離島への冒険旅行の数々④〜息子が高熱を出した〜【溜池ゴロー、子育てこそ男の生き甲斐】

2015/06/03 11:00

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息子が3歳のゴールデンウイーク。ワシら家族は2度目の石垣島へ向かった。あの強烈な台風体験の記憶がまだ残っていたので、台風シーズンではないにも関わらず、念のため帰京予定日から数日は撮影などの仕事を入れないように調整しておいた。

そして、今回は、石垣島だけではなく、石垣島から船で行ける離島(竹富島と黒島)にも宿泊することにしていた。石垣島2泊→黒島1泊→竹富島1泊→石垣島1泊→帰京……こんな予定だ。

ちなみに石垣島の港から周辺の島々には、高速船が出ており、島によって所要時間10分〜1時間の範囲で行くことができる。

ワシらにとって2度目の石垣島旅行は、不安定な天気に見舞われる。さらに予想外なことに、ゴールデンウイークの海は意外と冷たかった。

聞いたところによると、海の水温の変化は、気温の2ヶ月遅れだそう。なので、5月の海水は気温に比べると、まだちょっと冷たく感じるくらいだ。

しかし、そんなことは言ってられない。海水が冷たかろうが、多少雨が降って来ようが、前年と同じく海で息子と散々遊んだ。息子は、魚を見つけては興奮しながら泳ぎ追いかける。

本格的に雨が降ってきたり寒くなったら温水プールに連れて行って散々遊ぶ……そんな時間を過ごしながら石垣島での2日間はあっという間に過ぎて行った。


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■2泊目で高熱に苦しみだした息子。そこで母のとった行動とは…

そして、石垣島2泊目の夜。翌日の朝から船に乗って黒島に渡る予定のワシらは、ホテルのレストランでバイキング料理を食べていた。息子は遊び疲れたのか、すでに並べた椅子の上で横になりスヤスヤと眠っている。

ワシら夫婦は、ワインを飲みながら、地元歌手のオジさんが三線(さんしん…蛇の皮でつくった三味線みたいなもの)を引きながら歌う沖縄民謡を楽しんでいた。

突然、息子が何か寝言を言いながら起き上がった。「ん? どうしたんだ? 怖い夢でも見たのか?」と思い、妻が息子を抱っこしてやった……すると妻がこう言う……「あら? 凄い熱い」

息子は高熱を出していたのだ。すぐにタクシーで八重山病院に連れて行き、診てもらった。喉が真っ赤に炎症を起こし、40度近い熱…。薬をもらい、ホテルに帰ったが、息子は熱にうなされ苦しそうだ。心配である。

ワシらは、翌日どうするか話し合った。予定通り黒島に渡るか、それとも病院のある石垣島に留まるか……翌日の天候は雨だそうだし、どのみち熱を出している息子は海には入れない。

おまけに黒島には病院がどうやらないらしい。石垣港から黒島までは高速船で30分……もし、息子の容態が改善しなかったら……ワシが心配して判断に迷っているときに、妻はスパッとこう言った……。

「もちろん黒島には行くよ。看病しながら行けば良いじゃん」

熱に浮かされている息子の横で、妻はハッキリこう言ったのだ……やはり、女性は強い。というか母は強い。ワシらは息子を看病しながらこの離島の旅を遂行することにした。


翌日、まだ息子の熱は39度前後あったが、ワシら家族は船に乗り、黒島に渡った。海上を凄い勢いで突き進む高速船の中から、息子は熱に浮かされた瞳で雨空と波を見つめている。

そんな息子を見ながら、ワシは内心「本当に旅を遂行してよかったのだろうか。熱に浮かされて島を渡るこの旅は、本当に息子にとって良いことなのだろうか」と、考えてしまっていた。

そんなワシとは対照的に、妻は熱に浮かされる息子に水を飲ませながら「ほら、あそこに見えてきたのが黒島だよ。どんな島だろうね?」などと楽しそうに話しかけている。

息子もつられて「あ、本当だ。見える。どんなとこだろう」と答えている……あのとき、男と女(父親と母親)の思考の違いがハッキリと見えた気がした。

母親である妻は、今、自分たちの置かれている現状をいかに良くするかということだけを考えているようだった。

それに比べて、父親のワシは、「船に乗って良かったのだろうか」とか「このまま息子の熱が改善しなかったら」などと、後悔と不安ばかり思いめぐらしていた……今考えると、非常に情けないことである。


心理学で言われていることだが、人間の悩みとは「過去の後悔」「将来の不安」によるものだ。船に乗ったにも関わらず悩んでいたワシに比べて、妻はしっかりと「今」のことを考えていたのである。

妻は熱を出している息子に「これから起きる楽しいこと」を思い描かそうとしていたのだ。ワシのように親が悩んでいては、弱っている息子はよけいに不安になるばかりだ。治るものも治らないではないか。

ワシは妻の対応を見て、その瞬間から悩むことを一切やめることにした。熱を出している息子をしっかり看病しながら、この旅を最後まで息子に経験させようと覚悟を決めた。そう考えると自分の中にあったモヤモヤがすーっと消えていく。

「もう迷わんぞ! さあ、黒島よ! どんと来い!」


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■黒島で出くわしたのは大量の牛、そして孔雀!?

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てなわけで、黒島の港に到着したのだが、外は大雨である。ワシらの泊まる予定のコテージを管理しているお兄さん2人(なぜかどちらも無駄に美青年だった)が車で迎えにきてくれていたので、早速コテージに向かってもらった。

ワシらを乗せたワゴン車は、大雨のふる原生林の間を走った。道は舗装されておらず、ぬかるみにタイヤを取られながらワゴン車は大きく揺れる……が、途中、車の前になんと牛の大群(20匹くらいと思われる)が出てきて、ワシらの乗る車の中を覗くではないか。

車は雨の中、牛によって動けなくなった。お兄さんたちの話によると、黒島は人口が200人くらいなのに対し、牛は2000頭いるそうだ。そして、車が牛の群れに取り囲まれた場合は、牛の気の済むまでほっとくしかないらしい。

なので、ワシらは牛たちが自分から去るまで、牛たちに覗かれるまま待つしかなかった。

窓外から覗き込む牛の顔を息子は熱に浮かされながらも間近に見つめている。窓ガラスがなければ牛にキスされるくらいの距離だ。都会で生まれて都会で育った息子にとって、牛というものをこんな間近で見るのは初めてだったろう。

息子は不思議そうな表情で牛の顔を見つめ続けていた。そして、牛は無表情で息子を見つめ続けていた。窓ガラスをはさみ、息子と牛は何を無言で会話していたのだろう……。

やがて、牛たちの群れはワシらの車から離れ、去って行った。車が再び走り出した。

ワシは「牛が人間の行動を制限するなんて、いったいこの黒島というのはどんなとこなのだ? しかし、これでやっとコテージに行ける。到着したらすぐに息子を横にしてやらねば」と考えていたそのときだ……

どこからともなく「キエーー」というような声が聞こえてくるではないか。

声の聞こえてくる方向へ目を向けると、むこうに牧草地が広がっていたのだが、その牧草地の真ん中で何かがまた「キエーー」と雄叫びを上げているではないか……よーく見ると……な、なんと!

クジャクが大きく羽を広げて「キエーー」と鳴いているではないか! ワシは思わず心の中で叫んだ……

「なんでやねーん!!」

続きは次回!

(文/溜池ゴロー

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