【タイの奇祭】手作りロケットが空を舞うスリリングすぎる「ロケット祭り」とは?
タイには、日本では考えられないような安全性を度外視した危険な祭りがある。その1つが、タイ東北部ヤソートーン県で催される「ロケット祭り」だ。
「ロケット祭り」の由来は、「パヤ・テーン」という空の神様にロケットを打ち上げることで農期の始まりを告げ、雨乞いをすることが始まりだと言われており、ヤソートーン県だけでなく東北方の各地で行われている。ロケットの素材には竹を使用し、機器類は一切使わず人の手で組み立てていく。
製作費は、約15000バーツ(約54000円)。丸1日で完成すると地元の人が教えてくれた。ロケットの大きさ、2〜3メートルのものから5メートル以上のものまでさまざまだ。
話しは変わるがヤソートーン県は、埼玉県の秩父市と深い繋がりがある。秩父市の吉田では毎年10月、「龍勢祭り」があり、これは龍勢と呼ばれる火薬を仕掛けたロケット式花火を30数本打ち上げる祭りだ。
20年以上前、秩父市のとある方がテレビ番組で紹介されたヤソートーン県のロケット祭りを見て親近感を覚え、コンタクトを取ったことから両市の交流が始まった。毎年ロケット祭りには秩父市の方々もヤソートーン県へ足を運んでいる。昨年は秩父市市長の久喜邦康氏も訪れ、交流会に参加した。
さて、ロケット祭りの本番だ。手作りの巨大打ち上げ花火は完成後、大人数名の手で打ち上げ台へと設置される。打ち上げ台といってもこれまた手作りで、木製の巨大脚立にロープでロケットを縛り上げるだけの、安全性を微塵も感じさせないスリリングなシロモノだ。
7〜8人が20分ほどかけて縛り上げた手作りロケット。打ち上げ台に設置されても、やはりロケットには見えない。ロケットの発射なのだから、カウントダウンが開始されるのだろうと固唾をのんで見守っていたら、何の前触れもなく突如発射。
凄まじいまでの爆音が鼓膜をゆさぶった。手で耳を塞がなければ、とても耐えられないレベルである。ロケットを制作した人々はといえば、打ち上げ台の至近で発射の眺め、遥か上空へ飛び去ったロケットを見上げ歓声を上げている。
打ち上げ台の周辺に立ち入り禁止エリアは設けられておらず、誰でも近付きたい放題という、危険なことが大好きな人には最高のシチュエーションだろう。
接近すればするほどリスクはもちろん高くなり、ロケットが誤射した場合、怪我を負う確立は桁外れにアップ。毎年のように怪我人が出る祭りとしても有名なのだ。
また、発射したロケットがどこに落ちるかまでは深く考えておらず、落下したロケットが我が身に降り注ぎ、不運にも亡くなられる方も少なくない。日本だと訴訟問題に発展するほどの大事故だが、ここはタイ。
ロケットに近付いて怪我を負ったら自己責任、ロケットが我が身に激突したら、それは不運。誰も責任なんて負ってくれはしない。安全性を過度に重視した日本で、これほど恐怖感をそそってくれる祭りは皆無だろう。
ロケット祭りの開催は毎年5月の初旬。今年のゴールデンウィークは、ちょっとしたスリリングを味わいに上空を突き抜けるロケットを目の前で観賞してみてはどうだろうか。
(文・写真/しらべぇ海外支部・西尾康晴)