猫好き必読!あなたはどこまで猫を愛していますか?
芥川奈於の「いまさら文学」第33回。今回は「猫」をモチーフにした不思議なお話。
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■余命を1日のばす方法?
『電車男』『モテキ』『告白』『悪人』___。
どれも、誰もがどこかで聞いたことのある映画作品名であると思う。これらを企画・プロデュースした人物が川村元気である。そんな彼の処女小説作品がこの本『世界から猫が消えたなら』だ。
主人公は一匹の猫と暮らす郵便配達員。彼はある日、自分の余命がわずかだと知らされる。そんな時、目の前に自分そっくりの姿の悪魔が現れ、
「世界からなにか1つを消すたびに命を1日延ばしてやる」
という契約を持ちかけてくる。電話、映画、時計…世界からものがひとつずつ消えるたびに、1日だけ生きのびる主人公。
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■なにが人間を人間たらしめているのか?
作者の描く世界の柔らかさや、寂しさ、そして何といっても「猫」を心より愛する主人公の心、終焉に向かう時に父との確執を打ち消すかのようなエピソードは、読んでいて心にジンと響くものがある。
普段やさぐれてしまっている心を癒すのに読んでみるというのもいいかもしれない。
この小説はLINE公式アカウントで配信する世界初のサービスとしても注目を集めた。本屋大賞ノミネートを始め、映画化、ラジオドラマ化等もされ、多くのメディアに受け入れられた。
そして世の中は、猫ブーム真っ盛り。CMにも、本屋のあらゆるコーナーにも、もちろんペットショップにも、多くの種類の猫たちが溢れている。
今年、この本が文庫本化されたことで、再ブレイクとなるかどうか楽しみでもあり、「猫」という生き物の命の大切さを改めて多くの人々が考え直すきっかけになってくれれば、なお嬉しい。
(文/芥川 奈於)