悩める若者に読んでほしい「天涯孤独」を乗り越える漫画3選
家族の人数が減り、親戚関係も希薄な現代では「天涯孤独」となってしまう人は少なくないのではないだろうか。身内が事故や災害に巻き込まれ、自分ひとりが残されるという可能性は誰しもある。
また、たとえ周りに人がいても心が通い合っていなければそれは孤独だと言えるだろう。そんな世相を反映してか、主人公が天涯孤独な漫画が好評のようだ。
その中でも、編集部がおすすめする作品を3つご紹介したい。
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①『ともちゃんはすごいブス』1〜5巻 森下裕美
同作品は、『少年アシベ』で有名な森下裕美氏が描く、大阪が舞台の物語。
主人公のチコは20歳で、唯一の肉親の父親を亡くしてしまう。葬儀のあと、天涯孤独を感じていたチコのもとに、父の知り合いだという謎の女・トモちゃんが登場するのだ。
トモちゃんは引きこもりのチコを叩き直す強烈なキャラで、森下氏らしい「ポップなブス」に描かれている。
チコは、さまざまな職業を経験して身銭を稼ごうとするのだが、無知なチコが働くとなると、風俗や詐欺、犯罪さえ身近に…。
そして何度も世知辛さを味わうが、森下氏の独特な画風で悲壮感が和らぐのである。現実の厳しさと隣り合わせで生きる「たくましさ」に、勇気づけられる一作だ。
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②『海街ダイアリー』1~7巻 吉田秋生
映画化され話題になった同作品。中学1年生の浅野すずは、母を小学生のときに亡くし父と山形で暮らしていたが、父をがんで亡くす。
死んだ両親は、不倫のすえ駆け落ちし親戚とは絶縁していた。ところが、父の葬儀の場に初めて会う異母姉の3人が現れ、長女がすずに「一緒に暮らさないか?」と提案するところからストーリーが展開していく。
映画では、すずの役を広瀬すずが、姉妹の長女を綾瀬はるかが演じた。すずを迎えた異母姉たちにもまた、恋愛や他者への向き合い方などで変化が起こっていく。
それぞれが葛藤しながら、ささやかな幸せをみつける静かな物語に、心が落ち着く一作。
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③『3月のライオン』1~11巻 羽海野チカ
『ハチミツとクローバー』の羽海野チカ氏の最新作で、神木隆之介主演で映画化が決定したこの作品。
主人公は、17歳プロ棋士の少年・桐山零。幼少期に交通事故で両親と妹を亡くし、父の友人である棋士に引き取られて育つ。
学校でも家庭でも孤立する零は、プロ棋士になるとすぐに下町で一人暮らしを始める。そして物語は、川本家の三姉妹たちと下町で出会うところから始まる。
悲しい過去を抱え健気に生きる三姉妹と交流することで、これまで孤独を抱えて生きてきた零自身が変わっていくのだ。
深刻ないじめ、闘病、毒親の苦しさが迫ってくる描写は圧巻だ。それでも、「『一寸先は闇』って言葉だけがメジャーだけど、その逆もまた充分起こりうるのだ。『3分先は光』みたいに」と主人公に言わせ、希望を与えてくれる一作となっている。
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■天涯孤独の漫画から学べること
どの作品も葛藤する登場人物の姿から、「自分が誰かにとっての信頼できる人物でいることが、いつか自分自身をも救うことにつながる」といったことを、考えさせられるのである。
孤独を知っている人は、他人との出会いを人一倍大事にできるもの。孤独を感じ悩んでいる人は、天涯孤独を描いた漫画から勇気をもらえるかもしれない。
(文/しらべぇ編集部・大空美南)