【必食の価値あり】ラーメンと駆ける人生 荒木町に生ける伝説「家元」をたずねて

2015/02/11 12:00

新宿区荒木町。丸ノ内線四谷三丁目駅四ツ谷駅の間くらいに位置するこのエリアは、江戸の時代から続く、古い花街であったと知られている。今でも三味線屋があったり、路地の裏には小体だがしっかりした割烹があったり、かつての街の雰囲気を色濃く残している。

飲食店も料亭から居酒屋、鮨屋、バー、ドイツ料理やスペイン料理…と、狭いエリアの中に、びっくりするくらいさまざまな店が集まり、近隣からはもちろんだが、地の利が良いとは決して言えないこの地に、人々の足を運ばせるだけの価値のある街。それが荒木町だ。


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細い路地に、店名をみただけで興味をそそる店が並ぶ

しらべぇ0211ラーメン

ラーメン店もまた多い。四谷の方面も含めて、名店がいくつも存在する。だが、その中でも特筆すべきは、この地に「ラーメン界の生ける伝説」が店を構えていることなのだ。

その伝説の匠の名は、一条安雪氏。真っ黒に塗りつぶされた外観に、営業時は牛の骨がぶら下がっていることで知られる「一条流がんこラーメン」、その一派を興した創始者を、人は、一条流の「家元」と呼ぶ。

40年に及ぶそのキャリアは、札幌でのラーメンづくりから始まったという。東京に居を移し、当時としては珍しかった「天然だし」にこだわり、スープの出汁に「牛骨」を取り入れるなど、次々と新しい挑戦をつづけてきた。

そのラーメンに対する哲学は、一条氏が毎日更新されているブログを見るとわかるだろう。ただ、美味しさだけを追求しているわけではない。独特の文体で綴られた文章からうかがえるのは、なによりラーメンを愛し、楽しんでいる姿勢なのだ。

実際の氏の言葉「一緒にラーメンを楽しみましょう」という呼びかけが、何十年にもわたってファンを惹きつけてやまない。


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頭骨と骨の看板。営業時は目が光る

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新宿通から杉大門通りをはいり、しばらく歩くと、異様な光景が目に飛び込む。普通のマンションの1Fに行列が出来ている。そこある黒い扉の上には、赤い目をらんらんと光らせた牛の頭骨が。これが「家元」の店のシンボルである。

なお、一門のお弟子さんのお店には、牛の脚の骨がぶら下げてある。かつて一条氏がいまのスタイルのラーメン店を始めたときに、客をむやみに増やしたくないために店の外観を黒く塗りつぶし、看板も出さなかったが、営業中か支度中ががわからないため、営業中には牛骨をぶら下げていた、ということがルーツになっているのだ。この日も、朝の10時だというのにできている行列を、牛の頭骨が見下ろしていた。


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扉をひらくときに気が引き締まる

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「本当にラーメンが大好きな方どうぞお入りください」と書かれた紙が貼られている扉を開くと、そこにあるのは10席に満たないカウンターのみの店だ。着席し、聞かれたら注文を告げる。

メニューは特に書かれていないが、「上品」「下品」「100」「スペシャル」「悪魔」という、独特のメニュー構成となっている。ここでは、敢えて説明することを避けよう。初めて来た、ということを家元に告げてほしい。家元はやさしく教えてくれるはずだ(お客の態度をみて、「ひょっとしてその様子は初めてかな?」と声をかけていることが多い)。


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「下品」一杯700円なり。着丼と同時に海産物由来の香りが立ち上る

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そしてラーメンの登場。この写真は「下品」と呼ばれる、スープの濁ったタイプのラーメンである。濃いスープに、むかしながらの黄色い麺、具材は厚くとろけるチャーシュー、メンマ、ネギ、味玉、海苔、というシンプルな外見だ。

スープを口にふくむと、塩辛い、と最初は感じると思う。だが、口に運ぶうちに、その奥にひそむ甘みに気づく。細く縮れた麺をすすり、スープを飲む…を繰り返してしまう。食べ進めれば食べ進めるほど、口の中で「うまみ」が爆発していく。

海産物を中心にとった出汁がその由来だ。日によっては、牡蠣ズワイガニ亀の手赤貝という、およそ普通ラーメンに使わないであろう具材を大胆に使い、常に旨さを追求していく、それが家元のスタイルなのだ。


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最近ではあまり見なくなった、カンスイたっぷりの麺が旨い

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ラーメンを仕上げていく家元と、そのお手伝いをする奥様の手際も実に見事。客もラーメンが置かれると、黙々と食べ始める。特に私語厳禁! 雑誌禁止! という厳しいルール的なものはないが、この家元の長年の人生と情熱が詰まった一杯に向かい合うと、自然と姿勢が正される、ということなのだろうか…。

行列はできているが、回転が早くあまり待つことがないのは、この店側と客とのコンビネーションに拠るものとも言える。

店名にもなってしまった「がんこ」と言われる伝説の匠ではあるが、決してむやみにうるさい訳ではない。前述の通り、ラーメンを愛した人生を送っている方だからこその厳しさもある。

記者としては、「がんこ」というより、「情熱系」と呼びたいといつも感じている。家元は先日、68歳のお誕生日を迎えられたが、伝説はまだまだ続く。ラーメンを誰よりも楽しみながら。

※なお、営業時間などは下記に記載したが、日によって前後するうえに、スープ不出来、また家元急用などのお休みもあり、また定休日も営業したりしているので、正確には「不定期」と言っていいかもしれない。もし行かれる方は、家元のブログにて営業状況を確認していただくのが確実である。

【一条流がんこラーメン 総本家】
東京都新宿区舟町4-1 メゾンド四谷106
営業時間:10:30~14:00
定休日:毎週月曜日・金曜日 及びスープの出来の悪い日

(文・写真/しらべぇラーメン取材班・ドラゴン=サン

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