東大でギャルの「盛り」を真剣に研究している美人研究者に直撃【後編】
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東京大学情報理工学系研究科特任研究員、久保友香博士。最高学府で日々研究に没頭する彼女は、一風変わった分野を研究対象としている。
それは女性を「盛る」技術、すなわちメイクや付けまつ毛、カラコン、画像加工(プリントシール機やSNS上の人物写真など)のことであり、久保さんはそれらを総じて「シンデレラ・テクノロジー」と呼んでいる
■「盛り」とはコミュニケーション技術
「たとえば無人島にひとりきりだったら、オシャレもメイクもしないと思うんです。なぜなら『盛り』とはコミュニケーション技術だから」
女子のなかでは『ピンプリ』(=ひとりでプリントシールを撮ること)は良くないこととされるそうだ。
なぜなら「盛り」は人知れずこっそりやるものではなく、コミュニティ内でお互いに認め合ってホメ合って、情報交換するためのツールでもあるから。
まさしく、コミュニケーションツールだ。その点は、主にモテるために行われる男性のオシャレや美意識とは性質が大きく異なるものなのかもしれない。
「とくに若い女子、ギャルと呼ばれる人たちはすごく貪欲に、しかも楽しみながら盛っている。だから研究していて楽しいし、私も元気をもらえるんです」
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■外人顔メイクはコンプレックスが原因?
日本人にアジアンビューティーなメイクよりも欧米顔メイクが人気なのは、劣等感というより遊び心なのでは? というのが久保さんの考えだ。
「欧米顔に向けて盛っていくほうがメイクしてて楽しいんですよ。盛り甲斐がある、というか。
だから、欧米風メイクはコンプレックスというよりも、みんな単純に作ってて楽しいからやっている気がします。手先の器用な日本人ならではの、ある種物作りの楽しさを求めてメイクしているんじゃないかと」
研究者という、ともすればノーメイクでも支障ないようにも思える仕事でありながら、久保さんはしっかりとメイクやファッションに気を使っている。
自身の身体を盛ることで、実体験に基づく極めて説得力ある見解が出せるのは、女性研究者ならではだ。
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■進化するギャルと世界
「実は今、パッと見でギャルメイクと分かるような子は少なくなってきています。
最近では、今まで培ってきた技術をさらに進化させ、自然に見えるけど盛ってるという高度なメイクやファッションになってきているからなんです」
そのメイク技術や、プラスチックコスメ(※)のクオリティは世界最高峰だという。
(※)プラスチックコスメ……久保さんは付けまつ毛、カラコン等のプラスチック製メイクパーツを総してこう呼んでいる。
実際に久保さんは世界各国でつけまつげを購入し、比較してみたそうだ。たとえば日本の付けまつ毛は、自然に見えるように毛先に向かって先細っていて、毛並びもあえて不揃いにしてある。
種類も豊富で、100円均一ショップでも買えるほど安価だ。これは他国ではまず見られない状況で、海外で見つけた中でいちばん精巧かつ安価だったものでも、ロンドンで500円くらいはしたという。
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■SNSでの「盛り」はもはや虚像ではない
朝、鏡の中の自分を見て「よし!」と思って出かける。でも、それはあくまでも「キメ顔」を、外さない角度で見てOKを出しているにすぎない。
一方で、テレビや雑誌に露出することを生業とするアイドルや芸能人は違う。好むと好まざるとにかかわらず、常に客観的に自分を誰よりもシビアに見ることができるから、日々磨かれてどんどん美しくなっていく。
ところが今は一般の女子たちも、毎日のようにスマホで自撮りした写真をSNSにアップして、常に世界中の人目にさらされている。今や芸能人だけでなく、あらゆる女子がステージに立っているから、みんなが日々かわいくなっているのだ。
ネット上で作り上げられたアイデンティティは、決してバーチャル世界のものだけではない。磨きあげられた「美しい自分」は単なるアバターではなく、リアルな自分の姿にもしっかりフィードバックされる。
「プリで上手に自分を盛れる子は、学校やクラス内でも自分のアイデンティティーをちゃんと確立できていて、現実のコミュニティーでも人気者であることが多いんです。
逆にプリやネット上で着飾ることだけに終始して現実世界に出てきたくないタイプの子は、結果的にバーチャルでもリアルでもそれほど人気が得られない傾向があります」
■日本のシンデレラテクノロジーを世界へ
「生まれつき美しい女性よりも、努力して美しくなろうとする女性に光が当たる世の中にどんどんなってきていると思います」
「盛る」ことで自らを美しく加工し、気分を盛り上げ、その努力自体を楽しんでお互いに率直に評価しあえる世界。
ギャルに代表される女子のコミュニティが、それだ。久保さんが幼少期からずっと追い求めてきた「誰もが100%努力の報われる世界」の可能性が、そこに見えていた。だからこそ――
「彼女たちの努力の結晶である『盛り』という美を、感覚ではなく数値化して客観的に測ることのできるモノサシを作り出したいんです。
そうすれば努力の跡が誰の目にもきちんと分かるし、努力の方向性や度合い『どれくらいの盛り具合が適切か』を知る手立てにもなるでしょうから」
お気に入りのファッションやスイーツについて語る女子のようなキラキラとした表情で、そう話を締めくくった久保さん。その言葉の端々には、すべての「盛り女子」達への愛と尊敬の念が溢れていた。
すべての女性を美しく変身させる魔法のような技術。日本の誇る「シンデレラ・テクノロジー」 を世界に向けて発信するべく、久保友香の研究と挑戦は続く。
久保さんの研究内容をまとめた本が出版されています。ご興味をお持ちの方はぜひ。
画像はシンデレラテクノロジーのスクリーンショット
(文/久保田フランソワ)