奥深い、ピアノの世界… なぜ「Pf」と略すのか?第4・第5のペダルとは?
「もしも、ピアノが、弾けたなら~♪」と西田敏行さんが歌い日本レコード大賞の金賞を獲得したのは、もう34年も前のこと。男女問わず、「ピアノが弾けたらいいな」と思う人は少なくないでしょう。そんな憧れの楽器「ピアノ」について、知っているようで知らない豆知識を紹介していきます。
画像をもっと見る■ピアノはなぜ「Pf」と略すの?
楽譜にピアノのパートを表す時、「Pf」と略されます。ギターの「Gt」やボーカルの「Vo」などは、その英語の綴りが略されたというのが一目瞭然ですが、ピアノは何故「Pf」なのか? それには、ピアノの歴史が関係しています。
現在のピアノは、「チェンバロ」という楽器が元となっています。チェンバロは、鍵盤を押すと弦をひっかいて音をだす構造になっており、いうならば演奏の仕組み自体はギターに近い構造です。しかし、その構造では音の強弱を付けるのが難しいということで、イタリアのクリストフォリという人が1700年頃に現在のピアノを発明しました。
その時に付けられた名前が、“弱い音も強い音も出せるチェンバロ”という意味の「グラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」。これがあまりに長いため、省略して「ピアノフォルテ(Pianoforte)」と言うようになり、さらに短くなって現在の「ピアノ」と呼ばれるようになったのです。つまり、“PianoForte”を略して「Pf」というわけです。
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■白鍵と黒鍵は逆だった
ピアノの鍵盤は、白鍵と呼ばれる白い鍵盤が7つ、そして黒鍵と呼ばれる黒い鍵盤5つで1オクターブを構成しています。しかし、かつてはこの白と黒が逆だった時代があります。
ピアノが産まれた当初、その多くが白鍵の部分は鍵盤の素材である木のままで、黒鍵のみが黒く塗られていました。ところが、使っているうちに徐々に鍵盤が黒ずんでしまい、色の違いが無くなってしまうため、白鍵の部分に象牙を使うようになりました。
ところが、象牙は希少で高価であるため、白黒が逆になった鍵盤が普及。その後18世紀後期あたりから一般市民も徐々に豊かになり、裕福の象徴のためにあえて象牙を白鍵に使う豪華なピアノが増えていきます。そして現在でも、その配色が一般的になったのです。
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■隠し鍵盤があるピアノが存在する
グランドピアノと呼ばれる大きなピアノは、一般的には白黒88の鍵盤で作られています。ところが、これよりもさらに低音部に9つの鍵盤を拡張した97個の鍵盤がついたピアノがあります。それが“ベーゼンドルファー”という製造会社が作る「Model 290 Imperial」。
鍵盤は全てが黒く塗られていて、遠くから見ると拡張された鍵盤が分からないようになっていますが、かつてはその部分に蓋が付けられていたことから「隠し鍵盤」と呼ばれていたりします。
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■ピアノのペダルって、いったい何に使ってるの?
ピアノにあまり馴染みがない人にとって謎のひとつが、足元にあるペダルではないでしょうか? 一般的なピアノには、3つのペダルがあります。
最も右側にあるペダルは「ダンパーペダル」もしくは「サスティンペダル」と呼ばれ、踏むと弦を抑えている「ダンパー」と呼ばれるものが弦から離れ、演奏した音がすぐに止まらずにより長く音が響きます。最も左側にあるペダルは「ソフトペダル」などと呼ばれ、やや曇ったソフトな音にする“ウナ・コルダ”という演奏をするために使います。
そして、ピアノ経験者でも意外としっかり分かっていないのが、真ん中のペダル。アップライトピアノ(一般家庭のレッスン用)では、近所迷惑にならないよう音を小さくするために使うことがありますが、グランドピアノでは、役目が全く違う「ソヌテートペダル」と呼ばれるものになります。
「ソヌテートペダル」は、踏んだ時に押している鍵盤の部分だけ音がすぐに止まらないようにするもの。ダンパーペダルの機能を、特定の音のみに使うことができるのです。
例えば、低音を「ダーン!」と伸ばしつつ、離れた高音域で音を細かく切ったスタッカートを駆使した奏法などを行えます。楽曲によってはこのペダルがないと演奏できないものもあります。
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■ペダルには、“第4・第5のペダル”がある
さらに“ファツィオリ”というメーカーが作るピアノには、「第4ペダル」と呼ばれるペダルが付いているものがあります。こちらを踏むと、鍵盤が1センチほど下に沈みます。かつてのピアノは現在よりも鍵盤の高さが浅かったため、当時の演奏を再現しようとした場合、この第4ペダルを踏んだほうがより再現がしやすいということから備えられているものです。
また、「ハーモニックペダル」と呼ばれる第5のペダルも存在します。こちらは“ブリュートナー”というメーカーの特許で、ダンパーペダルとソヌテートペダルの両方の機能を備えたようなペダル。さらに豊かな演奏が実現できます。ビートルズの名曲『Let It Be』のMVでポール・マッカートニーが弾いているピアノは、ブリュートナーのピアノです。
奥が深いピアノの世界。上記の豆知識を頭に入れておけば、ピアノを弾けはしなくても、“ひけ”らかすことはできるかもしれません。
(文/しらべぇ編集部・常時系)