東大でギャルの「盛り」を真剣に研究している美人研究者に直撃【前編】
東京大学情報理工学系研究科特任研究員、久保友香博士。
最高学府で日々研究に没頭する彼女は、一風変わった分野を研究対象としている。それは女性を「盛る」技術、すなわちメイクや付けまつ毛、カラコン、画像加工(プリントシール機やSNS上の人物写真など)のことであり、久保さんはそれらを総じて「シンデレラ・テクノロジー」と呼んでいる。
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■キーワードは「測るものさし」
「小学生の頃、自分はクラスで底辺の人間だと思ってたんです。運動も全然できないし、給食を食べるのも遅いからいつも教室の隅に残されて最後まで食べてました。そのせいで、学校に行くことも嫌でした」
転機は、小学校高学年で塾に通い始めたとき。なんと最初のテストでいきなり上位にランクインしてしまったのだ。そこで気づいたのは「私は勉強が得意なんだ」ということではなく――
「『測るものさしが変われば同じ人間の評価が簡単に変わるんだ』ということに気づいたんです」
底辺から抜け出せた喜びよりも、まず人間の評価基準に興味を持ってしまうあたり、生まれもっての研究者気質といえるのかもしれない。
画像はシンデレラテクノロジーのスクリーンショット
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■女子が「盛る」理由
「一般にギャルと呼ばれている、反逆心ある若い女子たちの外見を作ることに対する貪欲さが好きなんです。研究者としてすごく興味がある。彼女たちの『盛る』ための発想や技術は間違いなく世界トップレベル。
それを借りることで、誰もがアイデンティティを操れるようになるのではないかと思っています」
「盛る」とは、リアルな自分やバーチャルな自分を、本人だと認識できる範囲内で外見を加工することであり、やり過ぎてはダメなのだという。
久保さんの調査では『なぜ盛るのか?』という問いに対し、ギャルからは『自分らしくあるため』という答が返ってくるそうだ。
流行に追随し、みんな同じようなメイクをしているように見えるが、なぜ正反対ともいえる答が出てくるのだろう?
久保さんいわく、彼女達は 一見横並び意識による均一化を求めているように見えるが、実はトレンドや前例をしっかり守った上でさらにそのなかで自分らしさを表現するという、実に高度な自己表現として「盛っている」のだという。
「いってみれば日本の武芸における『守破離』なんです。欧米みたいな強い個性やストレートな自己表現を、シンデレラ・テクノロジーで体現するのは比較的簡単です。
でも『守破離』を守りつつそれを実践するのはすごく高度な技術。なのに、日本では一般の女子がみんなやってるんですよ」
興奮ぎみに話す久保さんは、こう続けた。
「でも、そういう価値観のない海外からしたら、その凄さが分かりにくいのだと思います。そのあたりも私の研究を通じて、もっと伝えていけたらいいですね」
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■努力を測るモノサシ
そんな「盛り女子」に対し、男性から必ず言われるのが「すっぴんが一番いい」という意見。しかし、久保さんによればこれは原始的発想らしい。
「生まれ持った身体的特徴だけで評価するというのは、例えば生まれつき体が大きく腕力の強い人間が権力を握れるというような、原始時代の発想だと思うんです。
それだと、ごく一部の『生まれながらに特別な外見を持つ女子』だけが認められることになってしまいます。生まれながらの能力ではなく、努力が、ちゃんと報われるような世界を作りたいんです」
そのために研究者である自分にできることは「美への努力」を測るものさしをつくること
――使命感を帯びた強い瞳で言い切った久保さんは、すぐに照れたような笑顔を浮かべてこう付け足した。
「美に限らず、ですけどね。ただみんなの努力が報われる世の中を作ることに貢献したいんです」
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■「盛り」とはコミュニケーション技術
「たとえば無人島に1人きりだったら、オシャレもメイクもしないと思うんです。なぜなら『盛り』とはコミュニケーション技術だから」
女子の中では『ピンプリ』(=ひとりでプリントシールを撮ること)は良くないこととされるそうだ。なぜなら「盛り」は人知れずこっそりやるものではなく、コミュニティ内でお互いに認め合ってホメ合って、情報交換するためのツールでもあるから。
まさしく、コミュニケーションツールだ。その点は、主にモテるために行われる男性のオシャレや美意識とは性質が大きく異なるものなのかもしれない。
「とくに若い女子、ギャルと呼ばれる人たちはすごく貪欲に、しかも楽しみながら盛っている。だから研究していて楽しいし、私も元気をもらえるんです」
※こちらのインタビューは、2/26配信予定【後編】に続きます。お楽しみに。
(文/久保田フランソワ)