「特撮フォント」に隠された秘密とは?【出口博之のロック特撮】
こんにちは、モノブライトのベース、出口です。
特撮作品の面白さに、「現実には起こらないことが画面の中で繰り広げられる」という部分が挙げられます。
しかし、もうひとつ大切な面白さがあります。それはタイトルに使用される「フォント」です。手書きでデザインされたタイトルには、映像を見る前から想像をかき立てられるような魅力を放っています。
そこで今回は、昭和から現在まで続く特撮作品で使用されたフォントの傾向を調べてみました。
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■特撮界の金字塔!
1954年に生まれ、来年2016年には新作が公開される日本特撮の王様、ゴジラ。
威風堂々とした佇まいを表現しているフォントは、1954年に公開時に使用されたものが2001年の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ怪獣総攻撃』まで、ほぼ同じデザインで使用されています。
作品によっては、フォントにパースがつけられているものもありますが、基本形はほぼ同じです。
2002年『ゴジラ×メカゴジラ』から2004年『ゴジラ FINAL WARS』のフォントは、現代風のスタイリッシュなフォントになっています。
2016年に公開予定の『シン・ゴジラ』は、これまで開示されている情報を見る限り1954年のフォントに準拠したものとなっているので、これだけで公開前から期待が高まります。
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■ 甲羅と牙を表現した傑作
もうひとつ忘れてはならない怪獣映画といえば、ガメラです。今年で50周年を迎え、ゴジラに負けず劣らずの人気を誇ります。
作風の変換も特徴的で、昭和の作品は完全に子供向けでしたが、平成に入るとハードでシリアスな展開(人間が生々しく捕食される、流血描写などのリアリティの徹底追及)が取り入れられました。
ゴジラと人気を二分する、ガメラのフォントを見てみましょう。
第1作のフォントはお世辞にも完成された印象は受けませんが、次作の「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」からはガメラらしいフォントが生まれます。
全体的に角が目立った傾斜のついたフォントは、甲羅や牙などのガメラの特徴を充分に連想させる素晴らしいレタリングです。
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■ピンチのときに駆けつける!
タイトルのフォントは、その作品の主人公を象徴的に表しています。ゴジラやガメラは怪獣ですので、全体的にゴツゴツとした印象。では、ヒーローになるとどうなるでしょうか。
ウルトラマンのタイトルフォントの特徴は「ウ」が強調されていること、それが「特殊な効果を生み出している」ことです。
「ウ」に特徴を持たせ、続く「ルトラ」に力を流すことによって、タイトルが画面の左方向に流れるような印象を与えます。これは、光の速さで飛行するウルトラ戦士を表しているに違いありません。
「ウ」は地球を守りにきたウルトラマンの横顔であり、風を切って飛行するイメージなのです。
ティガ、ダイナ、ガイアの「平成3部作」と呼ばれるウルトラ作品は、タイトルの両端が末広がりになっていて、スーパー戦隊シリーズなどに見られるデザインになっていますが、「ウ」の役割は変わっていません。
特撮作品に限らず、作品のタイトルとは、文字の羅列にあらず。その作品の本質や面白さを表現し、私たちが生活する現実と、映像の世界観をつなげてくれる玄関なのです。
タイトルには制作者の思い入れが込められています。映像を見る前にじっくりタイトルを見てみるのも、面白いのではないでしょうか。
(文/モノブライト・出口博之)