東京駅に集う170種の駅弁から選ぶベスト「牛弁当」【マッキー牧元の世界味しらべぇ】
今、東京駅は「駅弁パラダイス」だ。全国の駅版を売る「駅弁屋祭」、「GranSta」、「ノースコート」、「サウスコート」、「ニッポンの駅弁」、「Keiyo Street」、「ecute」。改札口内でもこれだけ駅弁を売っている場所がある上に、各駅弁売り場まである。
「祭」でさえ170種類の駅弁を売っているのだから、東京駅全体では300種類の駅弁があるらしい。東京駅は、世界一の弁当売り場なのである。
さてそのなかで人気は海鮮系と肉系である。「祭」での人気は、1位「牛肉ど真ん中」米沢、2位「宮城の輝き~紅鮭はらこめし」仙台駅、3位「峠の釜飯」横川 、「えび千両ちらし」、5位「越前かにめし」福井駅となっている。
確かに1位の「牛肉ど真ん中」はよくできた弁当である。これは弁当のどまん中に牛肉がドカンとありますよという意味に捉える人もいるようだが、そうではない。山形産米の「どまん中」に、甘辛く味をつけた黒毛和牛のそぼろと薄切りを乗せたシンプルな弁当である。
他のおかずもかまぼこに卵焼き、昆布煮に人参と里芋煮と、少なく、牛肉に思いの丈をかけられるように作られている。しかし、もっと他においしい牛肉弁当はないかと食べ比べてみることに。購入したのは以下の16種類である。
1. 「うご牛焼肉弁当」秋田 関根屋/1500円(限定販売)
2. 「こだわりまぶし」東京 加藤牛肉店/1400円
3. 「コンビ弁当」東京 加藤牛肉店/1200円
4. 「牛たん丼」仙台 利久/1944円
5. 「みちのく仙台牛ひとめぼれ」仙台 こばやし/1150円
6. 「牛べん 常陸牛」水戸 北のしまだ/1000円
7. 「牛玉弁当」東京 浅草今半/1080円
8. 「牛肉弁当」東京 浅草今半/1080円
9. 「牛肉どまん中」米沢 新杵屋/1100円
10. 「近江牛すき焼き弁当」草津 南洋軒/1500円
11. 「米沢のまかない牛めし弁当」米沢 松川弁当店/1100円
12. 「米沢牛弁当 しぐれ煮」米沢 松川弁当店/1300円(現在このパッケージは牛角煮弁当に変更)
13. 「和牛こまち」秋田 関根屋/1050円
14. 「焼肉弁当」東京フリック/1200円(松川弁当店とのコラボ)
15. 「鉄板重」東京 浅草鉄板亭(浅草今半)/1245円
16. 「山形特選牛めし」森弁当部/980円
そうそうたるラインアップである。どれもよく練られていておいしい。しかしその中でベストを選ぶに留意した点は
1、牛肉の香りがする。
2、味付けが濃すぎない。ファーストインパクトを狙う駅弁が多いが、それではおかずが牛肉中心だけに飽きてしまう。
3、牛肉の量とご飯との調和。
いやあ食べ比べてみるとわかるのだが、意外に違いああるのですね。結果、一位に輝いたのは、「牛べん」である。
茨城県常陸牛振興協会が認定した黒毛和牛を使用して、すき焼き風の甘辛い割り下で味をつけた牛肉と、玉ねぎがご飯の上に乗っている。付け合わせの煮卵、湯葉の高野豆腐巻きも洒落ている。そしてまず何より牛肉がいい。厚さがほどよく、牛の香りがあり、柔らかい。
他の弁当より牛の香りがあって、味付けも濃すぎない。牛肉への思いが高まって、ご飯を掻き込ませる。そこには、米沢牛への敬意があり、弁当しての分と意味をわきまえた、食べ手に優しい牛弁である。そして名前もいい。シンプルさの中に「俺は牛で行くぜ」という潔さがある。
(文/マッキー牧元)