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日本酒におけるF1レース?最高の名誉「全国新酒鑑評会」とは?【蔵元コラム】

コラム

みなさん、こんにちは。萩野酒造八代目蔵元の佐藤曜平です。

酒造りも一段落し、ホッとしているところの5月20日、全国新酒鑑評会(ぜんこくしんしゅかんぴょうかい)の審査結果が発表になり、弊社は純米の出品で金賞を獲得いたしました。

萩の鶴 金賞

 

■最高の名誉「全国新酒鑑評会」って何?

日本酒の世界でもさまざまなコンテストが各地で開催されていますが、その中でも1911年(明治44年)から開催されている「全国新品鑑評会」は別格の存在

そこで金賞を取ることが日本酒造りに携わる人たちにとって最高の名誉とされています(ちなみにですが、さまざまな考えから、敢えて出品しないという蔵元さんも多数)。

 

■けど…金賞は複数ある!?

今年の出品総数は852点。まず予審で優秀と認められた出品酒を入賞とし、さらにその中から決審において特に優秀と認められたものが金賞に。

実際には出品酒の3分の1から4分の1ほどが金賞となります。

「なーんだ、金賞って結構いっぱい取れるんじゃん」と、思われるかもしれませんが、当たり前なのです。

金賞を受賞すべく、蔵元と杜氏、蔵人の気合いが、ものすごく入ってるのですから。

 

■純米での出品。それは100m走に「裸足」で挑むようなもの

日本酒には様々な種類があり、醸造アルコールという物の添加が認められているカテゴリーがあります。(詳しくはコチラ

全国新酒鑑評会の出品酒へも添加は認められており、醸造アルコールを添加することによってお酒に明確なキレや軽さを与えることができ、金賞受賞に大きく近づきます。

そこに醸造アルコールを添加しない「純米」で臨むということは、スパイクの着用が認められている100m走に「裸足」で挑むようなもので、とても不利なのです。どのくらい大変か、表を御覧ください。

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純米だと受賞数が圧倒的に少ないのが分かりますよね。

純米で出品する理由は蔵元さんによってさまざま。弊社の場合は、ごくごく一部を除く市販酒が全て純米酒なので鑑評会出品酒も必然的にそうなります。そもそも添加するアルコールを仕入れていません。

ただ、醸造アルコールを添加すること=安易な酒造りではないということは申し上げておきます。

緻密な酒質設計、発酵・温度管理等、手間暇のかけ方や気合の入り具合になんら違いはありませんし、手抜きしたお酒にアルコールを添加しても絶対に金賞は取れません。

 

■鑑評会出品酒は、クルマに例えればF1そのもの

sirabee0613kuramoto4photo by Jitesh Jagadish

それは手間ひまとコストを極限までかけ、金賞を取ることだけを目標とした芸術品。クルマに例えればF1そのものです。

なので、市販酒とは酒質が大きくかけ離れている場合が多く、金賞を取ったからと言って、その蔵の全ての市販酒までが出品酒と同じクオリティなんてことはあり得ません。弊社だってそうです。でも、ここに食いついて、

鑑評会出品酒が素晴らしいのはわかるが、市販酒の味が全然違うのはけしからん!!

と的外れな文句を言うオッサンがたまにいますが、言い換えると、

ホンダのF1に憧れてホンダの軽自動車を買ったのに、F1と全然違うぞ!!

と、言ってるようなもの。

鑑評会出品酒を造る技術は、少なからず市販酒にもフィードバックされています。それを感じることは難しいかもしれませんが、ホンダの軽自動車にだって我々が気付かないところでF1の技術が生かされているんです。多分ね。

そんな鑑評会出品酒を実際に味わえるイベントが6月20日、池袋のサンシャインシティで開催されます。ぜひご自身でその味わいを確かめてみませんか?

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画像はスクリーンショットです

でも、今度はその鑑評会出品酒を味わったあとに、

鑑評会出品酒なんて、あんなどれも似たようなもの造る必要あるの? もっと蔵の個性を重視したらいいのに。生原酒とか古酒なんかも出品してさ

と、思われる方も多いと思います。

金賞を狙うには、それなりのカタチってものがあります。

サーキットを0.1秒でも速く走ろうとしたら、どんなクルマでもF1のような同じ形にならざるを得ません。個性的だからって、ラリーカーや軽自動車も混じったのでは勝負として成立しませんよね。

もちろん『鑑評会で金賞を取ること』だけが全てではありません。

我々蔵元は、しぼりたてのフレッシュな生原酒や熟成して3年後においしくなるように仕込んだ純米酒、とにかくコスト最優先の経済酒まで、飲まれるシチュエーションやユーザーに狙いを定めて、そこで高評価を得られるよう日々努力しています。

そんな訳で、近々蔵人のみんなと金賞受賞のお祝いをしようと思います。それでは。

(文/萩野酒造・佐藤曜平

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