東南アジアに進出したイオンモールがとんでもない件
日系小売大手のイオンが、東南アジアで目覚ましい拡大を遂げている。イオンモールというと、我々日本人から見れば「庶民的なスーパーマーケット」というイメージだろう。
だが日本の外を出たイオンは、「ミドル層以上を対象とする商業施設」として位置付けられている。
2014年にはベトナムとカンボジアに、2015年にはインドネシアにそれぞれ国内1号店を開店させたイオンモール。そのインドネシア1号店から、ASEAN地域におけるイオンの営業戦略や現地での評判についてご紹介しよう。
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■ここは要塞か?
東南アジアのイオンモールは、とにかくでかい。まるで戦国時代の城か要塞のような佇まいである。
ASEAN諸国に共通して言えるのが、モーター普及率が高いということだ。ベトナムにしろインドネシアにしろ、誰しもがホンダのバイクやトヨタのミニバンを乗り回している。
だからこそ「郊外型ショッピングセンター」という形式の施設がニーズに合致する。
そして郊外型の大きな利点は、市内中心部よりも広い土地に恵まれているということだ。現にイオンモール・インドネシア1号店は、敷地面積10万平方メートルという広さ。
ちなみに東京ドームのそれは5万平方メートルに届かない。このような巨大モールには、さまざまな店舗が入居している。
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■進出の足がかり
海外進出を目指す日系サービス業にとって、「テナント入居」というのは絶好の手段だ。インドネシアのイオンモールを見ても、日本人の目に馴染んだ看板で占められている。
飲食店はもちろん、衣料品店、電器店、旅行代理店なども「あの看板のお店」である。
テナントからして見れば、イオンモールでの業績は今後の出展計画をするものだ。ここは重要な足がかりであると同時に、いつ崩れるか分からない「砂の橋」でもある。それを上手く渡り切ることができるか否かは、当事者の努力次第だ。
日系テナント同士の熾烈な進出競争を促すことにより、イオンモールは大きな売り上げを得ているのだ。
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■現地のミドル層
記事の冒頭でイオンモールは「ミドル層以上を対象とする商業施設」と書いたが、ここでミドル層の定義を確認しておこう。
一言で言えば、「大卒初任給程度の収入を得ている個人はミドル層」である。それよりも豊富な収入があればアッパーミドルと呼ばれ、そうでなければローワーミドルないしワーキング層と呼ばれる。アッパー層はそれらを越えた特権階級だ。
だがその定義で言えば、ベトナムでもインドネシアでも国民の大多数はローワーミドル層以下。つまり当地のイオンモールは、都市部の豊かな市民に向けた施設なのだ。
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■金持ちを取り込め!
そしてもうひとつ付け加えれば、東南アジアの富裕層は米ドルで収入を得ている。そのような人々を顧客として取り込もうと、熱を上げている業種がふたつある。旅行業と保険業だ。
となると、当然ながらイオンモールにもHISや東京海上の対面型店舗が出店する。もはやここは、ただのショッピングセンターではない。「複合型商業施設」という表現でも足りないほどの機能を有している。
そしてこれと同規模のイオンモールが、インドネシアではあと3店舗建てられる予定だ。いずれもジャカルタ郊外である。
恐るべし、ASEAN諸国のイオンモール。その動向から目が離せない。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)