【カッコつけオヤジの痛い日常】「デザイナー渋井直人の休日」が面白い
こんにちは。間食はもっぱら素煎りナッツ派のスタイリスト久保田(フランソワ)です。突然ですが、『otonaMUSE(オトナミューズ)』って知ってますか?
30~40代女性向けのファッション誌なんですが、最近とても人気があるようです。そんな絶好調のオトナミューズに、今最高に「痛面白い」マンガが掲載されているので、ぜひご紹介したいと思います。
タイトルは「デザイナー渋井直人の休日」。正直、絵のタッチはおしゃれ女性誌とは思えないくらいユルいのですが、登場する人物像のリアルさ「こんな人いるいる!」感が尋常じゃないんです。
主人公の渋井直人は、意識高い系40~50代オジサマ。
豊富な音楽の知識とこだわりのライフスタイルを持ち、デザイナーという仕事の傍ら、知り合いのカフェでDJもやっちゃうような、オシャレど真ん中&業界人丸出しなお方。
ここまで聞くと、単なる「カッコつけたイケすかないオッサン」なんですが、そう見えて彼はとてもナイーブ。
女の子に話しかけて欲しくて近くをウロついてみたり、アイドルの写真集を衝動買いしてしまったところを知り合いの女性に目撃され、必死で言い訳したり。
男性なら誰でも一度は経験のある「自らのカッコツケを守りたいがために、行動が束縛されたり奇妙な発言をしてしまったりする」というこっぱずかしい体験を、渋井直人は赤裸々に見せつけてくれます。
だから男性が読むと「自分にも思い当たる節があるから恥ずかしい、でも面白い」となるはず。一方で、実はそういうカッコツケとそれに伴う葛藤って、女性にはバッチリ見抜かれてたりするんですよね。
だから女性が読んでも
「あー、こういうイタイおじさん取引先にいるわー」
といった共感があって絶対面白いはず。
ちなみに、渋井直人の周りに出てくる女性キャラクターの言動や思考回路もこれまたリアルで、とくにデザイン、アパレル、雑誌編集関係者なら絶対に共感できます。
そしてこのマンガの1番すごい点は、そのホンワカした絵柄とは裏腹に、ものすごくシビアに現実、すなわち他人の目線を描いているところ。
「必死にカッコつけてるあんたのコダワリや頑張りなんて、他人からしたらハナクソ以下なんだよ」という、誰も口には出してくれない、でも心の奥底で思っているはずの本音をサラリと描いてしまっているのです。
無意識な自意識過剰、いわゆる中二病に代表される「男の独りよがり」を矯正してくれる本、と言う見方もできるかもしれません。
みなさんも、ぜひ一度この愛すべき渋井直人の「かっこいい風オヤジの必死さとズッコケ」を味わってみてください。
男性にとっては反面教師としてのヒントが、女性には世のカッコイイとされる男の水面下の頑張りが、クスクスニヤニヤとした苦笑いとともに見てとれるはずです。
(文/久保田フランソワ)