【ナマポ天国?いや地獄】増える生活保護、当事者に話を聞いた
テレビなどで生活保護受給者が窮状を訴えると一部から「贅沢だ」などバッシングを受けるという様を見たことがある。様々な問題を抱えているのは確かだが、実態はどうなのか。受給者や自治体の福祉担当者に話を聞いた。
■受給件数は20年前の2倍以上
厚生労働省によると、2015年4月現在の受給者数は約216万人(保護率1.7%)で、世帯数はおよそ161万件と過去最多を更新。
受給者数が最も少ない95年の88万人(保護率0.7%)から急激な増加を続けている。「金を持っている」とされる65歳以上の高齢者は全体の半分を占めている。
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■支給額の減額で自立は厳しい
30代の女性は、会社員だった時に重度のうつ病と診断され退職。傷病手当金で生活しつつ転職先を探したが「ベッドから起き上がるにも多大な労力を要する人間をわざわざ採用してくれる奇特な会社はありませんでした」と自嘲する。
食料品はスーパーマーケットの値引き商品だけ、衣類は友人らのお下がりーーと節約できるものは全て削った。無論、酒やタバコ、ギャンブルはやらない。
しかし、それでも金銭的な余裕はなかったという。
「役所の担当者は『ある程度は貯金しなさい』と忠告をしてくれましたが、減額に次ぐ減額では貯金どころではないです」
生活保護から自立するためには、相応の金額を要する。自立するための蓄えがなければ、いつまでも生活保護に依存することになってしまう。
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■窓口は連日黒山の人だかり
一方、福祉行政の現場からも「申請者が多すぎて対応しきれない!」と悲鳴が上がっている。 某市役所で生活保護を担当する40代の男性は「対応に追われて不正受給か否かを詳細に調べられない」と話す。
かつては不正受給がないか丹念に調査することができたという。偽装離婚で受給を受ける人や、生活保護だけでは到底買えそうにない高級車を乗り回す人など、悪質な申請者や受給者を排除することができた。
ところが、現在の窓口は黒山の人だかりで審査する余裕が失われている。正当な受給者か、悪質な受給者なのかを判断するには人員も時間も圧倒的に足りていないのが現状だ。
受給者も地獄、審査する担当も地獄、ネットに流布する「ナマポ天国」とやらはどこにあるのだろうか。
(取材・文/しらべぇ編集部・伊藤憲二)