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【直撃インタビュー】青木真也はなぜ、レジェンド桜庭和志と戦うのか?

コラム

年末に総合格闘技のビッグイベント「RIZIN」が開催される。

強豪として一世を風靡したヒョードルの復活なども話題だが、なんといっても筆者が注目するのは、グレイシーハンターとしてPRIDEブームを盛り上げたレジェンド桜庭和志と、青木真也の一戦である。

sirabee1125rizin画像はRIZIN FIGHTING FEDERATIONのスクリーンショット

格闘技ファン以外でも気になる一戦だろう。もっとも、疑問を感じてしまったのも事実だ。桜庭和志選手が総合格闘家としてピークが過ぎているのは明らかである。申し訳ないが、現在進行形の青木真也選手が勝つ可能性が高いと思う。

では、この試合のテーマとは何なのだろうか? 決戦に向け、シンガポールでのキャンプに向かう前の青木真也選手を直撃した。

 

■なぜこのタイミングでレジェンド桜庭と戦うのか?

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常見陽平(以下、常見)今回、青木選手に伺いたいことは、ずばり年末に開催される格闘技のビッグイベントRIZINにおける桜庭選手との試合についてです。なぜこのタイミングで青木選手が戦うことに?

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青木真也(以下、青木)ひとことで言うなら、日本の格闘技シーンをもう一度メジャーに持っていくためですね。日本のテレビ局が中心になって格闘技のための大舞台を作る、そんな状況をまた創りたい。

 

じゃあ誰と創るかと言えば、やっぱり僕の憧れの選手でもある桜庭さんですよ。総合格闘技界のレジェンドである桜庭さんと、現在進行形の僕だからこそ、他には真似できない圧倒的に面白い試合が出来ると思います。

 

常見:過去の桜庭選手との対談でも話していましたが、桜庭選手がホイラー・グレイシーと闘っていた当時、青木選手はまだ高校生だったとか。

私、あの試合、生で見ていました。「折れるぞ!」とか「折れ!」とか、女性の悲鳴とか。歓声と怒号が飛び交う凄い試合でした。

青木:そうですね。試合を見た翌日は、一生懸命、桜庭さんのアームロックを真似していました(笑)。グレイシーにも憧れていましたが、それに勝った唯一の日本人である桜庭さんには、並々ならぬ思いがあります

 

そんな憧れの選手と闘える試合というのは、自分にとって特別に価値あるものです。

 

常見:この試合を観る若い人の中からも、「俺は将来、青木真也みたいな選手になるんだ」と志す若者が出てくるといいですね。いち格闘技ファンとして、非常に楽しみです。

ただ、ちょっと意地悪なことを言うと、年齢や戦歴で比べれば、いくらレジェンドだとはいえ、桜庭選手が青木選手を圧倒するような展開にはならないと思うんですね。

青木:そこに関しては、10月8日の記者会見での僕のコメントに集約されています。

 

常見:最大のリスペクトをしています。しかし、マットの上にあるのは現実です。それを見せたい」というコメントですね。かなり挑発的に見えました。

青木:僕は格闘技が大好きな人間です。人生の半分以上を格闘技につぎ込んできました。だからこそ、桜庭さんを尊敬する一方、嫉妬しているところもあります

 

常見:嫉妬というのは?

青木:桜庭さんは格闘技が盛り上がっていた時代だからこそ、レジェンドになれたと思うんです。格闘技ブームがなければ、きっと今のような立場にはなれなかった。

 

でも、僕はこれからいくら活躍したとしても、桜庭さんのようなレジェンドにはなれない。その境遇の違いには嫉妬しています。

 

■格闘技をメジャーシーンに引っ張った亀田興毅は一流

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常見:なるほど。ただ桜庭選手に対して、尊敬と嫉妬という複雑な思いがある青木選手だからこそ、今回の試合は総合格闘技史に残る、すごい試合になると思います。

いや、そうしてください。結果よりも、内容と、これで何が終わり、何が始まるのか。いや、現在過去未来をどうつなぐのかが問われるかと。プレッシャーをかけていますが(笑)。

青木:ファンの中には「格闘技ブームの復活だ!」と言ってくれる人もいますが、僕はそんな過度な期待をしていません。目の前に大きな試合があって、自分がそこでやりがいのある仕事を任せてもらう。それだけで満足感は十分あるんです。

 

常見:今回の試合は、自分のキャリアの中でどういう位置づけになると思いますか?

青木:個人的な思いとしては、僕の格闘家キャリアの転換点ですね。この試合が終わった後、僕は格闘家としてもっと高みにいけるような気がします。あとはいつもどおりプロとして、お客さんたちを熱狂させたい。

 

常見:つい先日、亀田興毅が引退表明したことを受けて、「亀田は偉大。プロとして尊敬する」とTwitter上で発言していましたよね。青木選手にとっての「プロ」ってなんですか?

青木:僕ら格闘家にも、一緒に働く仲間や試合のためにお金を払ってくださるお客さんがいます。だから、受注された仕事をちゃんとこなすことがプロとしての最低条件だと思う。

 

そういう意味で、亀田興毅はまさに一流でした。彼が試合をしたことで、誰も損をしていません。みんな得しかしていない。

 

常見:一時期はかなり叩かれましたが、確かに亀田選手がボクシングシーンを盛り上げたのは間違いありませんね。

青木:2009年の内藤大助戦では、43.1%の視聴率を記録したんですよ。内藤選手も亀田選手との試合をきっかけに名を上げました。近年、ここまで格闘技をメジャーシーンに引っ張った人間は亀田をおいて他にはいませんよ

 

常見:今の青木選手の話を聞いて、2002年のPRIDEの高山善廣対ドン・フライ戦を思い出しました。技術もスマートさのかけらもない試合展開でしたが、それでも彼らのプロ魂に打ちのめされるような内容でした。

青木:好きで練習しているから技術が向上するのは当然なんです。でもそれじゃあお客さんの胸には響かない。リングの上では感情をむき出しにして、観ている人たちを最高に楽しませる、それがプロとしての正しい姿勢だと思います。

 

大事なのは巧拙じゃないんです。だから、僕も桜庭さんも技のウマさを競い合うつもりはありません。殺気がむんむんとしたエキサイティングな試合になると思います。

 

常見:なるほど…。そう、やっぱりプロって気だと思う。マジであること、熱が伝わるということ。機械的に上手いアマチュアはどのジャンルでもいるわけですが、やっぱりそれで周りを盛り上げることができるか、熱くさせることができるか、という。

 

■引退するときの理想像はすでにある

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青木:ただ今回観てほしいのは、桜庭さんと僕の試合だけじゃないんですよ

 

常見:というと?

青木:まだ正式には決まってはいませんが、僕らよりも若手の選手の試合も組み込まれると思います。ご存知のように、格闘技ではメインイベントの合間に、新人や若手選手の試合が組み込まれるんです

 

そこで活躍することで、さらに上のステージへランクアップできるわけです。その合間の試合から次世代のスターがどんどん出てきてほしいと思う。僕もDREAM時代に、桜庭さんや田村(潔司)さんに助けられました。

 

上にすごい選手がいたことで、試合に出るチャンスが生まれたわけです。今度は僕が上に立って、下の子たちにチャンスをあげる番です。

 

常見:青木選手や桜庭選手のファンが、若い子たちのファンになる可能性だってありますよね。そういう意味で青木選手は、格闘技シーンを背負っているわけですね。

年末の試合が楽しみです。個人的には、この試合の後に青木選手が、どういうキャリアを築いていくのかが気になります。

青木:ちょうど1年前も東洋経済オンラインの対談で「引退」について、常見さんと話したじゃないですか。もう引退の仕方については、僕の中で決まっています。

 

僕が引退する試合は、必ず誰かに負けて終わる試合にします。最後に勝って引退したくない。

 

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常見:それはどうして?

青木:勝って引退すると、後輩たちにメリットがないんですよ。むしろレジェンドとしての幻想だけが残ってしまうから、後輩たちに迷惑をかけることになる。

 

常見:「RIZIN」統括本部長の高田延彦さんも最後は田村(潔司)選手に負けて、引退しましたよね。当時の「嫌な役をよく引き受けてくれた。田村、お前は男だ!」というセリフは今でも忘れられません。

青木:それをきっかけにファンたちも高田さんから次は田村さんや他の選手を応援することだってあるわけです。だから、僕も誰かに引き継ぐように負けて、引退したい

 

常見:青木選手を打ち負かす選手を待っているわけですね。

青木:ずっと待っています。僕もどこかのタイミングで後輩たちに引き継がないと、しんどいですよ(笑)。でも、それもあと3年でできる気がします。

 

常見:引退した後にやりたいことも決まっているんですか?

青木:今まさに模索しているところです。実はめちゃくちゃ悩んでいます。たぶん僕はジム経営や道場経営に向いているタイプではありません。

 

いろんな方と付き合いつつ、自分の意見を発信する、それこそ常見さんみたいな人になりたいですよ

 

常見:光栄です。古くはガッツ石松さんや、最近では須藤元気さんのように格闘家からタレントに転身して成功する方も多いですが、青木選手はまた別の新しいポジションを確立するような気がします。

青木:そうありたいですね。もしかしたら僕がリングの上で本気で戦える機会はそう多くないのかもしれません。だから、年末の戦いはぜひ僕のファンやそうじゃない人にも観てほしいですね。

 

常見:応援しています。12月29日は私も必ず駆けつけます!

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【RIZIN FIGHTING WORLD GRAND‐PRIX 2015さいたま3DAYS】
会場: さいたまスーパーアリーナ
2015年12月29日(火)開場14時30分/開始16時00分(予定)
2015年12月31日(木)開場14時30分/開始16時00分(予定)

(文/常見陽平

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