男子には夢と冒険を語るのだ!【溜池ゴロー、子育てこそ男の生き甲斐】

2015/09/09 11:00

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ワシは、10年前の息子が生まれた日、息子を育てて行く上で、3つの方針を決めた。その方針とは……

① 男子は文武両道

② やってみせよう。そして、共に学ぼう

③ 息子とは「」と「冒険」を語り、妻とは「」を語ろう。

……である。

すべてを満足にできているかと言うと、ちょっと自信はないが、この3つのことは、息子が10歳になった現在までなるべく意識をし続けているつもりだ。 そして、最近、特に大事だと感じるのは、③である。というのも……

ワシが思うに……「夢を描くこと」や「大志を持つこと」や「冒険をしようと思うこと」などもある種「能力」である……からだ。

ワシもまだ髪の毛があった若い頃は、「夢」や「希望」や「冒険」というのは、誰だって想い描けるもんだと、なんとなく思っていた。しかし、ハゲたオッサンになってから周囲を見回してみると、そうでもないことがハッキリとわかった

何かに成功したり、幸せそうに生きている人間たちは、大抵「夢」や「希望」や「冒険」を想い描き続けているのに対し、それらを持っていない人、持つことができない人、想い描けない人、想い描くことを続けられない人の状況は、あきらかに違う

ワシは疑問に思った……なぜ、「夢」や「冒険」を想い描き続ける人と、それをしない人がいるのだろうか……と。で、あまり考えもせずに結論を出したところ、「想い続ける能力」があるかないかだけの違いである。

ならば、なんとかして「夢や冒険を想い描き続ける能力」を子供に身につけさせるには、どうすれば良いのだろうか? そのためにワシが考えたのは……息子と「夢」や「冒険」を語りあい、少しでもそれらを実感させることである。


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■最南端でみた自然の驚異

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てなわけで、息子4歳の夏のことである。そろそろ理解力や想像力もでてきた息子に、少しでも冒険を実感させたいがために、ワシら家族は、日本の最南端・波照間島へと出発した。

八重山地方の離島の中では、波照間島周辺は波が荒れやすく、石垣島の港からは高速船で1時間ほど荒波に揉まれながらの状態である。途中、何度も船が高波にバウンドするので、その度に船内からはちょっとした悲鳴があちらこちらからあがる。

しかし、到着すると、そこにはあまりにも美しいエメラルドグリーンの海があり、初めてその色を目にする観光客たちからは感動と同時に歓声があがる。 ワシら家族は宿に荷物をおろすと、さっそく自転車を借り、島内を走り回った。

ワシは息子を後部座席に乗せ、妻と自転車を走らせた。集落を抜けると、太陽の照りつけるなか、だだっ広い平地をひた走り、途中ひまわり畑や原生林の間を走り抜けていった。すると……日本最南端の岬にたどり着いた。

さっき見たエメラルドグリーンの穏やかな海とは全く違い、真っ黒な波が荒れ狂っている。岩石でできた深い峡谷のような岬に、波がザッパーンとぶつかり、水しぶきは3メートルほどの高さまで舞い上がる。

4歳の息子に、人間では抗えない自然の凄さを見せることのできるいい機会だと思った。ワシは、息子と一緒にゴツゴツした岩場を歩き、荒れ狂う波を岬の上からそっと見せた。

息子の瞳には、あきらかに自然への驚異を感じている様子だった。ワシは満足し、岩場を後にした。そして……


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■雨雲と人間、どちらが早いか競争!

日本最南端の岬を後にして、再び自転車を漕いでいるときだった。息子が

「父さん、空が真っ黒だよ!」

と叫ぶので、背後を見ると、確かに真っ黒な雨雲が迫ってくるではないか。ワシは

「よーし、雨雲とどっちが早いか勝負だ!」

と息子に告げ、ワシら夫婦は思いっきり自転車を漕ぎだした。妻は

「そんな無茶な」

と言いつつ必死に自転車を漕ぎ、息子は

「父さん、母さん、頑張れ!」

と声援を送ってくれた……

が、息子の声援むなしく、真っ黒な雨雲はワシら家族の頭上を通り過ぎて行く……当たり前である(笑)凄い勢いで降り注ぐ豪雨の中、ワシら家族は全身ビショビショになりながら自転車を漕ぎ続けた。息子は

「ウヒャー」

と大喜びだ。そして、数分後には豪雨とともに雨雲が、あざ笑うかのようにワシらを抜き去っていった後は、太陽のギラギラした日差しがワシらを再び照りつけだした。

全身がビショビショだったが、すごい爽やかさと気持ちよさを感じながら、ワシも妻も自転車を漕いでいた。息子は、

雨雲が僕らを追い越して行ったねえ!」

大興奮状態だった。ワシは、そんな息子を背中に感じながら、「息子はきっと今、冒険を実感している!神様は、なんて素敵なプレゼントをワシら家族にしてくれたのだ!」と嬉しくなって天に感謝しながら自転車を漕ぎ続けましたとさ……

実は、天が、この後とんでもないプレゼントを用意してくれているとも知らずに……。 続きは次回。

(文/溜池ゴロー

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