「秋ドラ」シーズン開幕!ドラマにサブタイトルが増えた理由とは?
この10月期に東京キー局で始まる連続ドラマは全部で30作ある(一部放送未確定/BS、CS、ネットテレビ、地方局のみを除く)。
『5→9~私に恋したお坊さん~』
『デザイナーベイビー -速水刑事、産休前の難事件-」
『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』
『監獄学園-プリズンスクール-』
『無痛~診える眼~』
『青春探偵ハルヤ~大人の悪を許さない!~』
『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』
『HiGH&LOW -THE STORY OF S.W.O.R.D.-』
『南くんの恋人~my little lover』
そのうち、ここに挙げた9作、約3割にサブタイトルが付いている。
サブタイトルとは、タイトルだけでは伝わらない時などに、それを補完するためにつけるもので「~◯◯◯~」や「-◯◯◯-」などで表記されることが多い。映画や美術作品などでは「あるいは◯◯◯」「または◯◯◯」という場合もある。
最近だと「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」という映画タイトルが分かりやすい例だろう。
ちなみにドラマの各回につくタイトルもサブタイトルということがあるが、これは英語ではエピソードタイトルといって本コラムの話とは関係ない。
このようにドラマにやたらとサブタイトルがつくようになったのは、わりと最近のことである。例えば、今から15年前の2000年の10月期を見てみると、主要なドラマでサブタイトルがつくものはほとんどない。
現在なら明らかにサブタイトルがつくであろう「スタイル!」や「オヤジぃ。」といった短いタイトルのドラマもあるのに、である。
■サブタイトルが増えた理由①
推測するに、この理由は大きく2つある。1つ目は、小説や漫画など原作のあるドラマが大きく増えているということ。
小説や漫画のタイトルでは、このようなサブタイトルがつくことは少ない(逆にラノベなどのようにタイトル自体が長いことはあるが)。「ドラゴンボール」は「ドラゴンボール」だし「ONE PIECE」は「ONE PIECE」であって「~」はつかない。
しかしドラマでは原作名にサブタイトルを付けるケースが多く、例としては「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」「ロング・ラブレター~漂流教室~」などが挙げられる。
あくまで印象論ではあるが、
①原作とほぼ設定が同じ場合は「原作名~サブタイトル~」
②原作から設定などだいぶ変えてしまった場合は「タイトル~原作名~」
になる傾向がある。原作名と全く同名の場合は、かえって設定を根本から変えられるケースが多い(「東京湾景」や「カバチタレ!」など)
これは主に原作の知名度によるものが大きいだろう。放送する時間帯と原作の読者層が合わない場合には、より目を引くサブタイトルを付けるし、そうでない場合は、逆に原作の知名度に頼るのである。有名作品の続編やスピンオフでもこのような手法がとられるケースがよくある。
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■理由②:「わかりやすさ」を追求しすぎ
2つ目は、テレビの作り手が視聴者へのわかりやすさに過剰に反応していることである。
日本のテレビが現在のように発言毎にテロップ(字幕)をつけるようになったのは、1991年開始の「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」と言われているが、それ以後、バラエティはテロップの嵐となった。
確かにわかりやすい時もあるが、ここで笑えとばかりに指示されるのは視聴者的には拒絶反応が強い。
近年だと、日本テレビ金曜ロードショー「シャーロック・ホームズ」で、画面左上に「黒幕はモリアーティ教授」などとあらすじが表示され、ネットでもクソテロップと叩かれたのが記憶に新しい。
この過剰反応の流れが、ドラマタイトルにも伝播しているのが主因と考えられる。昔と違って、今視聴者がテレビを見る際にはテレビ画面に一覧表示された番組タイトルから選ぶことが多い。
そうなると、短いタイトルでは理解されないと情報を詰め込み、過剰にサブタイトルをつけてしまっているのが現状ではないだろうか。
朝ドラくらいブランドが確立していれば「まれ」でもいいだろう。だが、そうでない場合はタイトルだけで中身が伝えられないとダメだと思い込んでいるのだ。しかし、このサブタイトルの濫用はかえってドラマへの興味を薄くさせている。
ネタバレテロップのように、見る前からドラマのサブタイトルで内容を語られてしまうと、途端に興味を失う層が確実にいる。
「5→9」だけであれば原作や内容を知らない人も見たかもしれないが、「~私に恋したお坊さん~」と付けられると、ハナから見ない人がいるのだ。
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■力を注ぐべきはそこではない!
でも、結局みんなメインタイトルだけで呼ぶんだから「安堂ロイド」より「安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~」の方が目立つだろ。
そうかもしれない。しかし「タイトルより内容」という至極当たり前の言葉で返すしかないのだが、良い内容であれば、どんなタイトルでも視聴者には口コミで伝わりヒットへとつながっていく。
サブタイトルで目を引いただけの客は、内容がなければ必ず逃げていく。力を注ぐべきはそこではないのだ。
もちろんスポンサー、原作者、芸能事務所への配慮で、結果的に合併した損害保険会社のように長いタイトルになったものもあるだろう。
いずれにせよ、サブタイトルがついているものは自信の無さの裏返しに見えてしまう。何というか、自信の無い素材を必死でデコレーションして売ろうとしているような気がしてならない。これでは最初から印象が悪い。
願わくば、今度の「火花」のドラマ化が「火花~奇想の先輩から学んだお笑い哲学~」みたいにならないことを祈りたい。
(文/前川ヤスタカ)