に優れていて、小さな刺青だと下書きなどなく直接彫ることが出来るほど腕がいいと言う。

彼が仕事場にしているのは、バンコク郊外にある一軒家。私と髙田氏が訪れると、先客の若者が彫る前の儀式にうつるところだった。2人で来ていた彼ら、聞いたところ16歳だという。

儀式ではアージャーン・エーが彫る者に念を入れる。若者は胡座をかいたまま顔の前で手を合わせ、目を閉じている。

しばらくすると若者が唸りはじめた。動物のような咆哮を上げ、突然立ち上がり、獣が憑依したかのような舞いを見せ始めたのだ。 

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儀式としての踊りかと思いきや、そうではないらしい。髙田氏いわく、動物の霊が乗り移っているそうで、本人はこの時間の記憶が無いのだと言う。にわかに信じ難い話だが、これを見て、以前しらべぇの記事でも紹介された、プーケットのベジタリアンフェスティバルを思い出した。

彼らも、祈祷によってトランス状態に入ってから頬に串を刺し、街を練り歩く。そして彼らも同じように、パレードしている最中の記憶はないと話していた。16歳の彼は背中にサックヤンを入れ、友人も同様に背中に彫り、そして私の番だ。


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私にも獣の霊が憑依するのか?

まずは図柄を選ぶことから始まる。これが迷う。当然だろう。一生消えないのだから。迷いに迷った結果、鳳凰の図柄に決めた。

そして私も同様に、彫る前の儀式が執り行われた。

私にも儀式によって獣が憑依するのだろうか。もし憑依するとしたら虎やライオンだったらワイルドで絵になるが、猫だったらどうしよう。

「ニャー、ニャーニャーニャー」

四十路の男が可愛く猫なで声をあげるワンシーンは、苦い思い出にしかならないはずだ。目を閉じ、顔の前で手を合わせた。心拍数は右肩上がり。

アージャーン・エーは私に仮面を被せ、祈祷を始めた。

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幸いなことに何も憑依せず無事に終わった。憑依するかしないかは、タイの風習や文化がが体の髄まで染み込んでいるかどうかにも依るのだろう。

儀式が終わると刺青を彫るための準備が整えられる。左腕を差し出すと、50cmほどの金属製のロッドを皮膚に幾度も突き刺していく。かなりの痛みを覚悟していたのだけど、案外痛くない。

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しばらく余裕の表情を見せていたら、数分経ってからずんずんと痛みが深くなってきた。痛みのあまり顔が歪む。自分自身で彫っているところを見ることも出来るのだが、一瞥でもしようものならさらに痛みが増す気がして、一切見ない。

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彫り始めて15分ぐらい経ったころだろうか。鳳凰は完成した。ちなみに私が彫った鳳凰には、人間的な魅力を増す力があるとアージャーン・エーは言う。

彼が作成した図柄には金運がアップするものや、仕事運が上がるものなど、それぞれの力があるとされている。

「お前はこれで女にモテるぞ」

すべてが終了してから、彼は笑顔でそう話してくれた。私のこれからの人生、死ぬまでモテ期が続くはずだ。

北海道の温泉には入浴できないだろうけど…。

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アージャーン・エーに彫ってもらいたい方は、こちらのサイトからお申し込みできます。
http://thailandtatoo.natureneneam.com/

(取材・文/しらべぇ海外支部・西尾康晴

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