富裕層に大人気!「サンマルクカフェ」、ASEAN進出を加速
1杯3,000円のパフェを食べたいと思う人が、どれだけいるのだろうか? また、そのようなパフェを毎週食べられるという人が我々の周囲に存在するのだろうか?
日本の飲食チェーン店が新興国へ進出する際、そのようなことを必ず考える。米ドル換算の4ドル5ドルは、新興国の人々にとってはおおよそ「3,000円」に等しい感覚なのだ。
そうした事実を念頭に置くと、新興国でのビジネスのあり方が見えてくる。
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■東南アジアに続々出店
カフェチェーン店『サンマルクカフェ』のASEAN進出が加速している。去年11月にはタイ、12月にはインドネシアで各国第1号店をオープンし、今年6月にはマレーシアにも初進出する予定だ。
サンマルクカフェはシンガポールにはすでに5店舗を置いているが、経済発展国であるシンガポールとその周辺国では物価水準が違う。「1本1ドルのコーラ」はシンガポール人にとっては安価だが、マレーシア人にとっては法外の値だ。
だから、サンマルクカフェの顧客対象は自然とミドルクラス以上の豊かな市民に限られる。この辺り、吉野家やCoCo壱番屋と同じ原理が働く。
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■パフェはセレブの象徴
インドネシアのショッピングモール『スナヤンシティ』にオープンしたサンマルクカフェ。先述の通り、この店舗がインドネシア第1号である。
開店1日目から、この店は連日大勢の客が押し寄せている。大抵は買い物を終えたばかりの人々だ。ひとりだけで来る客はまずいない。インドネシア人は何をするにも、必ず家族か友達を連れてくる。
たとえば、あるカップルがサンマルクカフェで休憩しようと考えている。彼氏はスモールサイズの抹茶ラテ、彼女はパフェを注文する。するとその会計は税抜きで11万2900ルピア(約965円)だ。
首都の最低法定賃金が月300万ルピア(約2万6,000円)に達したばかりの国で、デートの一場面のために10万ルピアを出せる若いカップル。彼らは明らかにアッパーミドル以上の市民だということがわかる。
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■邦人御用達の店
インドネシアに進出した外資系飲食店は、ほぼ必ずどこかの商業施設にテナント入居という形で営業している。独立形態の店舗を設置することは、マクドナルドやKFCといったファストフード店を除くとあまりポピュラーではない。
1月にジャカルタ市街で発生した爆破テロの時は、警察詰所とスターバックスコーヒーの店舗が標的になった。そのスターバックスの店舗は、外資系企業が集まるオフィスビルの1階に入居していた。
じつはサンマルクカフェ1号店が入居したスナヤンシティは、現地邦人の間では非常に有名なモールである。もともとスナヤン地区は邦人御用達のエリアで、あらゆる日系関連のイベントがこの地区で催される。
休日になると、スナヤンシティには多くの邦人が訪れる。つまり、サンマルクカフェは、邦人需要の受け皿になっている店舗でもあるのだ。
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■事前のリサーチが必須
このように、飲食チェーン店の海外進出には現地事情を前もって知っておく必要が生じる。
ASEAN諸国への店舗拡大を目指す日系企業の中には、「あの国は親日的だから我々の事業もきっと成功する」という発想を持ってしまうところもある。インドネシアなどの国の親日感情が良好なのは正しいが、それがビジネスの成功につながるという保証は全くない。
「1杯3,000円のパフェを、あなたは毎週食べたいですか?」
新興国での店舗拡大は、この問いかけから始まるのだ。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)