武者小路実篤『友情』の萌えポイントとは?【芥川奈於の「いまさら文学」】
■あらすじ
脚本家の野島と新鋭小説家の大宮は深い友情で結ばれていた。そこに野島の友人・仲田の妹である杉子が現れる。
野島は清く美しい杉子に恋をし、大宮に相談をしたり自分の将来を妄想したりする日々を送り、ついに結婚を申し込むと決意するが、同時に大宮は西洋に留学をしてしまう。
杉子の答え、そして大宮の胸の内に秘めた思いとは…。
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■ウジウジ乙女とハツラツ青年
主人公の野島は、いわゆる「草食系男子」。杉子を好きになったら新聞や小説の中に出てくる「杉」の字を見る度に二人の将来を夢見たり、挫けたときは、しくしくと泣きながら砂浜に「杉」の字を書いたりする。
それに比べて大宮は、キリリとした男前といったイメージ。常に野島の味方をし、他人の作品にこっそりと嫉妬をする野島とは違い、自分の世界をペンで走らせることに夢中なタイプ。
そんな二人が杉子と仲田を交えて卓球をするシーンがある。杉子は卓球が強く、野島は圧倒的に下手くそなのである。
そこで大宮が「野島の代わりに僕が相手をしましょう」と、杉子を打ち負かすシーンがある。そして野島は大宮を少しだけリスペクトするのである。
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■ここ、萌えポイント!
ちょっと待ってちょっと待って、女子の皆さん!
常に杉子との恋を応援している大宮が、仲田や野島と足並みを揃えず杉子を(野島のために)打ち負かすって、どういうこと? 杉子を庇わず大宮を見ている野島って?
そこには熱い「愛…」いえ、「友情」があるからではないか? などと、この二人には個人的にハラハラさせられるシーンが満載である。
そんな筆者は野島以上に妄想家なのかもしれないが。
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■自分の「友情」を振り返ってみよう
先に書いた卓球のシーンのような萌え事件は誰にでも一度位はあるはずだ。
今でこそ「友チョコ」などが当たり前になっている時代だが、筆者が女子校生の頃にはその様な習慣はなかった。
しかしそこは女子校、やはり人気の先輩の下駄箱は蓋を開ければチョコレートが溢れだすし、卒業式は制服のボタンや棒タイの取り合いが起こる。
いつの時代も「憧れ=淡い愛情」と「友情」の境目は危ういものなのかもしれない。
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■そんな『友情』を読みたくなったら
皆さんも是非、登場人物を自分の友達、恋人に置き換えて味わってみてはいかがだろうか。この小説は、題名通りの「友情」を解かりやすく、また現代に於いても色褪せずに描かれた秀作である。
だからそのような読み方をするのも容易であると思う。これを機に、いまさら文学に挑戦してみてはどうだろうか。
(文/芥川 奈於)