「味の素入り」と「無化調塩強め」ラーメンどちらが体に悪いか医者に聞いてみた

2016/02/22 07:30

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「この店は“無化調”で洗練された味わいのスープが最高です!」 なんて、よくグルメ口コミサイトのレビューで見ることがある。

無化調とは昆布やカツオ、鶏ガラなどから出汁を取り、味の素などのうま味調味料を一切使用していないラーメンのことだが、記者はいつも疑問に思っていた。


「毎日大量の人数分を作らなければならないラーメンで、本当に無化調が絶対に美味しいなんてありえるのか? 出汁の取り方でブレが出てしまうのではないか?」


「味の素を使ってブレをおさえたほうが、安定していつも同じ味の美味しいラーメンを提供することができるんじゃないだろうか?」



…と。テレビで放送されるプロの料理では、あまり味の素は使われないために「味の素を使う店は素人」だと思われてしまうことが多いのかもしれない。

ただ、料理についてはさまざまな作り方があるため、今回は別の視点から「味の素は本当に悪なのか?」ということを検証してみたいと思う。

まずは「味の素は体に悪い」という印象を持っている人が多かったので、塩分の多いラーメンと味の素を多く使ったラーメン、どちらが体に悪いのかを大学病院に勤める内科医に聞いてみた。



 

■味の素たっぷりで塩控えめなラーメンと無化調で塩分の強いラーメンどちらが健康に悪いのか?

「食塩における塩分とは塩化『ナトリウム』のことです。


血圧管理で食塩の過剰摂取が問題になるのは、血液中にナトリウムが増えると、濃度を一定に保つために水が引き寄せられて血管内圧が高まるからです。


大雑把に言うと、ゴムホースに水を流すときのイメージでしょうか? 流量が多ければホースに張りが出ます。うま味調味料はナトリウムを含みますが、メーカーによると食塩の約3分の1程度です。


一般的に、減塩食では『だし』を強めに効かせることで塩気が少ないことによる味気なさを解消するので、味の素を使用した塩分控えめラーメンは『あり』な気がします。


血圧管理の点からは、無化調で塩分の強いラーメンのほうが圧倒的に体に悪いといえるでしょう。


うま味調味料自体が体に害を及ぼすかどうかは、味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウムについて言えば、極端な量を摂取しないかぎり安全だと考えられています。


アメリカ食品医薬品局は検証の結果『一般に安全と認められる』としており、ヨーロッパでも同様の評価です。ただし、こうした立場に否定的な報告があるのも事実です」


つまりナトリウムの量が多いほど高血圧になりやすいため、うま味を補うために塩を強くしたラーメンより味の素の入ったラーメンのほうが、一般的には体にいいということらしい。


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■味の素の入った料理を食べると「舌がしびれる」という人がいるが本当にしびれているのか?

それでは、これまたよく聞く「味の素の入った料理を食べると舌がしびれる」という人がいることはどうなのだろう? 血圧以外に体に悪影響が出ているのかも? それについてもせっかくなので聞いてみた。


「味の素の成分は、昆布、トマト、チーズ、大豆、酵母などにも含まれているので、そうしたものを食べたときにも舌がしびれるのでしたら、本当かもしれません。


ただ、味の素だけで症状がおきる場合は、そうなると思い込んでいて錯覚しているケースが多そうです。感覚や症状の言い表しかたは人によって様々なので、医学的なしびれ感とは違っている可能性もあります。


『舌のしびれ』という主訴で受診した患者さんを診療するときに、味の素などのうま味調味料を原因として疑うことは通常ありません。


余談ですが、雑多な成分が含まれている漢方薬と、成分がはっきりしている西洋的な薬(普通の薬)でもみられることですが、カタカナのよくわからない成分=「悪」ととらえられがちな傾向はあるかもしれません。


漢方薬のなかにも同じような成分が入っているのに…と思うことがたまにあります」


こちらも先生のお話を聞くかぎり、味の素に舌がしびれる成分が入っているということはなさそうだ。確かにあまり聞きなれないカタカナの成分はぎょっとしてしまうということはあるので、しびれについては錯覚なのかもしれない。


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■味の素を使ったスープと、味の素と同量の旨味成分を抽出した出汁に味の違いはあるのか?

では、味の素を使ったスープと、昆布などを使って味の素と同じ量と種類の旨味成分を抽出したスープを医学的に見て味の違いはあるのだろうか。

先日の記事でお伝えしたとおり、多くのラーメンのプロが味の素について肯定的な意見を持っていたことから、出汁を取ったスープと味の素を使ったスープに、そこまで違いは無いのではないか? という疑問だ。


「味覚は、口の中に入った物質が味覚受容体に結合し脳が興奮することで生じる感覚です。同量の同一物質であれば、受容体から脳へ伝わる刺激も変わらないはずです。


ただし、『美味しい』という感覚は、嗅覚、視覚、先入観なども加わった総合的なものと考えられるので、どちらが味の素のスープか事前に分かって飲んだ場合、差を感じるひとはいるかもしれません。


ブラインドでテストすれば、違いは分からないのではないでしょうか」


確かにレストランで食べる料理は、雰囲気や自分の体調などによって感じる味が大幅に変わってくるもの。

塩分が同量なのであれば、無化調でもうま味調味料を使ったラーメンでも、医学的にみれば人体に対する影響についてはまったく変わらないということが明らかになった。

ただ、ラーメン屋で大きな鍋を使いスープを煮込んでいたら「ウマそうやな…」と思い、さらにラーメンが美味しく感じるのは当たり前のことだ。

それだけで補えない美味しさを味の素を使ってプラスするというのは、プロの料理人の選択肢としても間違っていないといえそうである。

(取材・文/しらべぇ編集部・熊田熊男

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