(5~3位)東京のうまいとんかつ屋ベスト10【マッキー牧元の世界味しらべぇ】

2015/03/01 11:00

前回の記事に続いて、東京のうまいとんかつ屋ベスト10シリーズ。今回は5位から3位までを紹介する。

画像をもっと見る

 

5位 池上「燕楽」

いかにも町のとんかつ屋さんという風情で、ご家族で営む店内も、温かい空気に包まれている。

とんかつを頼んで待っていると、「トントントン」というリズミカルな音が聞こえてくる。キャベツを切る音である。切り置きせず、注文ごとにキャベツを切る。当たり前のようでいて、中々できないこの仕事が、この店の誠実を表している。

えんらく (4)ロース

「ロース定食」2000円は、堂々たる体躯。肉がうっすらと汗をかき、早く食べろと誘う。2つの鍋で揚げるかつは、やや突っ込んだ揚げ方で、衣の一部が茶色いが、なんといってもこの店の魅力は衣である。

ラードの香り高き衣はきめ細かく、肉に密着して、噛めば、サクサクッと軽やかな音が立ち、歯が包まれる。衣は口の中で舞うように踊り、この軽快なステップと肉の重厚な肉の食感との対比が、「とんかつを食べている」という思いを強める。

揚げ切りよく、脂っぽさがなく、キレのいい食後感。脂部分もきっちりと火が通って、食感がいい。

えんらく (2)

胡瓜、大根、蕪(蕪はロース定食のみ)糠漬けの漬け具合がよく、根菜がたっぷり入った豚汁も、ご飯もおいしい。そしてキャベツ。食べれば青々しい香りが広がって、みずみずしく、なんとも甘い。東京のとんかつ屋の中でも、最上級である。

燕らく

甘味と酸味のバランスの取れたソース、自家製マヨネーズのポテトサラダも含め、日本が誇る、正統「和定食」の正しき姿がここにある。

また「ヒレ定食」2000円、甘い肉の香りが高く、そのヒレの薄いサイズを上げた「とんかつ定食」1200円もいい。「ランチカツ定食」850円は、薄い肉というだけで、肉、油、衣、キャベツといった「とんかつ定食」の醍醐味充分。いま巷では、間違ったコストパフォーマンス論が独り歩きしているが、これぞその名にふさわしい食事である。

燕楽 (2)ヒレ燕楽 (1)とんかつ定食


関連記事:(8~6位)東京のうまいとんかつ屋ベスト10【マッキー牧元の世界味しらべぇ】

 

4位 久が原「自然坊」

自然坊 (1)

駅から7分ほど歩く閑静な住宅街に、店はぽつねんとある。まず座るとおしぼりが出されるが、そのおしぼりがいい。生地が厚く、肌触りがよく、ほどよく温かく、匂いがない。もうこれだけでこの店が、いかにお客さんを迎える心が整っているかがわかる。心地よい食事のスタートである。

自然坊 (4)

「ロースカツ定食」(2700円 昼は2500円)のカツは、断面がしっとりと肉汁で輝き、食欲をそそり、噛めば、肉がきめ細かくしなやかで、歯に吸い付くような食感である。群馬県産のやまと豚を使われているとのことだが、品のある甘さを生かした揚げである。適度に掃除された脂も、歯触りがしっかりとしていながら、噛めばするりと溶けていく。

衣は中粗でサクサクと香ばしく、この豚肉とのバランスもいい。ラードほどのコクはないものの、綿実油で揚げられた衣の油キレはよく、皿に置かれている面も湿気ていない。十二分な幸せを運ぶとんかつである。

自然坊 (2)

自家製ソースは香りよく、キャベツはみずみずしく、甘い。大根、胡瓜、小ナスの糠漬け、さくらんぼ漬けのお新香陣も丁寧な味わいで、甘く香るごはん、香り高い、なめこと三つ葉の赤だしとともに、誠実さに満ちた、胸が晴れやかになるとんかつ定食である。

また「カキフライ」は一個550円と高価だが、大ぶりなカキのフライは、衣の中に海のエキスをたっぷりとたたえながら、口の中に転がり込んでくる。ぜひ試されたい。


関連記事:(まずは10~9位)東京のうまいとんかつ屋ベスト10【マッキー牧元の世界味しらべぇ】

 

3位 高田馬場「成蔵」

成蔵 (1)

「成蔵」のとんかつの魅力は、その軽さだろう。じっくり時間をかけて揚げられる「特ロースカツ定食」2300円(220g)は、鍋に入れた時にはまったく音がしない。

130℃くらいから徐々に温度を上げて揚げるため、肉にストレスがかからない。余分な水分だけを排出し、大事な肉汁は閉じ込め揚げられる。また最後は高温なので、揚げ切りもいい。分厚い脂にもその下の筋にもしっかりと火が通っているので食感がいい。

成蔵ロース (2)

中粗の生パン粉はサクサクッと軽やかな音を立て、歯は肉にめり込む。ほの甘い肉汁が滲み出て口に広がり、目を閉じる。笑う。これぞとんかつの醍醐味である。

脂は口どけよく、噛めばするっと溶けてしまう。こんな優しいとんかつは、なにもつけないか、塩だけがお奨めである。通常の霧降高原豚の時はそうした食べ方がいいと思うが、アグー豚の入荷がある時は、肉の味が強いのでソースを皿に垂らし、時々浸けながら食べてもおいしい。

成蔵ロース (1)

都度手切りされるキャベツは、細く、甘く、みずみずしく、キャベツへの愛に満ちている。おかわりは100円。このキャベツに、剥がれた衣の破片を混ぜ、クルトン風にして食べても面白い。根菜の豚汁も申し分なく、沢庵、大根、キュウリ、キャベツという布陣のお新香もご飯も上等である。

成蔵 (2)ヒレ

肉の香りが甘い「特ヒレカツ定食」2300円(180g)もおすすめ。「ロースかつ定食」1300円(120g)「上ロースカツ定食」1800円(160g)いずれも、都内で食べられる同価格のかつとしては最上級である。そしてランチの「ロースかつ定食」1000円。千円で食べられるとんかつで、これ以上すぐれた店があったら教えてほしい。

成蔵 (3)

また「かつ丼定食」1300円は、優しいカツが生きて、肉の香りはしっかりとご飯を煽るのに、優しい味わいゆえに、ご飯とよくなじみ、より一気呵成に掻き込みやすい。羽根が生えたような軽やかなかつ丼にバンザイ。

(文/マッキー牧元

Amazonタイムセール&キャンペーンをチェック!

グルメ東京定食とんかつ
シェア ツイート 送る アプリで読む

人気記事ランキング