日本車が圧倒的!インドネシア自動車市場のリアル
インドネシアのGDPは、国民一人あたりに換算すると日本の約10分の1程度。にもかかわらず、この国はモーター所持率が高い。原付バイクならば誰しもが持っているし、中間層以下の市民もわざわざローンを組んで自動車を購入する。
これは、「車は資産である」という概念が日本人以上に強いためだ。いざとなったら売ることができ、しかも物価推移によっては新車購入時よりも高い売値をつけることができる。買って損はしないようになっているのだ。
その上、インドネシアの自動車市場の9割以上は、日本メーカーの製品が占めている。まさにここは「日本車大国」だ。
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■強すぎる日本メーカー
タイとインドネシアは、ASEANの自動車生産国である。
だから、両国で開催されるカーイベントには世界中からの注目が集まる。インドネシアの場合、去年はまったく同時期に2つのカーイベントイベントが催された。名称も似ていたため、「こっちのイベントはどこでやるのか?」という混乱も起きたという。
だがいずれにせよ、インドネシアでは日本車が強い。あまりに強すぎる。特にミニバンとなると、日本以外の国の資本をほとんど寄せ付けない。
日本メーカーの足元に韓国メーカーがどうにか食らいつき、米メーカーに至っては撤退してしまった。去年、GMの現地生産工場が閉鎖したことはまだ記憶に新しい。フォードも今年末までに、インドネシアからの撤退を完了する予定だ。
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■現地政府の思惑
一方で、トヨタは現地の生産施設を拡大した。先月、インドネシアのモーター関連誌はトヨタのエンジン工場稼働のニュースで大いに湧いた。約200億円を投資して建設されたこの工場は、インドネシア国内の需要はおろかASEAN地域に向けた輸出も可能だという。
また、新工場建設に伴い400名の従業員が新規雇用された。その1ヶ月前にも、ホンダが約150億円を投資して四輪車変速機の生産施設を拡張している。これらが地元の経済に与える影響は絶大だ。
こうした追加投資は、インドネシア側の財界人や政治家が日本側に懇願して達成されたことでもある。じつを言うと、衰えを知らない日本車人気は現地政府にとって必ずしもいいことではない。
インドネシアは、ASEAN随一の生産立国を目指している。だから、自動車も極力輸入に頼らず国内で生産したい。一番手っ取り早いのは、日本メーカーの生産施設を誘致することだ。
去年3月、ジョコ・ウィドド大統領はトヨタ本社を訪問したが、それには上記のような背景がある。
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■富裕層はドイツかイタリア
だが、ジャカルタにいれば日本車以外のものもよく見かける。
それはすなわち、ドイツ車やイタリア車といった高級カーだ。「日本車がシェアのほとんどを占めている」というのはあくまでも統計の上での話であり、アッパークラスの人々は資産相応の車を乗り回している。
ジャカルタの大型ショッピングモールの駐車場に行くと、メルセデスやBMW、フェラーリなどが目に飛び込む。こうした車も、決して珍しくはない。もっともこれは「インドネシアが豊か」なのではなく「貧富の差が激しい」ということだが。
先述のカーイベントでも、アッパークラスの人々はドイツメーカーのブースへ行く。その場で営業の人間と交渉し、即日購入という段取りだ。
こうした場面がインドネシアの全てというわけではないが、富裕層の市民の旺盛な購買力を反映しているということに間違いはない。
(文/しらべぇ編集部・澤田真一)