音楽には機能しなくなった?一夜にしてスターを生み出すテレビのシステムとは

2015/10/27 11:00

スター画像はキングオブコント2015公式ホームページのスクリーンショット

10月11日に放映された毎年恒例「キング・オブ・コント」コロコロチキチキペッパーズの優勝で幕を閉じた。

毎回この手の番組に対しては、大会運営や審査結果についての意見が噴出しがちだが、本コラムではそういう話ではない。テレビの「スターを生み出す力」と「音楽番組の今後」について考えてみたい。

改めて振り返るまでもなくテレビは数々のスターを生み出してきた。一夜にしてアイドルとなる女子中学生、一回のネタで売れっ子芸人となる無名芸人、我々は数多くそんな例を見てきた。

マンネリや小粒化が進んだこともあって、かつてのような爆発力はなくなったものの、今回の「キング・オブ・コント」でも多くの人が「スキンヘッドで妙に乙女成分の濃い声を持つ」ナダルを認知したことだろう。


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■スターのきっかけは番組ひとつの場合も

これは別にオーディションやコンテストに限った話ではない。

たとえば「笑っていいとも!」末期に出演し一発で認知度を上げた久保ミツロウや、「ゴッドタン」で爪痕を残したのを機に売れっ子になった三四郎など、特定の番組出演でスターダムを駆け上ることもある。

新人女子アナの登場なんていうのもそうだし、CMで一躍「あの子誰?」となるケースもある。言ってみれば今回のラグビーだってそうだ。

これまでトップリーグはおろかラグビーのルールすら知らなかった人々が五郎丸ポーズを真似しているのは、テレビ映像による効果が大きい。もちろんネット発、映画発、口コミ発のスターも大勢いる。

しかし、一夜にして老若男女に認知されるスターを生み出すという意味において、未だにテレビ以上のパワーを持つ媒体はないというのも事実なのである。


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■お笑いでは機能するスター育成システム

スター222©iStock.com/alexeyrumyantsev 

スターを生み出し、それを輝かせ続けるためには「真剣勝負の舞台」と「勝者の受け皿」がなくてはならない。勝負に勝っても、その後活躍できる場がなければスターは一瞬のきらめきで終わる。「芸人」という世界は現状それが機能している。

スターを生むシステムとしては「M-1」「R‐1」「キング・オブ・コント」だけでなく「おもしろ荘」や「山‐1グランプリ」なども含めまだ充実している。ネタ番組は減ったものの、芸人が出演している番組自体はいまだ多く、受け皿もまだまだある。


■音楽業界から消えたスターを生む仕組み

他方、それが全く機能しなくなってしまったのが「音楽」である。

水曜歌謡祭」の目も当てられぬ惨敗の例を出すまでもなく、テレビにおける音楽番組の衰退ぶりは激しい。その理由はひとつに絞られるものではないが、テレビを利用してスターを生み出すシステムが機能しなくなっていることも一因と考える。

日本以外のほとんどの国ではチャンネルを回せば音楽オーディション番組がやっている。アメリカやイギリス以外の国であっても、「Voice」や「ポップアイドル」など欧米発番組のローカライズ版を放送しており、定期的にスターが生まれている。

スター誕生」「イカ天」「ASAYAN」など形は違えど、日本もこの手の番組はかつては多くあった。しかし、今テレビで機能している音楽コンテストといえば、かなり変化球の「のど自慢・ザ・ワールド」のみという状況である。


■今のままでは視聴者が離れていく…

sirabee1030star2©iStock.com/fuzznails

いくらネットの口コミが発達したとしても眠れる才能は確実に存在する。パワーは落ちたとはいえ、テレビには圧倒的に多くの視聴者と地方末端まで行き渡る裾野がある。

知り合いの知り合いにまで声をかけ投票させてフェスで演奏するのもいいが、だったらテレビをもっと利用した方がいい。

何も欧米のフォーマットを使って、純粋に歌い手だけを発掘する必要はない。音楽の作り手が競い合ってもいいし、独自のPVで勝負するのでもいい。アメリカの格闘技番組のように、複数のミュージシャンが自ら才能を発掘してきて競わせることでも構わない

海外でミュージシャンやダンサーとして成功を目指す無名の若者が、海外のオーディション等に挑む姿を追ってもいい。あるいはレコード会社から契約を切られる寸前のミュージシャンばかり集めるのもありだろう。それが人生を変えるような真剣勝負であれば、必ず伝わるものはある。


■新スタートの音楽番組にも課題

たとえば、プロ野球はすでに地上波のテレビコンテンツとしては死んでいる。しかし、優勝がかかった試合や、WBCなどでは、まだまだ十分にコンテンツ足り得る。大食いだってモノマネだってSASUKEだって、真剣勝負という舞台装置があるからこそ日本の視聴者は食いつく

今、音楽番組で人を発掘する真剣勝負っぽい場所は、残念ながら関ジャニの仕分け番組のカラオケバトルくらいしかない。

そして、せっかく人が発掘できたとしても、思い入れのない司会者がミュージシャンと音楽とは関係のないトークをして、カバーを歌わせる番組ばかりの現状では、音楽が音楽として真剣に扱われない。

今シーズンスタートした音楽番組は、「Love Music」も「Momm!」も内容に新鮮味はなく、出演するアーティストも変わりばえしない。これではテレビからは何も起きない。

CDが売れなくなり、ここ数年フェスやイベントなどExperience重視の傾向が強い音楽業界。視聴者層が高齢化、ヤンキー化し、そこに焦点を当てた番組しか作れないテレビ。今のままではお互いはどんどん離れていく一方だ。

しかし、音楽がもはやテレビコンテンツ足り得ないとあきらめるのはまだ早いのではないだろうか。音楽で人生を変える真剣勝負の場をテレビが提供できれば、きっとそこからスターは生まれる

若い作り手が斬新な切り口の音楽番組をつくることを期待して待ちたい。

(文/前川ヤスタカ

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