【議論】アイデンティティを決めるのは国籍か?それとも生まれ育った国なのか?
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ラグビー強豪国、南アフリカに対して、歴史的大勝利を収めたラグビー日本代表の活躍は記憶に新しい。だがその歴史的大勝利と同時に、日本代表の外国出身選手の割合も同時に注目を浴びた。
ラグビー日本代表の五郎丸選手は自身のツイッターでこう述べている。
ラグビーが注目されてる今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ。#JapanWay
— 五郎丸歩 (@Goro_15) September 20, 2015
たとえ見た目は外国人でも、日本で生まれ育った選手や、日本国籍を取得するという大きな決断をした選手もいる。どちらにせよ、彼らが日の丸を背負って日本の誇りを胸に戦った事実だけは変わらないだろう。
では、このような多様なバッググラウンドを持って生まれ育ってきた人たちは、自分を何人だと考え、また何をもってそう考えるのか。
しらべぇ編集部はこれを明らかにすべく、多様なバッググラウンドを持つ3人の人物に取材を敢行した。
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■1人目:ステラ(仮)さん 23歳 学生
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父親:インドネシア系中国人 母親:ベトナム系中国人
本人の生まれ:オーストラリア 国籍:オーストラリア
話す言語:英語(母国語)、広東語(会話レベル)、日本語(大学で勉強中)
Q.バッググラウンドについて教えてください
「両親は共に中国人ですが、それぞれインドネシア、ベトナムで人生の大半を過ごしました。
私自身はオーストラリアで生まれ育ったため、普段は英語でコミュニケーションをとっていますが、幼い頃まで自宅では広東語を使っていました。
中国では北京語が標準語なので、標準語を学ぶため、週末は普段の学校とは別の中国語学校にも数年通っていましたが、今では全く話せません。
広東語も、会話レベル。家でも家族とは英語を交えて話すことが多いですね。中国には住んだことはなく、親戚を訪ねに何回か行ったことがあるだけです」
Q.自分のことを何人だと思いますか?
「オーストラリア人ですね」
Q.そう思う理由は?
「ここで生まれ育ったからです。私は中国にも、インドネシにアも、ベトナムの文化や社会規範にも馴染みがありません。
例えば家に入って靴を脱ぐ文化だったりとかは、やっぱりまだ違和感を覚えてしまいます」
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■2人目:さきさん(仮)23歳 学生
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父親:中国/日本のハーフ 母親:中国人
本人の生まれ:日本 国籍:日本
話す言語:日本語(母国語)、中国語(母国語)、英語(ビジネスレベル)、フランス語(会話レベル)
Q.バッググラウンドについて教えてください
「日本で生まれて、中国には中国語の勉強のために中学1年から2年間、そのあとまた日本に帰国して高校2年でニュージーランドに1年間留学。
その後また日本に帰国して、高卒後、中国の大学に進学しました。1年後中退してオーストラリアの大学に入学して、2ヶ月前までは1年間パリに留学したという感じかな」
Q.とても複雑なバックグラウンドですが、自分のことは何人だと思いますか?
「よく聞かれる(笑)。 自分は『ハーフ』っていつも答えてるよ。
どちらも、私の大切な故郷だからね。それ以上に理由はいらないでしょ」
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■3人目:タンさん(仮)29歳 大手日系メーカー勤務
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父親:ベトナム人 母親:ベトナム人
本人の生まれ:日本 国籍:ベトナム
話す言語:日本語(母国語)、英語(ビジネスレベル)、ベトナム語(会話レベル)
Q.日本国籍を申請中という理由は?
「仕事柄、海外出張の機会が増えてきて。そうなるとベトナム国籍のままではビザの問題ですぐに海外に行けないんですよ」
Q.仕事の都合がなければ国籍は取得しないつもりでしたか?
「もし取る必要がなければ、このままベトナム人のままでいたいと思っていましたね」
Q.日本国籍を取得しても、「ベトナム人」というアイデンティティは変わらない?
「私はおそらく『元ベトナム人だった日本人』と考えるようになると思います。
でも、日本育ちのベトナム人という考えは今でも変わりませんし、家族がベトナムにもいる限り、完全に自分がベトナムと無関係になるとは思っていません」
生まれ育った国にアイデンティティを感じるステラさん、両親の故郷にアイデンティティを感じているタンさんに、両方大事な故郷だと語るさきさん。
多様なバッググラウンドを持つ人達のアイデンティティはひとそれぞれ。見た目や国籍で、周りがとやかく判断する問題ではないことは確かなようだ。
(文・取材/しらべぇ編集部・阮)