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【法律コラム】アイドルが恋愛禁止を破り65万円の損害賠償…この判決は妥当なのか?

コラム

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先月、東京地裁が、「アイドルの恋愛を禁止する条項を認め、アイドルの損害賠償責任を認める」という判断を下して話題となりました。

芸能案件をたくさん扱っており、先日某テレビで、多くの芸能人のクライアントをもつ「カリスマ弁護士」として紹介されてしまった筆者としても、注目の事件。ちなみに筆者は自分を「カリスマ弁護士」とは一切思っていません(笑)。

というわけで、まずはこんなアンケート調査から。

 

■6割以上の人がアイドルの恋愛に賛成

アイドル_法律

時代も変わってきたということでしょうか。アイドルの恋愛に対して寛容な方が多いですね。マインドソナーの調査結果によると、男性も女性もほぼ同数でした。

となると、なおさら今回の裁判の判決に対して疑問を持っている人も多いかと考えられます。

本当に微妙な問題、筆者はこの裁判について判決文をまだ手には入れていませんが、ニュースの範囲において知る限りでは、「判決は(ある程度の範囲で)妥当である」と考えています。

 

■恋愛騒動による芸能事務所の苦労とは

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筆者の事務所では、芸能事務所側の事件も扱いますので、芸能事務所側の苦労も知っています。現在、芸能事務所は星の数ほどありますが、あまりに増えすぎた結果利益がなかなか上がりにくい構造になってしまっています。

じつは、タレントを育てあげ、利益を生むようになるまで、かなりの労力と費用がかかるのです。

例えば、芸能事務所を維持するには、芸能事務所の賃料、マネージャーなど社員の人件費レッスン代衣装代交通費接待交際費…。本当に多くのお金がかかるのですね。

そのため、タレントが急に芸能事務所を辞めたいと言ってきた場合、芸能事務所側としてはかなりの損害(損失)が発生する可能性もあります。

特にアイドルの場合、例外もあると思いますが、女性・男性問わず、多くの熱烈なファンは、疑似恋愛とまでは言わないでも、付き合っている異性がいないという前提で応援していると思います。

だからこそ、アイドルの恋愛発覚は、芸能事務所としては「ファン離れ」のきっかけとなり、さらに「恋愛内容」によっては、テレビ出演やCM出演の有無・量にも影響してくる可能性があるのです。

筆者も遠い昔の高校時代、熱烈な某アイドルグループファンでしたが、真偽はともかく相次ぐお泊り報道に心を痛めたこも…。

 

「恋愛禁止」は事務所の経営戦略?

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とくに芸能事務所の場合、CM出演料がかなり高額で芸能事務所にとって大きな収入源となります。そのため、CM等がなくなると、芸能事務所の存続の危機にもつながります。

また、恋愛をきっかけに芸能事務所を辞められてしまった場合、投下したお金を回収できないおそれもあります。

そこで、芸能事務所側がタレント(とくにアイドル)と契約をする際に「恋愛禁止」を条項にすることには、事務所の経営戦略として、一定の合理性があると思っています。

また、「恋愛禁止条項」があるということは、それだけ芸能事務所側が「恋愛」について厳しく考えているということであり、そしてそれを「ウリ」している可能性があるということですね。

そういった芸能事務所と契約し、その条項を破り、芸能事務所に損失を与えた以上、一定の範囲で損害賠償をしなければならないのは仕方がないともいえますね。

 

■タレントだって恋はしたい!

とは言っても、タレントだって一人の人間です。恋だってします!! 福山さんも結婚しました(涙)。タレント側としては、もし恋愛禁止が嫌であれば、そういった条項がない芸能事務所を選べばよいということになりますよね。

「えっ、そんな事務所あるの?」というと、実は結構たくさんあります。筆者の経験上、「恋愛禁止」を契約の条項にしている芸能事務所の方が少ないといえます。というか、ほとんどそのような「恋愛禁止」を条項している芸能事務所はありません。

もちろん芸能事務所に損失が出るといっても、タレントの全ての行動を縛るのは、合理的ではなく妥当ではないでしょうね。損害の範囲を無制限に広げてしまうのは妥当ではなく、相当程度の限定も必要でしょう。

今回の事件では、契約に「恋愛禁止」の条項があり、さらに損害の範囲の制限があったためこの点もクリアしていると考えています。

ニュースでも、芸能事務所側は、

女性と専属契約を結んだ際に、〈私生活において男友達と2人きりで遊ぶこと、写真を撮ること(プリクラ)を一切禁止する。発覚した場合は即刻芸能活動の中止および解雇する〉という規約に、女性は目を通しており交際禁止を知った上で違反した

と主張としていますね。

以上から、今回の判決はアイドルの恋愛を一律に禁止するものではなく、あくまで契約の条項にあってそれを知ったうえで、違反した場合の限定した判断。損害の範囲も限定しているため、妥当だと考えています。

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(文/弁護士・佐藤大和

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