【ラピュタの舞台?】世界遺産「プレアビヒア寺院」が絶景
宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』は、台湾の九份がモデルとされているのは有名な話だ。では、「リアル天空の城」と呼ばれる場所があるのをご存じだろうか。
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■その名も「プレアビヒア寺院」
カンボジアにはふたつの世界遺産がある。ひとつは国旗のモチーフにもなっているアンコール・ワット。そしてもうひとつが「プレアビヒア寺院」である。
プレアビヒアは9世紀末にクメール人によって建築されたヒンドゥー教の寺院。タイとの国境、ダンレク山地の標高約600mの場所に位置しているため…
断崖絶壁から一望できる、カンボジアとタイの景色はまさに絶景の一言。600mの高さとはいえ、柵などはなく安全面は完全に各々に任せられているため、足元がすくんでしまう旅行者も多い。
ジブリ作品『天空の城ラピュタ』では、ベンメリアなどとともにカンボジアの複数の場所がモチーフと推測されているが、この雄大な景色に見覚えのある人も多いのではないだろうか?
どことなく、東京ディズニーシーの「レイジングスピリッツ」にも似た雰囲気だが、もちろん別の会社だ。
繊細な彫刻が施された門や沐浴場が残っており、積み上げられた岩はところどころ崩れているが、それが逆に味となっている。
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■観光客が少ない理由は?
しかし、世界遺産に登録されていて、これほど美しい遺跡であるにも関わらず、観光客がほとんど訪れないそうだ。その理由は、立地と歴史にある。
① 単純に遠い…
プレアビヒアは、カンボジアの首都プノンペンから車で約3時間かかる。さらに山の麓から寺院のある山頂には2時間歩くか、ピックアップトラックと呼ばれる専用車に乗り換える必要があるのだ。
同時に、プレアビヒアを訪れるツアーは少なく、個人手配も手間がかかる。これらが、観光への足かせになっている。
② 紛争の過去も…
もともと、プレアビヒア寺院はカンボジアとタイの間で、長らく主有権を巡って争われていた場所だった。
1962年に国際司法裁判所によってカンボジア領であると正式に認め得られたものの、2008年に世界遺産に登録された際に火種が再燃。一時は両国が軍隊を派遣し、2011年には死傷者が出るまでに…
現在では争いは一段落、遺跡付近では穏やかでゆっくりした時間が流れているものの、紛争の過去は、いまだ観光地にならない原因であることは間違いないだろう。
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■入場料はアンコールワットの半額!
長らく入場料無料であったプレアビヒア寺院であるが、2015年7月より、入場料が10ドルになったとのこと。とはいえ、アンコール遺跡群の一日入場料が20ドルであることを考えると、良心的な価格と言えるだろう。
ガイドやパンフレットが存在しないので、遺跡の歴史ついて詳しく知ることは難しい。
しかし、ゆっくりと雲が流れる山の頂きの上で、「こんな山頂にどうやって岩を運んだのだろう?」と想像をめぐらせることは、ネットで調べれば、答えがすぐに得られる時代に生きている現代人にとっては、むしろ豊かな楽しみ方なのかもしれない。
(取材・文/しらべえ編集部・大久保彩乃)