なぜワシは子育てを生き甲斐と感じるのか【溜池ゴロー、子育てこそ男の生き甲斐】
溜池ゴロー監督が「子ども」をもつことへの考え方が一気に変わったという、高橋がなりさんの一言とは?
「もし、まり子との幸せなこの2人暮らしに、もうひとつ命が加わったら……」
こんな言葉が突如として思い浮かんだのは、現在のワシの妻・川奈まり子がAV女優を引退する数ヶ月前、つまり、ワシが39歳のときだった。
実を言えば、ワシは30代の終わりまで、つまり39歳になるまで、まったく子供が欲しいと思ったことがなかった。
20代をドラマや映画の助監督として過ごし、30歳からAV監督という仕事に命をかけていた当時のワシは……
「ワシは、作品を創ってるから、子供はつくらん!」
……などと、酒を飲む度に訳の分からんことをよく言っていたもんである。しかし、35歳のとき、そんなワシの人生を大きく変えた出来事が起きた…そう、現在の妻・川奈まり子との出会いである。
■考えの変化
まり子とワシは、仕事で運命とも言える出会いをし、すったもんだしたあげくに私生活でも一緒に暮らすようになった。
川奈と2人で暮らしているだけで凄い幸せを感じていた。だからといって、2人ともなにか特別なことをするわけではない。
仕事のない日は、2人ならんで読書をして、良い時間になったら、外に飲みに行く。そして楽しく酔っぱらって家に帰る…… そんな日々を続けていたあるとき、ワシの頭にふとある想いが生まれた。そう、冒頭にも書いたように……
「もし、まり子との幸せなこの2人暮らしに、もうひとつ命が加わったら……」
……ということである。つまり、2人の間に子供ができたらということだ。 それまで、1度も子供が欲しいと思ったことのなかったワシの頭の中に初めて、「父親になる」というヴィジョンが浮かんでしまった。
そして、1度浮かんだその想いは、日に日に自分の中で鮮明になっていった。 なぜかは分からない。しかしワシには、そのときのヴィジョンが、今後のワシら2人の人生に必要なことに思えてならなかった。
ワシは、翌日から、あらゆる子持ちの先輩たち(男性)に質問を投げかけた。
「子供ができるって、どうなんすかね?」
各先輩方はいろんなご意見をくれた。たとえば……
「カミさんは血がつながってないから、極端に言えば他人だけど、子供は血がつながってるからね。そりゃつくるべきだ」とか、「大人として進歩するよ」とか、まあ世間のお父さんをやっている方達はそれなりに一過言もってらっしゃるなと思ったもんである。
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■運命のひとこと
そして、その中でもワシが最も大きな影響を受けた言葉は、ソフトオンデマンドというAVメーカーの創業者で、後にマネーの虎に出演し、話題になった高橋がなり氏のものだった。
「溜ちゃん、男はね、どんなに頑張っても8割しか力がでないもんだよ。子供ができて始めて100%の力がでるんだよ」
……んんん〜〜〜さすが、マネーの虎である。ワシは、その言葉を聴いて痺れてしまった。子供をつくることの背中を押してもらったような気分になった。
多分、その瞬間だったと思う。ワシが父親になろうと思ったのは。 ワシとまり子は、将来的には、子供を持ち、家族をつくるという共通の意志を持つことになった。
そして、まり子が女優を引退し、年を越して、まり子のお腹に息子の命が宿った。
ちなみに言えば、まり子とワシが出会うキッカケとなった『義母まり子34歳』という作品は、当時ソフトオンデマンドの社長をしていた高橋がなり氏がいなければ実現しなかったものである。
がなり氏との出会いがあったから、このタイミングでまり子と出会うことができている。
つまり、35歳のときに、がなり氏がワシを監督として呼んでくれたから、ワシは、まり子と出逢え、そして、息子とも出逢えたとも言える。 ……こう考えると、人間とは、不思議な縁で成り立っているとつくづく思わされる。
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■不思議な縁
縁や出会いの無数の枝葉をワシら人間たちは歩いている。あたりまえのことかも知れんが、やはり、人間は1人では生きて行けない。 ワシは、息子が生まれた瞬間、息子と出逢わせてくれた不思議な人間の宿命に感謝した。
そして、自分の人生が自分だけのものだけではないという実感とともに、ワシの胸をいっぱいにした気持ちは……「一緒に生きていこう。そして、一緒に育っていこう」 というものだった。
ワシが今、この時点で思っていることを偉そうに言わせてもらうと、「子育て」とは、「自分を育て直すこと」でもあるということだ。
このコラムのタイトルは、見ての通り『子育てこそ男の生き甲斐』などという押し付けがましいものであるが、この不思議な縁で出逢った自分の子供を育てることは、ワシにとって、まさに「生き甲斐」なのだ。
今回は、以上。
(文/溜池ゴロー)