インドネシアの意外な発展産業 「コンドーム生産」にかかる期待
インドネシア政府が充実拡大を目指す生産業とは…。
我が国日本の通貨である円は、世界でもトップクラスの堅実性を持つ。しかしだからこそ、自国の通貨が強くない新興国の事情が理解できなかったりもする。
インドネシアはまさにそれだ。2億5000万という人口を抱え、ASEAN地域の中でも非常に広大な領土と領海を保有している。だが、インドネシアの通貨ルピアはしばしば価値の下落に悩まされている。
もし安定的に外貨を獲得できるだけの産業があれば、ルピアも自然と強くなる。だからこそ、インドネシア政府は生産業の充実拡大を目指しているのだ。
そんな中で、非常に大きな注目を集めている産業がある。コンドーム生産だ。
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■コンドーム業界の厳しさ
日本では馴染みが薄いが、インドネシア製コンドームは世界中に輸出されている。現地最大手のコンドーム企業『フォニックス・ラテシンド』社は、アメリカ、ヨーロッパ、中東、韓国、台湾などに広く製品を送り出している。
しかも、このフォニックス・ラテシンド社の製品は「安かろう悪かろう」というような質のものでは決してない。新製品の開発から市場投入までの間に、丸1年かけてテストを行なうという。
コンドーム業界というのは、一般市民が漠然と思っている以上に品質に関して厳しい。一度でもその製品が不良品、欠陥品と見なされたら信頼回復に長大な時間がかかってしまう。
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■HIV防止へ向けて
この業界は、世界の性交渉衛生を一手に担っていると言っても過言ではない。とくにアフリカの一部の国では、HIV患者の増加が国家の発展を妨げているという例すらある。そういった場所では、社会保障の一環として政府が国民にコンドームを無料支給する。
そういう事情があるから、生半可な気持ちで製品を作ることはできない。テストに1年もかけるのは、むしろ当然である。
そしてインドネシアにとっては有利なことに、この国の市民はイスラム教徒が大多数である。じつはイスラム教という宗教は、コンドームの使用に対してはとくに戒律的な制限はない。
コンドームに厳しいのは、カトリックである。ところがそのカトリックもコンドーム問題に関しては高位聖職者の間で意見が二分していて、アジアやアフリカの新興国出身の枢機卿はコンドーム普及に前向きであることが多い。
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■大半が輸出向け
このように、インドネシアのコンドーム産業にかけられている期待は非常に大きい。
だが興味深いことに、フォニックス・ラテシンド社の製品はその80%が対外輸出向けだという。つまりインドネシア国内に向けて生産される製品は、生産量全体の20%に過ぎないのだ。
どうやら、「外国ブランドのものはすべていい製品」という先入観がインドネシア市民の意識にあるそうだ。インドネシア人は冷戦時代には西側に属し、第二次世界大戦後のかなり早い段階から外国製品に慣れ親しんできた。
そうしたことはコンドームに限らず、たとえば女性化粧品でもそうだ。インドネシアにも著名な化粧品メーカーがあるにもかかわらず、国内市場シェアの半分以上を外国メーカーに取られてしまっている。
こうした視点から新興国ビジネスの今を観察しているメディアは、意外と少ない。だが経済成長真っ只中の国というのは、じつに予想外の分野で巨大な利益を上げていたりもするのだ。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)
(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)