最後は「くじ引き」で決まる!驚くべきタイの徴兵制 その実情や国民の考え方とは?
©iStock.com/ia_64
微笑みの国・タイには、驚くべき法律がいくつかある。そのひとつが、「徴兵制度」。
タイ王国の男性は、18歳~21歳に徴兵検査を受ける義務があるという。ユニークなのは、毎年4月初旬、検査合格者から“くじ引き”によって実際に徴兵される者が選ばれるところだ。黒票なら免除、赤票なら兵役、といった具合に…。
人生が左右されるかもしれない徴兵がくじ引き?! 冗談のようなその制度も法で定められているというのだから、驚きだ。そしてその模様はテレビなどで全土に放映され、国民の注目を浴びる。
タイの深南部では紛争が10年以上も続いている。くじ引きの結果によっては、一兵士として前線に立つ可能性もあるのだ。
■意思に反する徴兵、兵役から逃れたい…徴兵が免除される例とは?
まず、いわゆる“ニューハーフ”は、戸籍上は男性なので検査とくじ引きに参加する義務はあるものの、兵士としての適性や風紀上の問題から不合格になるそうだ。毎年テレビなどで話題にはなるが、徴兵検査参加者のうちニューハーフが占める割合は1%未満だという。
次に、士官学校生や一般の学校(マッタヨム、4~6年)などでタイの高校生が自分の意志で学ぶ「軍事学科(ウィチャータハーン)」を受けた者は、くじ引きには行かない。
そして、身体や精神に障害のある者、体力のない者は徴兵対象外とされている。
関連記事:席数5000・従業員1200名!ギネスが世界一広いと認定したレストランをレポート
■タイ人男性に聞いた現実
41人のタイ人男性(20歳~25歳)に、「徴兵」の経験について聞いた。その内訳は、以下の通り。
・高校で軍事科を受けた:30人
・くじを引いたが黒票(免除):9人
・くじを引き、赤票。2年の兵役についた:1人
・くじを引き、赤票だったが、親がお金を出して兵役を免れた:1人
このように、くじ引きで運命を左右されるよりも、高校でこの単位を取ることを選択するタイ人が圧倒的に多いようだ。
関連記事:旅行時は注意!死亡事故も多発! タイ・バンコクの危険すぎる「電線」事情
■高校の軍事科では何をするの?
1年目は身体トレーニング、行進、ほふく前進などの基礎練習。オールドガンを使い、200~300メートルの距離での射撃練習もするという。
2年目は、3日~5日間のキャンプ。銃はSKガンに変わるという。そして3年目は、7日間~3ヶ月のキャンプ。まだ暗い早朝3時に爆音響く“バトルフィールド演習”があったり、何日もかけて山を越えたりと、かなりハードだという。銃は、射程圏内が1000~1500メートルと長い、M60機関銃となるそう。
何人かにインタビューした結果、行く場所(軍の施設)や訓練中の生活環境、訓練内容や厳しさも、学校によってまちまちのようだった。
なお、今回話を聞いたタイ人男性たちの誰もが戦争などの有事を望んでいなかったということだけ書き留めておきたい。
(文/しらべぇ海外支部・hiroko)