オシャレの目覚めは「学ラン」から!? 懐かしの「変形学生服」をスタイリストが解説
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学生服の上着、いわゆる『学ラン』について解説させていただいた前回の記事は、書きながら「こんなの誰が読むんだ」という思いが胸中で渦巻いておりました。
ですが、思いのほか反響が大きく、モデルさんや某局プロデューサーさんからも「フランソワ、短ランとか着てたんだね(爆笑)」と、声を掛てもらい恥ずかしいやら恥ずかしいやらのスタイリスト久保田(フランソワ)です。こんにちは。
今後の仕事に悪影響が出ないことを祈りつつ、学生服のズボン、『学ズ』について解説してみましょう。
■太さがポイント。変形学生服のズボン
「学ズ」はとにかく太さで勝負。気合いの入った不良ほどワタリ(太もも)の太いパンツを穿いており、挨拶がわりに「おめ、ワタリ何センチよ?」と他人の学ズの太さを気にする日々でした。(※30年前の神奈川県の例)
裾の太さによって、大きく以下の二種に分けられます。
①ドカン→着用は硬派な不良・番長
服飾用語でいうところのバギーパンツ。ワタリの太さがそのまま裾まで続く、ドカンと太い学ズ。「土管みたいな形」が名前の由来と思われます。
着用者は硬派な不良・番長(グループの頭)・応援団などが多く、ワタリ幅は40cmを越えるあたりから「ただ者じゃない感」が醸し出され、50cmを越えるとかなり目立つ不良に。
②ボンタン→オシャレ感度高めの不良が着用
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服飾用語のバギートップ、サルエルパンツに近い形状。ワタリは太いが、裾が細くなっています。
オシャレ感度高めの学生か、ポップ系の不良が着ることが多く、オシャレ学生はシルエットの美しさとバランスにこだわり、不良学生は裾の細さに命を懸けていました。中には裾を細くしすぎて自力では脱げないという強者も。
他にも変形学ズのデザインポイントとしては、以下のようなものがあります。
●ハイウエスト
ウエスト部の生地がベルトより上に飛び出しているものになります。
通称ハイウエ。オシャレ学生~プチ不良には2~3cmくらいのハイウエが多いのですが、みぞおち付近まで伸びた15cm級の「鬼ハイウエ」を愛用する猛者もいました。
●タック
ベルト下にある、つまんだようなシワ。両サイドに一本づつがワンタック、二本づつだとツータック。スリータック以上になると完全なる不良学生に。
さらにはこのような学ラン・学ズの変形版をベースに、以下のような追加カスタマイズを施すこともできます。
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■学ラン・学ズの追加カスタマイズポイント
●裏地
紫、ワインレッドなど、サテン地の生地を学ラン・学ズの裏地に使用します。さらに高価なカスタマイズとして刺繍 (※ヤンキー四字熟語や龍、虎など) を入れることも。
※ヤンキー四字熟語 = 夜露死苦(よろしく)、仏恥義理(ぶっちぎり)、愛羅武勇(アイラブユー)、喧嘩上等(ケンカじょうとう)など
●チェンジボタン
学ランのボタンは裏側からキャッチ(裏ボタン)によってとめられています。
着脱が容易になっていることが多く、この裏ボタンを既製品からアレンジボタンにチェンジすることが流行りました。5個セットになっていて、トランプの絵柄やキャラクター物、ヤンキー四字熟語+マークのセット物(愛・羅・武・勇・ハートのマーク)などが多いです。
●ウォレットチェーン
サイフとベルトループ等を繋ぐ金属チェーン。現在でもたまに見かけますが、当時はシルバー、ゴールドよりもピンク、ブラック、パープルなどが人気でした。
ちなみにサイフは黒の布製長財布に、例によって龍・虎などが刺繍されているものが多かったです。
●シークレットポケット
隠しポケット。中学生男子はこういうギミックが大好物。中身は大したものは入っていないのですが…。
●学ランの第2ボタン
卒業式には好きな男子の学ランの、上から二番目のボタンをもらうことがお約束だった時代。
日常的に第1ボタンを開けていることで不良感を醸し出せていましたが、実はそれ以外のボタンも「開けていることで他者へのメッセージとなる」ことはあまり知られていないようです。
それぞれのボタンの意味は、
・第1ボタン=「ケンカ買います」
・第2ボタン=「恋人募集中」
・第3ボタン=「ケンカ売ります」
・第4ボタン=「ウンコしたい」
・第5ボタン=「もう限界」
となっていて、ケンカしたくてたまらない! という血気盛んな学生は第1と第5ボタンを、お腹が下ってもうヤバい! という場合は第4と第5ボタンを同時に外すことで、内なるエマージェンシーを周囲に知らせることができたのです。
さて、 変形学生服のオシャレ講座はいかがでしたでしょうか? よくよく考えれば、これって日本独自のかなりオリジナリティ溢れるファッション文化なんじゃないでしょうか?
そろそろどこかの海外ブランドが目を付けて、コレクションに取り入れてくるかもしれませんね。
(文/久保田フランソワ)