日本酒は本来「女性の酒」? 美女がお米をくちゃくちゃ噛んで…
今でこそ女性杜氏も存在するが、ほんの少し前までは酒蔵は女人禁制。男の仕事とされてきた酒造り。
しかし日本書紀や古事記などの神話を読んでみると、いささか様子が違う。酒造りに関する記事は2ヶ所あるが、最初に米の酒を醸したのは絶世の美女で、皇室の祖先であるニニギの妻となったとされるコノハナサクヤヒメ。
皇子の誕生を祝って酒を醸したと記録されている。
■酒を醸すのは美女の役割
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また少し時代をさかのぼると、神功皇后が皇子の立太子を祝って酒を醸したと記録されている。
前述のとおりコノハナサクヤヒメは大変な美女だと記録されているが、神功皇后も「見る人がみな驚いた」とされるほどの美貌の持ち主。つまり酒を醸すのは美女の役割だったらしい。
ちなみに神功皇后の皇子が長じて、日本で二番目に大きい古墳の主である応神天皇になる。そして彼が大人になったとき、百済からやってきた須須許理という酒の技術者が醸したお酒を飲んで歌を詠んだという記事もある。
ただし百済と日本では醸造技術が違ったようだ。だから、須須許理が男性か女性かは明記されていないが、コノハナサクヤヒメや神功皇后が醸した酒と、須須許理が醸した酒は別物である可能性が高い。
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■日本酒は女神とも深い関係がある
酒の神と言えば奈良の大神神社が有名だが、京都の松尾大社や梅宮大社もまた、酒の守護神として崇拝されている。
大神神社が酒の神社とされるのは、ご祭神であるスクナヒコナが理由だ。スクナヒコナは薬の神様であり、「百薬の長」たる酒もその掌中にしていた。また松尾大社の御祭神はオオヤマクイ、山の神だ。山の神と言えば古来女神と決まっている。
だからこそ山を削るトンネル工事は、「女神を嫉妬させないように」と、現代にいたっても女人禁制なのだ。そして、梅宮大社の御祭神はコノハナサクヤヒメである。
いかに日本酒が女性や女神と深い関係があるか、おわかりいただけただろう。
そもそも「杜氏」の語源は主婦を意味する古語である「刀自(とじ)」であるとする説もある。古代日本では主婦が家事の一環としてお酒を醸造していたのだ。
しかしなぜ女性なのか、そのヒントは古代の日本酒醸造の手法にあるようだ。
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■美女がご飯を口で噛んで…
酵母がアルコールを作るためには、糖分が必要だ。しかし穀物である米には糖分がないため、でんぷんを糖化させねばならない。現代では麹菌がその作業を担っているが、往古は米を口で噛み唾液で糖化させていたのだ。
それならばむくつけき男より若くてきれいな女性に噛んでほしいと願うのは男性ばかりではなかろう。これが、日本において酒造りと美女神を関連付けた理由だと考えられる。
(文/しらべぇ編集部・上江洲規子)